ホント、どんどん好きな人が亡くなっていく。
いつぞや書いたかもしれないけど、実は子供の頃、漫画家になりたかった。
そして、個人的には一番影響を受けた漫画家は3人いた。
その一人が松本零士氏だ。
これ、多分言えば怒られると思うんだけど(笑)。
松本零士、って人の作品に何を一番影響受けたかと言うと・・・。
なんつーの、描画のテキトーさ、と言うか(笑)。
彼の漫画って絵がフニャフニャなんだよ(笑)。描線がフニャフニャと言うか(笑)。
ぶっちゃけ、最初に彼が描いた漫画を読んだ時、
「これでエエんか!」
とひっくり返ったんだ(笑)。
それまでは、永井豪の描くような、描線がシャープで、(今考えてみればそうでもないけど)「デッサンがしっかりして」ないと、漫画って描いちゃいけない、って思ってたの。
藤子不二雄だろうが赤塚不二夫だろうとそうだろ?絵としてはシンプルに、記号化していようが、描線はシャッとしてる。
ところが、松本零士の漫画ってフニャフニャしてんだよ(笑)。
これに衝撃を受けた。
だから怒られるの覚悟で言うけど、「漫画ってヘタでもいいんだ」ってのを教えてくれたのは松本零士だったと思う。
もちろん松本零士って漫画家はヘタではないんだけど、・・・なんつーの、「力の入れ加減」ってのに極端に差がある人なんだよな(笑)。その「ここからはテキトーでいい」とか言うのがハッキリしてる人っつーか(笑)。
要するに「手抜き」(笑)?手抜きの美学っつーの?なんかそういうのに衝撃を受けたんだよ。
いや、今、「松本零士はヘタだった」と言う発言にアタマに来た君。
だってさ。
君は「松本零士の描いた宇宙戦艦ヤマト」を読んだ事があるのかね?
こんなんだぜ(笑)。
なんか、波動砲の射出口が六角形とか造形が意味分かんないんだ(笑)。アニメのヤマト見たことあればびっくりすると思う(笑)。
いや、この扉絵はまだいいんだよ。漫画本編に出てくるヤマトだと、ヤマトの先頭の下の部分がボニョンとかブヨンとかなってて、どう見てもカッコ悪い、って描写が山ほど出てるんだって(笑)。まるで横たわった金玉みてぇに描かれてる(笑)。いや、マジだっての(笑)。
ムニョンとしたヤマト
だからどー考えてもヤマト自体はテキトーに描いてるんだよな(笑)。そのくせ味があるの。
ホンマ、何だこれ、っつーか「これでも漫画として成立するんか」というギリギリの下手さ加減、っつーかテキトーさなわけ。
ホント衝撃的だった。まずは松本零士に漫画表現上の手抜きの仕方を教わったってカンジだ。
当時はまだヘタウマって単語は無かったと思うんだよな。松本零士って人はヘタウマの元祖だったのかもしれないけど、いや、ヘタウマよりは明らかに上手い人なんだけど、ある種一点豪華主義なんだよな。
もう松本零士ってそう、美女が代名詞だったんだよな。っつーか美女だけは手抜きしない(笑)。ほかは基本テキトー(笑)。美女だけは気合の入り方が違うんだわ(笑)。
大体、松本零士の漫画だと、キャプテンハーロックとか宇宙戦艦ヤマトが例外で、主役の男性陣ってガニ股でチビでブサイクってのが鉄板なのね。もう造形美の欠片さえ無くって、でもやたら美女は気合入っている。
「あ、漫画って女性さえ綺麗に描ければ成立すんだ。」
ってのを習ったのも松本零士の漫画が最初だった。
そして松本美女はとにかく脈絡無く脱ぐ(笑)。「痴女か?」って思う程脱ぐんだ(笑)。
あと、松本漫画は基本エロい。永井豪がスポーティーな明るいエロだとすれば松本漫画は淫靡だ。いや、松本零士って人は多分根本的にはドスケベなんだよな(笑)。
メーテルだ、森雪だ、ってのは「少年漫画範疇でのヒロインの枠を逸脱してない」けど、例えばガンフロンティアのシヌノラ。こいつ、今で言うトコのヤリマンなんだけど、原則、松本零士って漫画家はヤリマンな女が好き(笑)。隙あらばチンポ咥えこんでいる(笑)。
多分松本漫画の登場女性の割合見てみればヤリマンの方が多いわ(笑)。じゃなくてもスケベだ。セクサロイドのユキ、ミステリー・イヴ、などそっちの「セックス大好き女」の方に事欠かない(笑)。
ホント松本零士の漫画には色んな事を教わった。乳房を描いても乳首は描かない、とか(笑)。
惜しむらくは80年代半ば辺りで松本零士ブームが終わると、ある種消えた漫画家になっちまった辺り。淫靡ですぐ脱ぐセックス大好きな大人の女より、アニオタは美少女の方を支持しだしたから、だよな(※1)。
端的に言うと、松本零士の描く、色んな意味でミステリアスな美女よりも分かりやすい美少女がウケだしてから、松本零士の活躍の場、ってのは無くなっていったわけだ。松本ヒロインが世の中の潮流に対して敗北したんだ。
それが残念でならない。
色々とありがとう、松本零士先生。
REST IN PEACE!
余談: そう言えば「宇宙海賊キャプテンハーロック」の主題歌を歌ってたのがこないだ亡くなった水木一郎氏か。
「一つの時代が終りを告げた」って事なのかね。
※1: 1982年辺りから「ロリコンブーム」ってのが起きて、美少女が取り沙汰されるようになった・・・それまで「美少女」って単語は無くはなかったけど、特に魅惑的なワードじゃあなかったんだ。
一方、松本零士って作家は絶対ロリは描かなかった・・・と言うか、彼の中では、おそらく、ガキンチョってのは男も女も関係なく、鼻水垂らしたガキ、って印象で、実際描写には力が入っていない。
その、小学校高学年から中学生、にかけて、と言う「美少女」とは松本漫画は縁がなく、その後90年代くらいに始まる「女子高生」ブームとも松本零士は距離を置きつづけたわけだ。むしろ、松本漫画に於ける「女子高生」ってのはブサイクな主役に対してイジメに走る「アイコン」として使われてる例の方が多く、結果、松本漫画では「大人の女」以外ははしにも棒にもかからない存在としての描写率の方が高い。