そんな天龍の酒の席でのエピソードのみで描かれた漫画「天龍源一郎 酒羅の如く」を購入した。作画はかの名作「実験人形ダミー・オスカー」の叶精作先生だ。
収録されたエピソードは全部で12話。1話8ページだから漫画としてはボリュームが少ない。しかし、その内容の濃さと言ったらそんじょそこらの漫画とは比べものにならないので安心して欲しい。
ここには酒豪と呼ばれる天龍が、お酒が好きだからという単純な理由だけではなく、お酒を通じての記者とのコミニュケーションや、派手で豪快な姿を若手に見せる事で「自分もトップレスラーになってこんな生活がしたい」と思わせる事が目的だと描かれている。それはかつて天龍自身が相撲時代に大鵬、若手レスラー時代にリック・フレアーに抱いた気持ちだ。
そんなお酒を通じての天龍の人となりが描かれていてプロレスファンにはたまらない仕上がりになっているわけだが、それよりも何よりもこの漫画における初登場時の天龍を見てほしい。
天龍を見たことがある人なら間違いなくこう言うだろう。誰だコイツ??
そう、この漫画における天龍源一郎は異様なまでに格好良い。しかしだ、最初こそ違和感たっぷりの美青年・天龍だが、読み進めていく内に実在の天龍と重なって見えてくるから不思議なものだ。もちろん天龍に限らずこの作品に出てくる登場人物はみな美しい。美しいだけでなく妙な色気があるからこれまた魅力的だ。これは偏に叶精作先生の画力によるものだろう。
絵も内容もあまりにも美化しすぎだと感じる人もいるだろうが、オレはこれで良いと思う。プロレスはエンターテインメントでありファンタジー。あくまで現実世界とは切り離されたものであって欲しいというのがオレの考えだ。最近ではプロレスの裏事情を描いた暴露本が多数出版されているが、そのほとんどがスキャンダルと呼ばれるような醜い部分ばかりを特集している。プロレス・ファンとしてはたしかに興味深いが決して気持ちよいものではない。原田久仁信先生の「劇画 プロレス地獄変」などはその最たる例だろう。
その点、この「天龍源一郎 酒羅の如く」にはレスラーの夢が詰まっている。もちろんここに収録されている話が全て本当だとは思わないが、各エピソードの終わりに入っている天龍自身の回想・解説がグッと真実味を与えている。
とにかくプロレス好きなら買って間違い無しの本だ。天龍の酒にまつわるエピソードはこの1冊で終わりなので、他のレスラーのリング外エピソードを切に願うよ(´∀`)
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