1)
ぷふぅぅぅ~~~~~っ!
ぷふぅぅぅぅ~~~~~~っ!
ぷふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!
と、吐息を吹き込む音が、クオラの部屋に響いている。
クオラは、タフィが、探索の風船魔法を伝授したので、試験がてら使用してみることにしたのだ。いつ破裂するか、どきどきしながら、めいっぱい、かつ、慎重に、クオラは、息を吹き込む。 そうして、手のひらに乗せるほどだった風船は、クオラの身体を隠すほどにまでに、いつしか、ふくらんでいた。もういいよという、タフィの声を合図に、クオラは、風船の吹き口から、唇を放した。つぅっと、唾液が橋をかけて、クオラの形の良い唇は、風船から離れる。
「 ぷはぁっ!」
「 クオラ、魔法の紐で結ぶのを忘れないでね。」
「 おけ、おけって。うわっ!でっか。」
ふくらましている最中には気づかなかったが、8フィートは膨らんでいるのじゃなかろうか?
人差し指から発する光の紐で、風船の口をしばりながら、クオラは、そう思った。
「 じゃあ、いつものように、キスを風船にしてね。探したい人の顔を、思い浮かべながら。」
「 はぁい。」
タフィに言われた通り、アリエルの顔を思い描きながら、巨大な風船にキスをすると、ふわりと重力に反して浮き上がっていく。風船が浮き上がるのにつられて、クオラの身体も宙に持っていかれそうになる。
「 ひゃっ!」
驚いて、持っていた紐を放すと、部屋の天井を風船はすり抜け、宙へと舞っていく。
すると、不思議なことに、クオラの目の前に半透明のマップが表示された。
「 マップが出て来たでしょ?白い光点が風船、青が目的地。赤が障害物、もしくは、敵。」
「 黄色は?」
「 一般人ね。無視していいわ。」
わかったといって、クオラは、マップに集中した。
「 いたっ!でも、これって。」
クオラが、見つめているマップには、確かに、青いマーカーが点灯していた。
ただし、部屋の外、壁の中に…。
2)
アリエルがいると思われる場所に着くと、そこは、壁に埋め込まれた姿見があった。
一見、ただの鏡に見えるそれは、タフィの見立てに寄ると、個人認証型の転移魔法らしい。
「 誰が、これを?」
不審に思って調べようと、姿見に触れようとしたときだった。
不可視のトラップが作動した。
【つづきは、二日後】