経食道エコーを終えて帰宅した蟷螂の胸のうちは複雑でした。もし、ダ・ヴィンチでやってもらえないとなったら、正中切開かMICSです。MICSはまだしも、胸骨を切り開く正中切開は傷跡も生々しいので、私の趣味ではありません。もちろん正中切開でなければ死ぬと言われれば別ですが、とにかく浜田山からの、経食道エコーの検査結果の連絡を待ちました。木曜日に検査を受けたので早ければ金、土曜日、遅くとも月曜日には連絡があると思っていましたが、金、土曜日には連絡はありませんでした。その間、「もしかしたらダ・ヴィンチ適応にならなかったのでは?」と考えると、身が震える思いでした。待ちくたびれた月曜日の午後、おそるおそるコンシェルジュの方にメールをいれると少しの間をおいて、「ダ・ヴィンチ適応」と連絡が入りました。直ぐに「ダ・ヴィンチでお願いします」と返信し、現金の工面におわれました。長年所持していた製薬メーカーの株をすべて売り払い、ヤフーの株も損切りました。あらかじめ聞いていた金額は350万プラス消費税。 そうです、ダ・ヴィンチによる心臓の手術には保険が適応されません。消化器や前立腺には適応されるのにです。手術費用は昨年買った中古車の新車価格ですが、ことは生死に関わる一大事、考えている余裕はありません。少し多目の額を用意したのは、万一の合併症に備えたからです。同居人はダ・ヴィンチに否定的でした。保険大好きオバサンで、保険のきかない医療などナンセンスと思う人だからです。一方、蟷螂は最先端医療大好き人間ですが、まさか心臓病で大金が出ていくことになると思ってもおらず、想定外でした。しかし、ダ・ヴィンチ適応になったらなったで、不安が沸き起こりました。なんと言っても不安なのが、手術は一度心臓を止めなければできないと、Webの知識が頭にこびりついていたからです。一度止まった心臓が再起動するのか?脳裏に浮かんだのは、テレビドラマや映画でよく目にする、電気ショックと心臓マッサージの光景です。そしてダ・ヴィンチで手術をしてもし再起動しなかったら…開胸していれば心臓マッサージは簡単です。目の前にある心臓を、医師が手でマッサージすればいいのですから。ところがダ・ヴィンチだとそうはいきません。他の医師がこぞって正中切開の開胸直視下術を推奨するのはそのせいでしょう。それに、感染性心内膜炎であったら、心臓内に巣食う菌塊をダ・ヴィンチで完全に取り除くことができるかという不安もありました。
コンシェルジュの方からダ・ヴィンチでの手術をお願いしたその日、2月末の手術の日が決まりました。次に浜田山へ行くのは、入院当日です。せわしなく決まった入院、手術日でしたが、気の短い蟷螂に向いていると思いました。大学病院で検査を積み重ね、手術の日を引き延ばされるよりもいいのではないかと、自分の心臓に言い聞かせました。(つづく)
コンシェルジュの方からダ・ヴィンチでの手術をお願いしたその日、2月末の手術の日が決まりました。次に浜田山へ行くのは、入院当日です。せわしなく決まった入院、手術日でしたが、気の短い蟷螂に向いていると思いました。大学病院で検査を積み重ね、手術の日を引き延ばされるよりもいいのではないかと、自分の心臓に言い聞かせました。(つづく)