抑揚のない真っ暗な背景の中に、おぼろげな雰囲気でありながらも、なぜか強いイメージで浮かび上がる女の子。
(「無題」(トーキョーノーザンライツフェスティバル2014ポスター原画) / 田中千智)
(「ケモノたち」 / 田中千智)
不思議な雰囲気にぐっとひきこまれる、田中千智さんのオイルペインティングの展覧会が横浜市民ギャラリーで開催されています。
(横浜市民ギャラリー入り口)
暗闇から光が浮かび上がるような不思議な色は…?と近づいて見てみると、女の子の顔はカンバスの白い地が見えるほどに薄く塗られていたり。均一な黒い地の上に絵を描くのではなく、透明感のある色で人物を描いた後から均一な背景で塗りつぶしているんですね。
(「無題」(トーキョーノーザンライツフェスティバル2014ポスター原画) / 田中千智)
特に印象的だったのは「きょう、世界のどこか」という夜の風景の絵。画面のほとんどが黒く塗りつぶされていますが、それが海になり、空になり… 黒が"余白"ではなく、作品を構成するものになっている様子が面白いです。
(「きょう、世界のどこか」 / 田中千智)
背景がシンプルな分、人物やそれを彩るものの筆遣いひとつひとつにぐっと引き寄せられます。インスタレーションではなく、絵画でもこんな風に作品の世界に没入できるなんて、画集ではなく実物を目の前にしてこその経験かもしれないと感じました。
(シンプルに見える真っ黒な背景ですが、筆跡が見えなくなるまで、多い時には15回も塗り重ねられているんだそうです。)
今回の個展では
・個展のために製作された新作14点
・装丁画や宣伝美術
・黄金町バザール2008で発表された「107人のポートレート」
・水彩画の挿絵
など、2フロアにわたって多数の作品が展示されていました。
(「107人のポートレート」 / 田中千智)
特に地下のフロアには100号/130号という巨大な新作が並び、その壮大な作品群は祭壇画のような雰囲気でした。
(地下の展示風景)
(「意識の旅」/ 田中千智)
こちらの展覧会、なんと入場は無料!無料とは思えない質と量です。さらに、画集のような美しい作品集の小冊子までいただけます。写真も撮影OKでした。
(会場でいただいた小冊子。横浜市民ギャラリーのHPからダウンロードもできます。)
(ポストカードなども販売されています。)
こちらの個展は10月18日(日)までですが、現在開催中の黄金町バザールでも展示が行われていたり、10/22日(木)からは銀座の小林画廊・村越画廊でも展示がはじまるそうです。こちらも合わせてどうぞ。
なお、横浜市民ギャラリーの近くには野毛山動物園もあります。
こちらもまた、入場無料と思えない動物園ですので合わせてどうぞ。
■DATA■
会期:2015年10月2日[金]~10月18日[日]
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)(会期中無休)
料金:入場無料
「ニューアート展NEXT」は、横浜と関わりのある気鋭の若手作家を紹介している展覧会。今回は、画家・田中千智の個展を開催します。
田中のこれまでの活動のなかで最大規模の個展であり、近年ますます深度を増す作品世界に再び横浜で出会える待望の展覧会です。タイトルの「I am a Painter」には田中の画家 としての強い意志が表れており、会場には本展のための大型の新作が登場します。また、異なるジャンルの作家と制作した作品を展示したり、2008年の肖像画を黄金町のまちなかに再展示したりして、これまでの多彩な活動を一望します。
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