先日、所用で出かけて、用事をすませて帰る時。
私は乗り換えのため某駅で降りて、そのまますぐには乗り換え電車には乗らず、その駅の改札を通り、町に出てみた。
その駅のある町は、学生時代に私には馴染み深い町であった。
ほんの気まぐれであった。
あわよくばその町で何か食べようと思ったのも理由のひとつだったが、それ以上に懐かしい記憶があったためだ。
私が中学2年の頃のその町には、当時仲良くしていたNT君の家があった。
彼の家には1学期の頃によく遊びに行っていた。
NT君は相撲とクラシック音楽と蒸気機関車が好きで、彼の家に行くと、たいがい相撲の話とクラシックと蒸気機関車の話を聞かされた。
私は相撲は好きでも嫌いでもなかった。
でも、NT君が楽しそうに相撲の話をするのを聞いてるのは、私は決して嫌ではなかった。
蒸気機関車に関しては、当時蒸気機関車が作品中で大きな意味を持つ映画が封切られていて、NT君と一緒に映画館に見に行った覚えがある。
また、彼がカセットで持ってたクラシック音楽も彼の家ではよく聞かされた。
その中で私が好きになったのが、ベートーベンの「田園」。
クラシック音楽ジャンルでは入門者向けとも言えるメジャー作品であり、有名曲でもあった。
「田園」は学校の音楽の時間に「レコード鑑賞」の授業でも聴いたはずだが、不思議とNT君の家で聴く「田園」はとっても好きになった。
もちろん学校で聴く「田園」とNT君の家で聴く「田園」は同一曲だったが、なんていうか・・・学校の授業で聴かされるのと、友人の家で遊びで聴かされるのでは、音楽から受ける良さが違って感じた。
やはり授業として聴かされるのと、自分の意思で遊びで聴くのでは、同じ音楽でも聴こえ方や受け取り方や感じ方は違った。
しまいにはNT君の家に行くと「田園」を聞くのが楽しみになり、だんだん私のほうからリクエストするようにもなった。
ある時、NT君の家にいつものように遊びに行った時、NT君は「俺んちの近くにK子の家があるんだよ。見に行こうぜ。」と言いだした。
少しドキッとした私。実は私は当時密かにK子に思いを寄せていたからだった。
「え?NT君の家の近くにK子は住んでるのか・・いいなあ。」などと思いながら、NT君と一緒に外出し、K子の家の前に行った。
NT君は「ほら、ここだよ」と言った。
NT君の家からは確かにすぐ近くだった。歩いて数分。
K子の家の前にしばし私とNT君のふたりは立ち止まっていた。ただただそれだけ。
K子を呼びだすわけでもなければ、家を訪ねるわけでもなかった。
なぜその時NT君が私をK子の家の前に連れだしたのかはわからなかった。
私は自分が密かにK子に思いを寄せていることは、誰にもしゃべっていなかったし、NT君もそれは知らなかったはずだ。
後になってふと思った。
もしかしたらNT君もK子のことが好きだったのではないかと。
K子の家は近くにある、でも用事もないのにNT君ひとりで行くのは気が引けたのでは。
そこで仲よくしてた私に付き合わせたのではないかと。
まさか私もK子に思いを寄せていようとはNT君は想像もできなかったはずだ。
でも、私としては、ひょんなことからK子がどこに住んでるのかを知ることができてしまった。
まあ、だからといって何も変わらなかったんだけどね(笑)。
それによって何か状況が変わった・・・ということは、なかった。
この時、もしK子が家から出てきたり、あるいはどこかから家に帰ってきたりして、その場で我々とK子が鉢合わせしてしまったら、NT君はどうするつもりだったのだろう。
私はとりあえず、NT君に付き合わされた・・という言い訳ができるだろうけど(笑)。
ん?もしかして、NT君は密かにそれを期待していたのかな(笑)??
