昨日の夜も、
犬の散歩をしながら、彼のことを諦めようと必死だった。
折り返し地点を過ぎたのに、
なんの音沙汰もなく、家が、どんどん近づいて来る。
今夜も、LINEで繋がることは無さそう。
期待したらいけなとわかっているのに、期待して待つ私は、本物の馬鹿だ。
彼が今、どんなふうな仕事の仕方をしているのか、
何を考えているのか、
挙げ句の果ては、どこで生きているのかさえも、
何もわからないのが、辛くて悲しい。
恋心を抱くって、こんなにしんどかったっけ。
何度もLINEを確認しながらの散歩。
恋をしていなかった頃は、どんな散歩の仕方をしていたのかな?
この時間、私は、何を考えて、歩いていたのかな?
そんな頃が、懐かしくて羨ましい。
もう、この関係が始まってから、ちょうど5ヶ月が過ぎ去ろうとしていた。
真っ暗な通りを入った時、LINEの受信音が鳴った。
開けるのは、一瞬だったと思う。
彼からだ!
散歩に出たから話せるよ。
もちろん、私は話したい。
そして私達は、リアルに繋がった。
私にとって、彼と電話をすることは、当たり前ではない。
お互いの環境が、整って初めて、許される行為。
話せる場所も、時間も、限られていて、
パートナーの存在も、かなりハードな障害となる。
私は、彼の声が、想像していたよりも力強く、ハリがあったから、安心していた。
表情は、声で判断するようになっていて、
私が思うに、
彼は、電話の向こうで笑っていた。
お互い、ゆっくりと話してはいられないのもわかっている。
電話を切る言葉のラリーが続く。
なかなか、終わらないのは、まだまだ繋がっていたいから。
まるで、若い恋人同士みたいだなって、思っていた。
私は、彼のことが、好き。
そんな気持ちを大事にしたい。
今を大事にしたい。
夢のような時間は、待っている時間のことを思えば、
一瞬で終わった。
それでも、
彼を数分間、感じるだけで、心はとても満たされていた。
恋心とは、そういうものだったと、
思い出した。