日常の切り取り方を少し変えるだけで、面白かったりはっとしたりするような新しい世界が見えてくることを教えてくれる展覧会でした。
(写真撮影OKの展覧会だったので、以下写真を交えて書いていきます。)
川崎義博「異差・交差」 川口市立アートギャラリー・アトリア
川崎義博さんの作品は音とオブジェを組み合わせた作品。 はじめは「これは○○の音かな?」なんてさらりと聞いていたのが、「この音は一体何の音?」とすぐに分からないと、小さな音のスピーカーに一生懸命耳を近づけて聞いては、自分の知っている音に結びつけようとしてしまいました。
「○○の音」とすぐに分かってしまうときには、ひょっとしたらちゃんと耳で聴かずに、頭の中で音を作ってしまっていたのかも…?
川崎義博「異差・交差」 川口市立アートギャラリー・アトリア
ここで流れる音は川口の街で採集されたもの。私にはちょっと馴染みがないなぁと思った音も、地元の人には聞きなれた「○○の音」なのかも。逆に、自分の聞き慣れた音も、他の人が聴いたら”不思議な音”に聴こえるのかも。同じ音でも、人によってどう聴こえ方が違うのかな、ということも気になってきます。
中崎透「看板屋なかざき」 川口市立アートギャラリー・アトリア
「聴覚」を働かせた作品の次は、川口の街のなかで集められた「視覚」。中崎透さんの作品は、まず街の中にある標識などのサインを写真の中に採集していくところから始まっていました。色々なフォントがあって面白いけれど、どれも「どこにでもある」、”川口らしさ”という個性もあまりないない街並を切り取っただけのようにも見えましたが…
中崎透「看板屋なかざき」 川口市立アートギャラリー・アトリア
次の部屋に入ってびっくり。採集されたサインの輪郭だけが切り取られて、色は単純化された看板で構成された新しい街が作られていました。(これはぜひ全体の雰囲気を生で見ていただきたいなと思ったので、会期中は作品の一部のアップの写真だけ載せます。)「どこでも同じ」と思っていたサインなどの工業製品の輪郭を取り出して陰影をなくすと、ゆがみや、ずれ、削れなど、そのサインだけの個性があることに気づいて驚きました。
また、写真の方が”現実のまま”を映しているように見えて、単純化した方がよく見えるものがある事にも驚きました。
クワクボリョウタ「以心分身」 川口市立アートギャラリー・アトリア
最後はクワクボリョウタさんの作品。(こちらも本物の全体を見ていただきたいので写真は部分だけ載せます。)川口の日常を採集した前の二つとはちょっと趣向が違う作品。
壁の前に立つと、自分の影が分断されたり分身したり…と、予想とは全く違った影が出来上がります。とにかく面白くて、と思わず手を振ってみたり、壁に近づいたり離れたりしてしまいました。
クワクボリョウタ「以心分身」 川口市立アートギャラリー・アトリア
一体どうなっているの?!ととても不思議に思いますが、仕組みに気づくと構造は本当にシンプル!どうしてこんなことが思いつくんだろうってびっくりしてしまいます。 でも実はこれに近い影の動きって、実は日常生活で経験しているんじゃないかなぁと思いました。
毎日のように見ているけど見逃してしまっていること。日常に隠れたちょっとした”面白いこと”を切り取って、拡張して見せてくれる。アーティストの方ってすごいなぁと思いました。
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川口市立アートギャラリー・アトリア
こちらのギャラリー、私は初めて伺ったのですがとても素敵なギャラリーだなぁと思いました。
まず、会場に入ると「アートウォッチングボード」というものを大人にも子どもにも渡してくださり、付箋に感想を書いて壁に貼って行くのです。見知らぬ誰かの感想を読んでいると、気づかなかったことに気づいたり、同じような感覚を持っている人に親近感を感じたり。付箋で気軽に書けるのも面白いなぁと思いました。
川口市立アートギャラリー・アトリア
こちらのエントランスにはカフェが併設されていて、多くはないですが美術関係の本が置かれています。「美術手帳」などの雑誌もバックナンバーがそろっていて、ひだまりの中コーヒーを飲みながらのんびり雑誌を読んで過ごすのもいいなぁなんて思いました。
川口市立アートギャラリー・アトリア
ギャラリーの隣は公園になっています。ギャラリー自体もガラス張りでとてもオープンな雰囲気。高校生以下は無料なので、子どもが友達同士でひっきりなしにギャラリーに出入りして楽しんでいる様子にはすこし驚きました。小さなころからこんな風に自然に作品に触れられるなんてすごい! ちなみに、大人も入場料300円で会期中は何度でも入れるというパスポート制。近くに住んでいる方がうらやましいですね。
ちなみに、チラシやパンフレットもとても面白いつくりになっていたので、ぜひ手に取ってみてください。
大きな展覧会ではありませんが、日常の中で見逃している色々なことに目を向けさせてくれて、作品自体もとても面白くて。今ぜひおすすめしたい展覧会です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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