9日の夕方、「日軍は抵抗者に対しては極めて峻烈にして寛恕せざるも、無辜(むこ)の民衆および敵意なき中国軍隊に対しては寛大をもってし、これを犯さず」という大日本陸軍総司令官松井石根名の南京防衛軍に対する「投降勧告文」(日本語と中国語)を日本軍機から城内8ヶ所に投下した。(「南京事件」:笠原著)より
「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より 12月9日 いまだに米を運び込む作業が終わらない。そのうえ、作業中のトラックが一台やられてしまった。苦力(クーリー)がひとり、片目をなくして病院へ運ばれた。委員会が面倒を見るだろう。・・・・・・・・ さっきとは別のトラックで米を取りに行っていた連中がおいおい泣きながら戻ってきた。中華門が爆撃されたらしい。泣きながら言うところによると、はじめ歩哨はだめだといったが、結局通してくれた。ところが米を積んで戻ってみると、およそ40人いた歩哨のうち、誰ひとり生きてはいなかったという。 燃え盛る下関を通り抜けての帰り道は何ともすさまじく、この世のものとも思われない。安全区に関する記者会見が終わる直前、夜の7時にたどり着き、どうにか顔だけは出せた。そうこうしているうちに、日本軍は城門の前まできているとのことだ。あるいはその手前に。中華門と光華門から砲声と機関銃の射撃音が聞こえ、安全区中に響いている。明かりが消され、暗闇の中を負傷者が足を引きずるようにして歩いているのが見える。看護する人はいない。医者も看護士も衛生隊も、もうここにはいないのだ。鼓楼病院だけが、使命感に燃えるアメリカ人医師たちのよってどうにか持ちこたえている。安全区の通りは大きな包みを背負った難民であふれかえっている。旧交通部(兵器局)は難民のために開放され、たちまちいっぱいになった。われわれは部屋を2つ立ち入り禁止にした。武器と弾薬をみつけたからだ。難民の中には脱走兵がいて、軍服と武器を差し出した。 「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店) 12月9日(木曜日) 今夜は南京市の南西隅の空全体を火炎が照らし出している。午後はほとんど、北西以外のすべての方角からもうもうと煙が立ち昇っていた。中国軍のねらいは、すべての障害物、たとえば銃撃の邪魔になる物や、日本兵が待ち伏せしたり身を守るのに役立つ物を取り除くことなのだ。AP特派員のマグダニエルは、中国兵が灯油をかけて家に火をつけているところを目撃したと言っている。この2日間に大挙して城内に避難してきたのは、これら焼け出された人たちである。こうした作戦が仮に日本軍の入城を半日か一日遅らせるとしても、人々にこれほどの苦難を与えてまでもする価値があるのか疑問だ。・・・・・・・・・・・ 今夜、記者会見の最中に大きな砲弾が新街口に落下し、みなびっくりして椅子から飛び上がった。青ざめた人もいたのではないかと思う。これは、私たちが初めて体験した砲撃だった。今日は飛行機の爆音がただの一時間も絶えることはなかった。・・・・・今後、記者会見はなくなるかもしれない。 避難民たちの話は心痛むものだ。今日、ある女性がさめざめと泣きながら私のところへやってきた。話を聞くと、用事があって南京にきたのだが、彼女の12歳の娘は城門を通してもらえず、彼女の方も、城門の外にいる娘のところへ行かせてもらえない、というのだ。娘は、戦闘が最も激しく行われている光華門のあたりにいる。 三汊河からやってきた女性は、気が狂ったように母親を捜し回っていた。キャンパスには母親がいないことがわかったので、私たちは彼女を聖経師資培訓学校(聖書講師養成学校)へ行かせた。 明日は日本軍が全力を挙げて城内突入を図るだろうが、その場合には、おそらく、激しい戦闘の一日になるだろう。(のちに福田から聞いた話では、実際、前衛部隊は12月10日に光華門に達したが、撃退されたそうだ。)
「Imagine 9」【合同出版】より
武器をつくったり
売ったりしない世界
世界では今、武器貿易を取り締まるための「武器貿易条約(ATT)」をつくることが提案されています。世界的な市民運動の結果、このような条約をつくろうということが2006年に国連総会で決議され、そのための準備が始まっています。 しかし、世界的には武器をつくること自体、また、武器を売ること自体が禁止されているわけではありません。提案されている条約も、武器貿易を登録制にしようというものであり、武器貿易の全面禁止にはほど遠い内容です。 日本は、憲法9条の下で「武器輸出を原則的に行わない」という立場をとっています(武器輸出三原則)。このような日本の立場は、世界でも珍しい先進的なものです。 しかし、一方で、日本はアメリカと共同でミサイル防衛の兵器開発を進めており、この分野は武器輸出禁止の「例外」として認めています。ミサイル開発に携わる企業からは、武器輸出を認めるよう求める声が高まっています。「日本は将来、憲法9条をなくして、ハイテク技術を駆使して武器をつくり世界に売り始めるのではないか」と心配する人も増えてきています。 私たちは、武器を輸出する国になるのか、それとも「武器の禁止」を世界に輸出する国になるのか、分かれ道にいます。