瓢簞舟の「ちょっと頭に浮かぶ」

こちらでは小説をhttps://kakuyomu.jp/works/16816700427846884378

読書メモ(小松左京 その2)

2024-09-22 14:00:54 | 本の話
前回は進化は存在様式だってどこまででした。

あたくしは進化は存在様式だってのは言い過ぎだと思いますが、ともかく小説ではそう言ってまして、だから進化しようと躍起になってて、進化が滞ってる現状を「袋小路」と言ってるわけです。進化じゃなく変化するだけだと捉えていれば「袋小路」なんてないんですけどね。常になんらかの変化はあります。発展性のある変化はそうそう無くてもね。

で、その進化の鍵、ただ一つの可能性とブレインが考えてたのは太陽系外宇宙の知的体系との交信ー情報交換なんですよ。
あたくしは人類のこの脳で宇宙人という別物の脳の思考を理解することは出来ないんじゃないかと前回書きましたが、そんな面倒くさい話はともかく小説では情報交換こそ進化への可能性であると話を進めます。ま、確かに袋小路を打開するために別物を注入するってのは一つのアイデアですよね。

川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」のときに異なる存在を受けいれるのは困難ってな話をしましたが、太陽系外宇宙の知的体系なんてそれこそ異なる存在です。SFだとファーストコンタクトものはいろいろありますが、それはフィクションだから成立してることで現実的に考えれば異なる存在とは相容れないものなんでしょう。ま、何を描きたいかによってフィクションの設定はいろいろあっていいですから、この小説では異なる存在を排除せず情報交換の相手として重視します。

太陽系外宇宙の知的体系との交信のチャンスが訪れたとき機械脳は必死に交信しようとするんですがあちらはこちらに興味をなくし交信が途切れそうになります。そのとき機械脳に助言を与えるのが人類なんですね。

「わたしたちの“袋小路”を打開するには、わたしたちと別な原理にたっているかも知れない、他星系のものとの、情報交換しかない。だが……」
「むこうもそれをもとめている。むこうも、交配をもとめているのだ。あのよびかけには、そういう交配的な“交流”をもとめる“愛”のパターンが、あらわれている。そして、おそらく、こちらからも、そういったタイプの“愛”のパターンを通じての通信をおくらなければ、むこうは、交信の次の段階へ進もうとするまい。それは、高等動物の“求愛行動”のプログラムと同じ構造だろう」

機械脳だから“愛”のパターンがわからなかったんですね。そこで“愛”を指摘するのが人類。
情報交換を交配と捉えるのがおもしろい。ま、情報交換ってのは相手を知りたいってことで、知りたいってことは愛してるってことですから、それは交配につながりますね。そうやって混じり合うことで進化が促される。

人間は変わらない。というなら、変わるためには異なる存在と混じり合うことが必要なんですけどね。けれど、人間は異なる存在を否定する。ここらが人間の限界なんでしょう。”袋小路”というなら人間のこの性質こそ“袋小路”なんだと思います。


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