調布で開催中の関口光太郎展「新聞紙とガムテープで彫刻つくった!」。
今週末で終わってしまいますが、とても面白い展示でした!
会場にあるのは、ぐちゃぐちゃに丸めた新聞紙をガムテープでぐるぐると束ねて作った巨大な彫刻(?)たち。ハリボテの下地のような状態の彫刻で、一見こどもの工作のようにも見えてきます。
ただ、そんな彫刻をよーく見ていくと、細かい造形と作品のもつ意味にどんどん引き込まれていきました。
例えば、会場の入り口にある「女王」という高さ約2mほどの大きな彫刻。王冠を被った凛々しく巨大な女王様の像がゴシック建築のように細かな装飾で彩られています。
ところが、近づいてみるとその女王様は、スニーカーを履き自転車の前と後ろにこどもを乗せたお母さん。そして自転車の周りを彩っているのは、ワニやカメレオン、サイなどのたくさんの小さな動物たちや、花、そしてこっそりと「U can be Queen」という文字。(これらの装飾もすべて新聞紙とガムテープでつくられたもの。)
(「女王」2012 ;写真は会場HPより)
「(美しい女性をモデルにした作品は世の中に数多くあるけれど)新しい人類を育てるというミッションをまっとうしている女性が特に美しいと思います」という作者のことばを読んでからもう一度作品を見返すと、母親の持つ力強さと、美しさ、そして色々な生物が「おかあさん」によって育てられていくような意味を感じられてきます。
作者の関口光太郎さんは2012年に岡本太郎賞を授賞されたアーティストで、今回展示されている作品は、その際の岡本太郎記念館での個展で展示されたもののようです。(受賞作品の「感性ネジ」は、高さ5mにもおよぶ作品だったのだそうです。関口さんのブログで写真も拝見できます。)
(関口光太郎さん;写真は会場HPより)
今回の展覧会ではこれらの作品の他に、関口さんが美大時代に製作された張り子の動物たちの作品も数多く展示されていました。こちらは、新聞紙・ガムテープで作った彫刻の上に和紙がきれいに貼り込まれ、美しい色と模様に彩色されていてとても素敵。これらの”きれいな”動物たちと比べると、なんだか新聞紙・ガムテープむき出しの作品は退化しているようにも見えてしまうかもしれません。
でも今の作品は、むき出しの素材の生々しさや迫力が感じられ、また色がないために作品もつ表情や雰囲気が自分の中で色づけされ、自分の経験と重ね合わされてくるようにも感じられて、とても強いエネルギーを放っているように感じられました。
関口光太郎さんは普段は特別支援学校の先生もされているそうです。展覧会で流されていた映像や当日のワークショップの様子も拝見しましたが、とても優しく生徒に寄り添いながら、時にはこどもたちと同じようなテンションで作品を製作されているのが印象的でした。
会場は親子連れが多く、大人もこどももそれぞれの視点で作品を楽しんでいるように見えました。大人の視点とこどもの視点を行き来しながら作られた作品だから、幅広い世代から共感を得るような作品になるのかもしれませんね。
今回展示されている作品の一部は、関口光太郎さんのブログでも拝見することができます。また、「ガムテープと新聞だけでつくった巨大彫刻がスゴい…!」(IRORIO)という記事で、これまでの作品とインタビューも拝見することができます。
あと数日ですが、お近くでしたらぜひ足を運んでみてください。
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■ DATA
(「大人魚姫」2012; 画像は会場HPより)
会期 2015年6月8日(月)~7月26日(日)
休館日 6月22日(月)・23日(火)
時間 10:00~18:00
会場 文化会館たづくり1階 展示室 (access)
入場料 無料
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