おしゃれな雑貨やシンプルでかっこいい雑貨など、雑貨ってお店で眺めてるだけでもわくわくしますよね。そんな「雑貨」をテーマにした展覧会が21_21DESIGN SIGHTで開催されています。
■ これも雑貨、あれも雑貨! 幅広い雑貨の世界。
会場で出迎えてくれるのは、3つの机いっぱいに広がる雑貨たち!
(「雑貨展の雑貨」 / 展覧会企画チーム )
調理器具や文房具などの身近な小物や、かわいいキャラクター小物、木彫りの熊のような民芸品まで、さまざまな「雑貨」が並び、見ているだけでわくわくしてきます。
改めて見ると色んなものがありすぎて「雑貨」ってなんだっけ?と考えてしまいます。
辞書をひいてみると
「雑貨」 :日常生活に必要なこまごました品物。
「雑マンダラ」では、「雑誌」「雑居」など、「雑」の字のつく二字熟語がイラストとともに紹介されています。こうしてほかの「雑」なものたちと比較してみると、「雑貨」の”こまごまとした品物”のニュアンスが伝わってくるように感じられます。
「雑貨」という言葉は、海外にはない日本特有の概念のようですね。
(「雑マンダラ」/ イラストレーション:川原真由美)
■ 雑貨を通じて人を知る?
会場の多くを占めているのが「12組による雑貨」という展示。さまざまなジャンルで活躍される方々が選んだ雑貨がセレクトショップのようにずらりと並びます。
セレクトされた雑貨を見ていると、その人が大切にしている考え方が伝わってきたり、普段はどんな活動をされているんだろう?ということが気になってきます。
(築220年の武家屋敷を改装した家で暮らしながら宿を営む松場登美さんのセレクトした雑貨:「復古創新/レトロフューチャー」)
面白かったのは銀座で書店を営む森岡督行さんの「「銀座八丁」と「雑貨」」。昭和28年の銀座の写真から現在も続く店を探してその商品をピックアップしたもの。60年以上も銀座でお店を続けるお店の雑貨は、どれも魅力的です。
(「『銀座八丁』と『雑貨』」 / 森岡督行(森岡書店代表)
昭和28年の銀座通りの写真。現代にも馴染みのあるお店の名前も散見されます。)
これらの展示に加え、昭和初期に考古学ならぬ「考現学」を提唱した今和次郎の雑貨に関する研究結果と、現代人の雑貨の持ち方を比較した「今和次郎と現代の『考現学』」(菅俊一)や、理想の生活を壁一面のチャートで問い続ける「終わらない自問自答」(池田秀紀/伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家))などを見ていると、ライフスタイルとその人の持つ「雑貨」は、密接な関係にあることに気づかされます。
(「終わらない自問自答」(池田秀紀/伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家))
■ 定番商品も、手作り品も。身の回りの雑貨の魅力。
展示の後半は「雑貨」そのものの魅力を感じられる展示です。
「「」」(青田真也)は、見覚えのある日用品のパッケージだけど、なんだか質感がちがう…もしかして、彫刻…??
(「」 / 青田真也
あのパッケージだ!とすぐに思い浮かぶけど、なんだか発泡スチロールのような質感…?)
よく見てみると、プラスチックや紙の容器にやすりをかけて、表面を削り落としてしまっているんですね。色が淡くなり柔らかい雰囲気になったパッケージは触ったらスポンジのように柔らかそうにも見えてきて、”だまし絵”のようでもあります。
あまり意識したことがなかったけど、質感が変わったり商品名が消えてしまっても「あ、あのパッケージだ!」と分かる、「定番」雑貨だったことにも気づきます。
普段は使い終わったらゴミにしてしまうようなパッケージを集めた「キッチュな生活雑貨パッケージ」(町田忍)も、その多様性に気づくことができて面白いです。普段から目にしていると思っているものも、よく見ると少しずつデザインがかわっていっているんですね。
(崎陽軒のシウマイでおなじみの”ひょうちゃん”も、顔だけじゃなくて形も少しずつ変わっているんですね)
(マッチ箱って、絵柄だけじゃなくて大きさや形も様々なんですね。)
「雑種採集」(野本哲平)は、一般の人による手作り雑貨や、本来の使い方とは違った使い方をしている雑貨を紹介。たとえば、ラジカセの持ち手を使ったタオルハンガーや、日傘を使ったランプシェードなど。
(ラジカセでできたタオルハンガーはすごいインパクト。なんで作っちゃったんだろう…?)
”雑貨”のなかの”雑種”なんて、なんとも表現しがたいモノが並びますが、見た目にはスマートではなくても、自分の好きなようにカスタマイズしてつくったものが一番使いやすかったり愛着が持てたりするのかもしれませんね。
(愛にあふれたてづくり雑貨たち)
今回のディレクターは±0や無印良品のデザイナー・深澤直人さんで、「雑貨」のデザインに着目した展示が多いのかと予想していたので、「雑貨」そのものにスポットを当てた展示が少なく感じたのは少し残念でもありました。
でも、「雑貨」はそれを持っている人を写す鏡のようにも見えてきて、自分の生活を構成している「雑貨」に一度ちゃんと目を向けてみようという気分になりました。
(身の回りの”不要品”に目を向けた「d mart used 「D&DEPARTMENT PROJECTが考えるコンビニエンスストア」/ ナガオカケンメイ+D&DEPARTMENT PROJECT
洒落た雑貨が並ぶ展示の中では少し異色です。でもこうやって示されると、自分は便利にいつでも手に入り、いつでも捨てることができる、交換可能なたくさんのもの(でも、とっさに必要なものでもあったり…)に囲まれて暮らしていることに気づかされる印象的な作品でした。自分の中で最も大切なことは「効率」になっているのかもしれない…と、自分の生活と雑貨を見直してみたくなる作品でした。)
「雑貨展」は6月5日(日)までです。
■DATA■
会期:2016年2月26日(金)~6月5日(日)
会場:東京都 六本木 21_21 DESIGN SIGHT
時間:10:00~19:00(4月28日は22:00まで)
休館日:火曜(5月3日は開館)
料金:一般1,100円 大学生800円 高校生500円
今日、私たちの暮らしのいたるところに、「雑貨」と呼ばれるモノが存在します。しかし、非常に身近であるはずの「雑貨」は、すぐ手の届くところにありながら、その定義は曖昧にして捉えどころがありません。本展は「雑貨」をめぐる環境や感性を、世界的にもユニークなひとつの文化として俯瞰し、その佇まいやデザインの魅力に改めて目を向ける展覧会です。
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