目に見えているものは モノではなくてすべて光だ、そんなことを体感させてくれる展示でした。
八木夕菜「NOWHERE」 @ポーラミュージアムアネックス
建築学部の卒業で、建築設計事務所での勤務経験をもつという、写真家の八木夕菜さんの写真展です。
写真展といっても、壁に写真の並べられた展示とは違って、会場のいたるところに、立体的な作品が並び、しゃがんで見たり立って見たりといろんな角度から眺めたり。
建築写真とアクリルブロックを組み合わせ、アクリルブロックで屈折した像を見る作品が多かったです。
■ ひとつになる世界 / It’s One World シリーズ(2015-18)
まず入り口にあるのは、アクリルブロックのいくつかの建築写真を置き、それを組み合わせたシリーズ。写真の像がアクリルブロックで屈折し、見る角度によって、まったく違った作品の顔が見えてきます。
写真は平面ですが、なんだか三次元の建築の中を散策しているような気分になってきます。
■ ANOYMOUS シリーズ (2018)
その場所の象徴的な建物やロゴの上にアクリルブロックを置いたシリーズ。真正面から見たときには、その象徴的なモノが見えて「ここだ」とわかるけど、角度を変えるとそれが見えなくなり、「どこでもない」場所になってしまいます。
これは、作者の意図しているところではないかもしれませんが、なんだか有名な写真と同じ構図で撮影しないと、そこを ”見た” 気になれなくなってしまうような、先入観のようなものについても考えさせられるような作品でした。
■ くずれゆく世界 シリーズ (2016-18)
歪ませた写真の画像の上に、大きなアクリルブロックが置かれた作品。水面をとおして世界を見ているような不思議な感覚と、意図せずに起こってしまったモアレを見ているような引っかかるような複雑な感覚との狭間で、美しいけれどもやもやとした気分にもなる作品でした。
■ Blanc / Black (2018)
手前にはとても明るい写真の写ったポジフィルム、壁には対照的に暗い雰囲気の写真。
なんだろうと思ったら、同じ場所を多重露光したものを、光の三原色”RGB”と、色の三原色”CMY”でそれぞれ表現した写真なのだそう。肉眼で見ているものと、撮影したもの、印刷したもの(プリントではなく)は、単体では同じモノに見えても、それぞれ捉えているものが全然違うということに気づかせられる作品です。
何重にも重ねることで、Blanc(なにもない)状態と、Black(黒)の状態を作り出していて、そして、BlancもBlackも、どちらも”色がない”状態、という掛詞のようなタイトルも面白かったです。
会場内には、フィルムプロジェクターで当てた光を鏡に反射させた、「NOW / HERE」と書かれた光が終始動き続けていました。「NOW/HERE」=「今、ここ」と「NOWHERE」=「どこでもない」を行ったり来たりするのが、今回の作品を見ている時の感覚を表しているようにも感じられました。
光であふれた展覧会でした。7月8日(日)までです。
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■八木夕菜「NOWHERE」 @ポーラミュージアムアネックス(銀座)
会期:2018/06/15(金)~2018/07/08(日)
時間;11:00~20:00
休館日:会期中無休
入場料:無料
京都を拠点に国内外で活躍する写真家・八木タ菜の展覧会。
その作品は、写真をただパネルや額に入れて壁に展示するにとどまらず、展示空間を建築的に構成するかのように床に置いたり、透明のアクリルの立体を通して視ることで再構成する写真など、写真の持つさまざまな表情や見え方を提案し、作品を通じて「視る」という行為の自由さに気づかせてくれる。本展では新作を含む約30点が展示予定。
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