瓢簞舟の「ちょっと頭に浮かぶ」

こちらでは小説をhttps://kakuyomu.jp/works/16816700427846884378

読書メモ(五十嵐大介 その2)

2024-05-26 07:30:32 | 本の話
文藝別冊「五十嵐大介」(河出書房新社 2014年)

インタビューや対談、新作1本・未収録3本などが載ってる雑誌。
単行本未収録作「台湾の犬」ってのがいい。いや、ま、ほかの作品も好きですけどね。

「台湾の犬」はエッセイ漫画ってジャンルになるんですかね。五十嵐大介のコメントに「過去に戻って描いた絵日記みたいなものです。」とあります。ホント絵日記です。他愛もないことしか描いてない。パトカーの絵に「パトカーがパンダっぽい。」と言葉をそえる。ほかには赤1つと緑1つのポストの絵に「ポストが赤と緑のペアです。」と書いてあったり、犬の絵に「どうやら野良犬が多いみたい。」と書いてあったり、絵に一言そえるコマがつづく。まさしく絵日記。ドラマはありません。心にとまったものを絵に描き、感想をひとこと。それだけ。ハッとするのは左足がない犬が颯爽と走り去るシーンですが、ま、全体は淡々とした絵日記です。これで読み物として満足しちゃうんだから凄いですね。絵の力でしょうか。日常風景に詩情が出てる。

編集後記に「もっと多くの人に五十嵐大介という作家を知ってほしい。そう思って出した企画が通り、こうして形になりました。」とある。五十嵐大介ってマイナーな作家なのかしら。誰が有名漫画家だとかヒットメーカーだとか、あたくしはまったく知らんからなあ。この雑誌がでた2014年の時点でも「リトル・フォレスト」は映画化されてるから売れてる漫画家のような気もするんだけど。で、その後2019年には「海獣の子供」も映画化されてるし。映画化と人気漫画とは関係ないのかもしれませんが。

「海獣の子供」は漫画も映画もおもしろかった。でも読んだのも観たのも数年前だから感想を書くには記憶がおぼろげ。おもしろかった、としか書けませんがそれじゃなにがなんだか分からんので他人の褌で相撲を取ることにいたしましょう。気が向いたらこちらの記事を読んでください。

https://realsound.jp/movie/2019/06/post-374100.html

こういった感じの映画です。賛否があるらしい。
記事にもありますが、五十嵐大介の絵をテイストを損なわず動く画にしているのに感心しました。内容としては「ナウシカ」を思わせるようなところもありますね。
「海獣の子供」はまたいずれ読み返す機会もあるでしょう。いまは「ディザインズ」(1巻 2016年)を読み始めたところ。

「リトル・フォレスト」(ワイドKCアフタヌーン 2004年)も少しずつ読んでます。映画は観てませんけど。映画の公開はおよそ30館と小規模だったらしいです。韓国でリメイク版が作られ韓国ではヒットしたようです。
作者自身の体験をもとにした都会から田舎へ戻り自給自足をする女性の話。日常生活のなかで自分を見つめ自分を取り戻す。まだ全部は読んでませんけど途中まで読んだいまのところそんな描きかた。主人公は都会から田舎に逃げ帰ってきたので鬱屈したものを抱えてる。それが日々の暮らしのかで変化していく。そんな話。そしてこれ、グルメ漫画としても読めますね。毎回何かしら食べてます。自給自足生活が背景にあるので食べることは生きることっていう力強さを感じます。

物だけでなく漫画などのコンテンツも大量生産大量消費される時代です。その大量生産のなかで埋もれてしまう作品、次々と消費されていくなかで消えていく作品も多いことでしょう。編集後記で書かれてあるように「知ってほしい」という編集者の気持ちもわかります。なので、発信力がないのを承知しながらあたくしも紹介をかねて感想書いたりしてるわけです。知ってほしいだったり、残ってほしいだったりという気持ちでね。
ま、それでも残念ながら消えていく作品がほとんどでしょう。傑作だから人気が出てたくさんの人に知れ渡るわけでもないし、名作だから後々まで残るというわけでもない。宣伝の仕方にもよりますが、運の力も大きいでしょう。もちろん作品の行方は運次第といっても、まずはいい作品であることが前提条件ですけどね。
バッハなんて例もあるし。バッハは今に残っていますが再発見された音楽家ですから。残ったのは作品の質が良いのに加え運も良かったってことです。運がなければ忘れ去られてそのまま再発見されることなく消えていたことでしょう。

今に伝わらず茫漠たる時間のなかに消えた多くの作品。そのなかには名作もたくさんあったことでしょう。その死屍累々たるありさま。
作品は生まれては消えていきます。それは人も同じ。生まれては死に、時の流れに消えゆく無数の名人上手。あるいは名工。そして名も無い立派な人たち。

本当にうたかたですね。はかなさを感じます。


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2 コメント

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Unknown (cdt63430)
2024-06-02 19:38:42
名も無い人々がほとんどで、世界はそういう人々で出来ています。
名は残りませんが何かしらのことは、それを「知った」人々のなかに残り(はるのとりさんのおっしゃる“宝”とはそういうことなのかな、ト)、次へつながることでしょう。

「はかない」と書きましたが、そういう意味では伏流水のごとく見えないところで何かしらのものは消えずに流れつづけているようでもあり、決して「はかない」わけでもないのかもしれません。
返信する
名も無き よう な (はるのとり)
2024-06-01 11:18:37
その 中 に

ひとりひとり ひとつひとつ

その 存在 を
知る 事 が
出来て よかった と
思います …

瓢箪舟さんの こと も 勿論。˘ ˘ゝ(o^-')

わたし には すべて 宝 に なります。˘人˘*
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