彼のトークルームを開いてみた。
さかのぼると、
私のメッセージばかりが連なって、
既読がついてるけど、
返信がない。
淋しい。
それでも、やっぱり、何度も何度も、
LINEを送りたくなる。
結果は、また同じだろうと思うから、思いとどまってきたけど、
今日は、彼への最後のお願いをLINEに込めた。
私をブロックして下さい。
やがて、
仕事に行く時間になって、
そのままスマホをカバンにしまった。
次に、スマホを開けるのが怖くて仕方なかった。
仕事の間に、彼がそれを読むのはわかっている。
もう、
これから先、私からは、LINEが送れなくなるのだから、
そう思ったら、後悔もする。
けど、
彼に嫌われるぐらいなら、その方がマシだと思った。
仕事が終わって、
犬の散歩に出た。
日は長くなったけど、まだこの時間は暗い。
明るくなる季節は、もうすぐ訪れる。
あの頃、ビデオ通話で、顔を見ながら話をしていたのは、この時間が明るかったから。
そんな季節が、もうすぐやって来るんだなあ。と思った。
私は、スマホを手に取って、恐々、LINEを開いた。
彼からの返信はちゃんと来ていた。
メッセージを読む。
犬は、お構いなしに、私を引っ張りながら、
いつものコースを歩いてくれていた。
LINEの画面の向こう側で、
彼は、私の申し出を、いつものように笑い、
そして、さりげなく寄り添い、
こうなったのは、自分に技量がないからだと、
私を戒めることなく、
無下に人を切り捨てる人間にはなりたくないからと、ブロックはしないと言った。
私たちは、普通の関係になるだけ。
優しくて、温かくて、彼の人柄が、
そのままだった。
暗がりの中、何度も何度も、読み返した。
普通の関係になろうとする彼に、私は追いつけるだろうか?
普通の関係を望む彼に、今後、用事なんてあるだろうか?
自分で考えて、行動するなんて、ちゃんとできるだろうか?
彼の言う通り、
悩む時間は、確かに無駄だ。
私だけでなく、あなたの時間も無駄にする。
だったら早く、立ち直らないと。
クヨクヨ悩むのは、望んでいない。
彼のエールがそこにはあった。
思えばいつも、そうだった。
私は、彼の思いを受け止めたことと、最後にありがとうの言葉を送った。
そしたらすぐに、スタンプ一つだけ、返ってきた。
彼もきっと、今、犬を連れて散歩しているんだと思った。
片手に、ビールの缶を持ちながら、
心地よい時間を過ごしているんだと感じた。
神様、私は、この人に出会えて良かったです。
感謝します。
夜空を見上げると、星がたくさん輝いていた。
私たちは、ちょうど一年前の今日、ここで出会ったんだ。
終わり。