真冬の夜、街灯もない田園が広がる真ん中で、空を見上げた。
見える限りの全ての星が、そこにはあった。
彼も、この空を眺めるだろうか。
そう思いながら、犬を自由にして歩いた。
どうせ他に誰もいないし、車も通らない。
やがて彼はやって来た。
今日の彼は、男の匂いを漂わせる。
私の耳元で彼がささやく。
生ぬるい吐息がかかる。
鼓膜が震えて、全身に響き渡る。
そして彼の指が、そっと中に入って来て、
出し入れを繰り返す。
私は、脳でリンクして錯覚してしまう。
そこは、私の身体のいったいどこなの?
ずっと彼が欲しかった。
久しぶりに、身体中の感覚が研ぎ澄まされる。
私は、賢い人が好きなの。
弱くてバカな人間は、賢い遺伝子を自分の中に取り込んで、生き延びようとする。
彼の設計図が私にも欲しい。
身体は、受け入れたくて、準備を始める。
そのためなら、なんでも言いなりになる。
私は、あなたに服従します。
心も準備し始める。
私は今、心も身体も、彼のために存在した。
私がどうもがいても、壊れそうだからと、彼に訴えても、
あなたの好きなようにしてくれたらいい。
彼は、私に服従の意味を教えながら、
思いのままにする。
離れていても、この人には逆らえない。
それがまた、Mには心地いい。
彼に任せていたら、全てうまくいく。
そんな安心感に包まれる。
女は、時々、こうやって抱いてあげないといけない生き物なんだ。
やっかいな生き物。
もし、ここが外でなかったら、
暖かなベッドの上だったら、
きっともう、私は天極に、逝けてるだろう。
手が冷たくて、お互い我に返った。
きっとマイナスの世界。
LINEは、手が凍えるね。
そろそろ終わりにしようか。
私は、犬のリードを繋いだ。
ここからは、時折り車も通る道だった。
でも、私の心は、温かかった。
そして、今朝もまだ…余韻に慕っている。
これが女の幸せなんだと。