Stelo☆ panero

変態ですがよろしくお願いします。更新は気分次第、気の向くままに。新題名は、エスペラント語で、星屑という意味だったり。

【妄想小説】180GB

2013-03-10 16:31:40 | 妄想小説

1)

薫風が柔らかな春の芽の香りを、自宅の緑が深い庭に運ぶ候。
待ちに待った来賓を知らせるチャイムが、部屋に響いた ———

「 はぁい!」

 その日、独りで留守番をしていた祀風部 りりか ( しなとべ りりか )は、
待っていましたとばかり、南向きの玄関の扉を開いた。

部屋の奥から出てきたのは、アイドルばりの顔立ちの小柄で華奢な美少女で、
配達員も呆気に取られている。そんな少女は、読者モデルをしてまで稼いだ
バイト代を費やして購入した中身が入った、二十センチ四方、高さ十センチ
ほどの平らな段ボール箱に、無造作に載せられた配達記録の欄内へ、予めに
持ち合わせのシャチハタ判を押して、箱を引き取ると自室へ…。

 「 来た、来た…。」

 りりかは、ビニール袋に入った中身が二つあることを、確認して、
満足したように微笑み、三日前の出来事を思い出していた。

2)

 りりかが一日の大半を過ごす、二階打ち抜きの二十畳はある広い部屋の床は、
現在、色とりどりのゴム風船が、春の花園のように敷き詰められていた。

すぅっ…、ぷぅぅ~~~っ!
すぅっ…、ぷぅぅ~~~っ!
すぅっ…、ぷぅぅ~~~っ!

規則正しい呼吸と共に、りりかの愛らしいくちびるに添えているダイヤモンドクリアの
3フィート大までふくらむゴム風船が、彼女の吐息を吹き込まれ、徐々に大きく育っていく。

すぅ…、ぷぅぅぅぅぅっ!!!

 姫系のシングルベッドの上で、女の子座りをしているりりかは、恍惚の表情で、
八十センチ大まで、ふぅふぅと時間をかけて、丸くふくらまし、一旦だが、

ぷはぁっ…♡
と、吹き口に密着させていた薄紅色の唇を、風船から離し、自由にしてから、
風船の口元を軽く広めの紐で縛り、優しく両手で包み込むように風船を抱く。
じっと、しばらく、矯めつ眇めつ、風船を眺めてから、やおら、

ちゅっ♡

と、風船の柔らかなゴム幕に口づけると、堰を切ったように…、

ん…ちゅっ♡…ちゅっ♡

と、風船に隈なくキスの嵐を与え、

 「 ん、あはぁ…。」

などと、たまに艶っぽい声を出して、

ちゅっ♡

と、何度目かのキス。

 「 ん~…?まだ、大丈夫そ、かも?」

りりかは、やや不満げに、ひゃぁぁっと咽喉を鳴らして、
空気を思い切り吸い込み、肺にいっぱいに満たすと、

んぷ…、ぷぅぅぅぅぅっ!!!
すぅ…、ぷぅぅぅぅぅっ!!!
すぅ…、ぷぅぅぅぅぅっ!!!
すぅ…、ぷぅぅぅぅぅっ!!!

 間断なく、90センチ近くまで、吐息を吹き込んで、
一旦、風船を口元から離さないままに、休憩して、

 『 もう、ダメだよぉぅ…。』

 という風船の声がするけど、もうちょっと頑張ってと、
励ましながら、りりかは、最後の吐息を、風船に込めた。

すぅ…、ぷ…、ぷぷぅぅぅぅぅっ!!!

 刹那、ぼんっという爆ぜる音がして、風船が破裂し、
りりかは、魂が抜けたような虚無感を抱きながら、

 ( もっと大きくふくらむ、代わりの子がいればなぁ…。)

 そう、強く感じ、階下のパソコンの電源を入れた。

3)

 そして、今日、巨大風船が、りりかの手元に届いたのだった。

【つづく】