残り会期短いですが、印象に残る作品でした。
原宿のVACANTで開催中の「小泉明郎展「帝国は今日も歌う」」。
昨年、オランダのデ・ハーレン・ハーレム美術館での個展で発表した新作映像インスタレーション「夢の儀礼─帝国は今日も歌う─」の日本初公開となる展覧会で、30分程度の映像1本のみの展示です。小泉明郎さんが幼少期に見た夢に基づいて制作されたという作品で、”家の前をたくさんの警察官が取りかこみ、父親が警察に連行される” という場面の語りから始まる映像作品なのですが…
2回観て、1回目は自分が悪夢のような光景の渦中にいるような感覚になって恐ろしくなった一方で、2回目に少し離れた視点で見てみると、、”世界すべてを敵に回した”ようなその光景は、実は大多数は”無関心”の中でごく一部の人たちの熱狂の中だけで作り出されているように見えてきて、別の怖さを感じる作品でした。
どちらかといえば自分も”無関心”の側の人間で、昨年発表された小泉明郎さんの「空気」(天皇を透明な存在としてキャンバスに描いた作品)などの作品はイマイチぴんと来ないなあ…と思っていました。でも”無関心”の人間もいつの間にか悪夢の中に放り出されるのかもしれない…という恐怖を感じました。"他人事”だったものが、映像を見ているうちにどんどん”自分事”になっていくようでした。
ストーリー(映像)もすごくインパクトの強い作品でしたが、音の撮り方なども印象的で、後半は小さい頃に泣きすぎて頭の中に自分の嗚咽が響き渡ってしまうときの感覚を思い出してしまいました。スピーカーから流れてくる音が、だんだん自分の頭の中で鳴り響いているような…自分の感覚であるかのように感じられてくるようでした。
巨大な3面スクリーンを使い、映画館のような空間で見られる今回の展示空間で作品が体験できてよかったと思います。いろいろとインパクトがあまりにも強くて、数日間は良い夢が見られなくなりそうですが…
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■DATA
会期:5月3日〜11日
開館時間:12:00〜20:00
料金:500円
本展では、昨年、オランダのデ・ハーレン・ハーレム美術館での小泉個展で発表した新作映像インスタレーション「夢の儀礼─帝国は今日も歌う─」を、日本で初公開します。
この作品は、小泉が幼少期に見た奇妙な夢を出発点に、日常に潜む文化の暴力を扱った作品として昨夏、東京で撮影されました。出演者が語る小泉の夢の物語と、ナショナリズムに潜在する暴力やヒロイズムへの陶酔が交錯する現実の情景が何層にも重なり合った本作は、夢とも現実ともつかない、虚実入り乱れた異空間に鑑賞者を誘います。
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