(私達のあゆみ 第51話)
ボルド退院の日、
嬉しくて浮かれていた私は、現実に引き戻されました。
ボルドを病室から連れてきてもらったものの
ボルドは歩けないどころか、
伏せたままで起き上がることもできなかったのです。
ちから無く横たわっているボルド・・、
シッポだけは・・、動いているんです。
今考えると、
あんなに弱々しく動いていたシッポ・・、
実は、ちからいっぱい激しく動かしていたんだと・・。
たった10日入院していただけで
ボルドは、以前のボルドと全然違ってしまっていました。
先生の今後の説明を聞きながら、
私の視線は横たわっているボルドへ・・・、
衰弱して、力もなく、少し情けなさそうな表情。
22キロもあった筋肉質の体が・・・。
すごくショックでした。
こんな状態では・・、
ひょっとして、今夜また再発するかもしれない。
でも、
パパ猫と猫娘と話しあって、
たとえ、発作で緊急な状態になっても、
今度は家で・・最後のその時まで、
しっかりとそばに居てあげようと・・そう決めていたんです。
家に帰ると一番喜んだのは、マロンでした。
部屋をグルグル走り回って・・・、
でも、ボルドの状態を理解したのか、
走りながら見ていたマロンは、
いつのまにか、
心配そうにそばで見守っていました。
「ボルちゃん、おかえり~。
わたし待っていたの~。大丈夫~?」
と言っているかのようでした。
まずは、
ボルドの大好きなりんごを食べさせてあげたかった、
すりおろしてあげると、
ボルドは伏せたまま一生懸命飲んでいました。
でも、少しクチにも後遺症があるようで
飲み込むにも一苦労しているようでした。
水を飲むときのピチャピチャという音も
力がなく小さな音でした。
すべてが「やっと動かしている」そんな感じでした。
飲んだ後は当然、
トイレ。
立つことが出来ないボルドは、
我慢に我慢をしていたんだと思います。
耐え切れずに、
寝ているその場所で寝たまま済ましていました。
ペットシーツに広がる波のような色の動きを見ながら、
今まで普通に出来ていたことが出来ないって
こんなに大変なんだ。
そう実感した瞬間でもありました。
夜は、
寝返りもうてずに、床ずれも出来始めているボルドの
両側に猫娘と私が寝て、
寝返りをうたせてあげたり、
トイレの世話をしたりしました。
猫娘は、
ボルドと手をつないで寝ていました。
家に戻ったボルドが、
この頃にはさすがに安心して・・、
私達の気持ちを感じているようで・・、
嬉しそうに、
幸せそうに、
少し笑顔を浮かべて、眠っていました。
そんなボルドがここにいるだけで、
私達は幸せでした。
今は・・いいんです・・・、
たとえ、これから始まる介護の生活が大変でも・・、
今までどおりに、
家にボルドがいる・・、
今は・・幸せだから。
(つづく)
ランキングに参加しています、
応援クリックお願いしています。