アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

悪夢は目覚めることで救われる

2010-10-08 23:13:44 | フィリップ・K・ディック
「死の迷宮」夢から覚めたはずの現実が常に悪夢を終わらせるわけではない


「死の迷宮」“The Maze of Death”1970年作品
飯田隆昭訳 サンリオSF文庫 1979年発行

何より面白かったのは
ベン・トールチーフが任地に赴く前に絵の出るレコードをターンテーブルに載せる
まあ、今ならDVDでありブルーレイディスクになるのだろう
ここではあくまで挿絵的なイメージであり物語が朗読される
「・・レゴラスのいうことは正しい・・」指輪物語か?!と耳をそばだてる
それは作中では古い叙事詩となっている
トールキンが聞いたらとても喜ぶだろう、彼こそ失われた時代の叙事詩を作りたかっただから
トールチーフはそしてガンダルフに向けて独白する
物語の途中でも登場人物の所持品に、ミルトン、ヴァ―ジル、ホーマーと一緒に
トールキンの著作が偉大な古典として語られている
それだけで楽しい

が、物語は「死ぬまで出ることができない迷路」の世界でのできごとである
4つの神「ウォーカー・オン・アース」「メンチュファクチャラー」「インターセッサー」
そして「フォーム・デストロイヤー」(これを神とするかは大きな神学的問題だ、そうだ)

ここではディックが意識して作りだした神学の体系が語られる
彼に顕れた「本物」の「神」ではなく作り話である
「銀河の壺直し」の方がより啓示に満ちていてディックを知る手がかりになる

ある意味ホラーであり、推理小説的な面白さがある作品で
彼が神の体系を作りだしたように、彼の作りだした「作品」にである


「死の迷宮
サンリオSF文庫 1984年 第2刷のカバー


「死の迷路」
山形浩生訳 創元推理文庫 1989年発行

 ゆっくり読んで、ディック的な世界を楽しもう!

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