ちなみに、教室内で、K子と私は話す機会はそこそこあったが、私が覚えている限り私の方からK子に話しかけたことは一度もなかった・・・と思う。
なんというか、思いを寄せていたぶんだけ、自分からは話しかけられなかったんだと思う。
だがそんな思いは私は一切表に出すことはなかった。
私がK子と話す時は、いつもK子のほうから私に話しかけてくれていたと思う。
なので、当時私がK子に密かに思いを寄せていることは、クラスの誰もわからなかったはずだ。NT君だけでなく。
私自身その思いを誰かに明かしたことは、当時なかったし。
ともあれ、現実に戻るが、この日私がふと途中下車した某駅の近くに、昔NT君の家とK子の家があった・・・というわけだ。
NT君の家のあった場所や、K子の家のあった場所にも、この日足を伸ばしてみた私。
あれから何十年もの年月が過ぎている。
NT君の家は団地であり、K子の家は一戸建てだった。
だがもうNT君の住んでた団地もなければ、K子の家もなかった。
表札も変わっていたし。
なぜ急に思い立ってこの町で降りて、NT君の家とK子の家のあった場所に散歩してみたのかはわからない。
ただ、当時眺めていた夕焼け空と同じような夕焼け空が、そこには広がっていた。
その駅は今の私が住んでる町からめちゃくちゃ遠いというわけではない。
その気になれば急に思い立っていくこともできるし、何かの用事の行き帰りにその町のある駅を電車で通過することもある。
でも、だからといって、その駅で途中下車することは、ほとんどない。
仮に途中下車したとしても、それは別の用事がある時だ。その用事を済ませた後に、NT君やK子の家のあった場所に足を伸ばすなんてこともない。だいいち、あれから何十年も経過してるし、もうその辺りにはNT君もK子も住んでいないであろうし。
とはいえ、この日は・・なんとなくその駅で降りてしまい、散歩したら上記のことを思い出した・・・という、ただそれだけのこと。そう、ただの気まぐれでしかない。
ちなみに、NT君とは一学期は仲良かったし、夏休み中には彼から手紙が来たことがあった。
だが、二学期になると、なぜか私とNT君は少しづつ疎遠になっていった。
理由はわからない。少なくても私には思い当たるふしがなかったからだ。
対立したり、ケンカしたり、トラブルが起きた覚えはなかったし。
更に3学期にもなると、1学期に仲良かったことがまるで「なかったかのような」雰囲気になった。まるで遠い昔のことみたいに。
どこかよそよそしくもなり。
なぜだったのだろう。
もしかして、学期のはじめごとに席替えがあり、それぞれ席の近くの級友のメンツが変わり、席の近くの級友たちとそれぞれ仲良くなっていったからだろうか。
とはいえ、同じクラスにはいたわけだし、まるで何もなかったかのような間柄になる理由もなかったと思うのだが。
ただこの時、「友達関係ってのは、特に思い当たるふしもないのに、いつのまにか疎遠になってしまう関係ってのもあるんだな」ということを、実感したのは覚えている。
とりあえず、仲が良かった1学期の間に、実は私もK子が好きだったということをNT君に明かさなくてよかった・・・とは思った(笑)。
ただ、ベートーベンの「田園」が流れると、NT君のことを思い出すことはある。
今も。
彼の家の窓から見えていた風景と共に。
学生の頃とかで、仲がよかったはずなのに、なぜか理由もなければ思い当たるふしもないのに、同じクラスにいながら、いつのまにか疎遠になっていった級友、あなたにはいないだろうか?
ケンカしたわけでもないのに。
なお、写真はこの日記と直接的な関連性はありません。
そしてほろ苦くて悲しいとも思います
中学2年生と言えば思春期の入り口の頃で感情も複雑な頃です。
だんぞうさんがNT君とどこかで再会できるといいですね。そして友情が復活する。
僕はそういうパターンで疎遠になった事はありません。
相手の事がどうにも嫌いになって疎遠になった事はいくつかあります
疎遠になったはっきりした理由は未だに不明ですが、席替えによるものだったのかもしれないし、もしかしたらK子がらみのことだったのかもしれません。
とはいえ私は自分のk子への気持ちは当時誰にも明かしてなかったですし、自分からK子に話しかけたこともなかったので、私のK子への気持ちは誰にもわからなかったはずなのですが・・。
ただ、NT君もK子のことを好きだったのだとは思います。
K子がまわりの友人たちとの会話で、私に聞こえるように私の名前を出していたのがNT君は面白くなかったのかもしれませんが。
とはいえ、私はK子とつきあってたわけではないですけどね・・。あくまでも私の片思いだったと思います。
また、席替えによって、いつも日常的に仲良く話す友人の顔ぶれが変わったのもあったのかもしれないですね。
まあ、なんにせよ今となっては時効ですね、色々なことが。
教室における人間関係 それが席替えによって変わる事もあります。
あるいはだんぞうさんとNT君が二人ともK子さんが好きだった事。それが多少なりとも関係しているのかも知れません
ところで中学時代に一緒に帰る友達が途中から変わる。そういうのってなかったですか?
そこからまた友達関係が変わったとか?
周りの級友が変わるわけですから。
どうしても、普段は自分の席の周りの級友と話す機会が多くなりますからね。
ただ、3学期にもなると、1学期の頃の仲の良さがかなり昔のことのように思えたもんでした。
>中学時代に一緒に帰る友達が途中から変わる。そういうのってなかったですか?
私は学校から帰る時はひとりで帰ることのほうが多かった気がします。
ひとりだと、その日の気分でルートを自由に変えられましたから。
まあ、たまに誰かと一緒に帰ることもありましたけど。