仕事に行く時間が迫る頃、
何気にスマホを手に取ると、
こんな時間にあるはずのない彼からのLINEがあった。
どうしたのだろう?
私は、そのLINEを読んだ。
これは、彼が書いた小説?
うたのような詩。
いちいち…彼の描写は、私の心を打つ。
彼は表現する。
愛し合う男と女の姿は、
とても綺麗で、
決していやらしいものではないんだと。
ここには宇宙があった。
生命の誕生や、彼女自身の誕生。
私が知る限り、
彼女は、女の幸せを掴んでいる。そう思った。
そして、彼から放たれたさまよう遺伝子は、
彼女自身の体の中に溶け込む。
放心状態となった女の体は、そのためだけに機能していたにちがない。
心が暖かくなった。
ここに出てくる女性は、
なんて幸せなんだろう、と感じた。
こんなふうに、彼に書いてもらえる女性って、いったい誰なの?
私はまだ、その女性が自分だと気が付かない。
いいえ、気が付いていたけど、もったいなくて、どうしたらいいかわからなかった。
一瞬時間が止まっていた。
何度も読み直して、余韻に慕っていたかった。
でも、時間は迫る。
私は、髪の毛を束ねて、
スマホをカバンの中にしまった。
彼の書く文章は、
女を狂わせる。
私は、そのうちの一人にすぎない。