汨羅の観察人日記(一介のリベラルから見た現代日本)

自称『リベラル』の視点から、その時々の出来事(主に政治)についてコメントします。

菅直人の原発事故対応

2014-06-07 10:52:12 | 政治全般

民主党が小沢一郎路線をとっていたなら、現在、日本国・日本社会が最優先すべき少子高齢化社会への対応に向けた政策が、政官一体となりしっかり推進されており、知的水準が高いとは言えない安倍晋三の趣味でやっているような集団的自衛権論争で時間と政治資源の無駄な浪費はなかったであろうと予想している私にとり、単なる党派的発想から脱小沢なる愚策を推し進めた菅直人なる人物は、評価しないというより、日本政治史に残る害悪であるととらえている。

しかし、こと東日本大震災における原発事故対応については、私は菅直人を評価している。

今となっては、後知恵で何ともいえるであろう。
菅直人を全否定しようとすれば、菅直人が当時行ったすべての決定、行動について間違っていたとの結論を出せる。
また、菅直人を全肯定しようと思えば、彼が行ったすべての決定、行動は正しかったとの結論をだすことができる。

ただ、菅直人が大嫌いな私の意見を言えば、ある事象に関して人間がする決定・行動について、すべて正しいということはまずあり得ず、同様に、すべてが間違っているということもほとんどあり得ないということを考慮すると、菅直人の原発対応について、よかった部分もあれば、よくなかった部分もあったのであろうということにすぎないのではないかと思う。

そのように考えると、今後、同様な事故が発生した場合処置・対策を導き出す以外の意図をもった事故調査に関する言質、具体的には、自称保守(≒ネトウヨ)が行っているような、民主党政権を全否定することが目的の原発事故対応に係る言及、そしてその対極にある、熱狂的菅直人支持者による原発事項対応に関する言動は、知的生産に資するものはほとんどないと思うところである。

ただ、異常事態における組織トップの行動として見た場合、私は菅直人の決定・行動は肯定的に評価すべきなのではないかと思う
自称保守≒ネトウヨは、首相が現地に行くのはけしからん、官僚機構にまかせず自分で動いたことで混乱云々いっているが、福島の原発事故については

①現地の正しい情報が、関係部署(東電、保安院、経産省)にまともに入ってこない。
②原発事故リスクを甘く見ていたツケとして、福島で発生したような原発事故に対応するための実効的な計画を作成していなかったため、関係部署がまともな危機管理を行うことができない。
③断片的に入ってくる情報から判断すると、チェルノブイリ級の事故になる可能性が否定できない、というよりそのようになる蓋然性が高い。
④重大な事故であるにも関わらず、関係部署の責任者の危機意識、責任感が希薄
⑤チェルノブイリ級の事故だと、被害は首都圏に及ぶ。

上記状況を考えた場合、はたして菅直人の決定・行動が間違っていたといえるであろうか。私は、個々の事象に関する論点はあるとしても、全体的には正しかったと思う。そして、同様な見解を有する、危機管理の専門家も存在する(治安フォーラム 20巻7号の宮坂直史氏の記事

批判は簡単である。個々の決定・行動を見れば、確かに違ったやり方の方がベターだった行動もあろう。しかし、自称保守≒ネトウヨが主張しているような、まったくもってダメだったという批判を見ると、「じゃぁ、お前だったらどのような決定・対応をするのか?」といいたくなる。

上記の①から⑤の状況を踏まえ、自称保守≒ネトウヨが宰相の席にあったとして、この輩はどのような対応をすべきだというのか、是非とも知りたいものである。
当時【野党】自民党が言ってたように東電に事故対応をまかせるのか?それとも役所に任せるのか?状況がわからない中、情報が上がってくるまで、官邸で報告を待つのか?首都圏に被害が及んだ場合、日本国の社会機能は実質的に壊滅するが、その責任をどのように取るのか?等々を考えると、あの時の菅直人の行動は、結局行程せざるを得なかったといわざるを得ないであろう。

安倍晋三のように、知的水準が高くない宰相であれば、そもそもチェルノブイリと聞いてもピンと来ないので、ヘラヘラ笑って「大丈夫です」とか言って東電に任せるのであろうが、まともな教養・知識と論理的思考能力があれば、上記①~⑤の状況を踏まえた場合、例え現場に介入しすぎとの批判があったとしても、一国の宰相として、陣頭指揮をとるのが当然であろうというのが、私の結論である。