電機屋さんの格好で様々な自動演奏楽器などを作り出すユニークなアーティスト、明和電機。
そんな明和電機の、大阪では20年ぶりとなる個展が開催されたので行ってきました!
(前売り券には、20年ぶりの大阪個展を喜ぶ漫画が。)
会場入り口には巨大な今回の展覧会のメインビジュアル!
(こちらの写真が、明和電機代表取締役社長・土佐信道さん!)
「超常識機械」と書かれているのは、今年はじめに上海で開催された大規模個展で使われた「ナンセンスマシーン」の中国語訳です。
「ナンセンス」=「無意味:意味からの解放」ではなく、「超常識:常識を超えて新しい常識をつくる」という土佐社長自らによる訳は、明和電機の製品(←作品のことです)を明快に表していて面白いです。
では、会場へ。
(会場入り口では明和電機の制服を着て、「パチモク」「コイビート」といった製品を持ったマネキンがお出迎え。)
明和電機の作品は主に、「ボイスメカニクス」「魚器(NAKI)」「エーデルワイス」「ツクバ」という4つのシリーズから構成されています。今回の展覧会ではそのおよそ7割(!)という多くの作品が展示されていました。
①機械が歌う?!「ボイスメカニクスシリーズ」
まずはじめの部屋は、機械的メカニズムで機械が”声”を発する作品「ボイスメカニクスシリーズ」。
歌ったり笑ったりという、人にしか出来ないような表現に機械で挑んでいるからでしょうか、また”歌う機械”が生きもののようででありながらも表情が読み取れないためでしょうか(インタビューでは”埴輪や土偶”的とも表現されていました)、 銀色のアルミと白いプラスチックで構成された空間は神聖さを感じさせる空間でした。
(人間のように笑うロボット「ワッハゴーゴー」。モード学園のCMにも出演していましたね。流線型の造形がなんとも美しいです。)
(歌を歌う装置「セーモンズ」。アコーディオンのように空気を送って、ゴムでできた人工声帯で歌います。)
(土日には、土佐社長による解説も。ゴムの張力と形状を変えて2オクターブ音程を変えられるそうです。)
(人工声帯の試作品。今とは全然違う形状ですね。)
②自分とは何か?「魚器(NAKI)シリーズ」
続いては、魚をモチーフにした「魚器(NAKI)シリーズ」。土佐社長20代の頃の作品です。「自分とは何か?」と考え続けていたたくさんの問いの答えが、ある日すべて「魚」に集約されたのだとか。
(魚器の全製品を紹介するビデオも放映されていました。初期の作品とあって、若い…!)
生死を感じさせる作品から、思わずクスッと笑ってしまうダジャレのような作品まで幅広い作品が、すべて魚に集約されています。
(電話の時報にあわせて天井の針が落下し、タイミングが悪いと下にいる魚に刺さる装置「ウケ-テル」。魚はいませんでしたが、代わりに盛られた塩が死のイメージを連想させます。)
(目を光らせて怪しく回り続けているこちらは、魚型電動ハーブ「魚立琴 (なたてごと)」。)
(鯉型デザイングラスハーブ「グラスカープ」。)
③女とは何か?「エーデルワイスシリーズ」
今度はうって変わってカラフルなミニチュアと写真。こちらのシリーズはまず世界観を表す物語がつくられ、それを具現化した作品が並びます。
(こちらのミニチュアは、それぞれの物語を表す作品。)
これまでになくインスタレーション的な展示が並び、明和電機の「製品」とは少し異なる、物語の世界に入り込んだように感じられる展示が印象的です。
(林檎の弾丸を落下させ、地球の中心を正確に撃つライフル「ニュートン銃」と、サバオマスク。銃口はこちらに向けられているようでも、りんごは地球の中心に向かって発射されます。)
(エンジンで駆動するナイフが並んだアゴで、メスを噛み砕く装置「プードルズヘッド」。本当にエンジンで稼働するように改良されていました。上海展で実際に稼働させている様子の映像も…こ…怖い…!)
(メスたちの理想の都「末京」と「泣き羊」。この「泣き羊」が登場する章はまだ明らかにされていません、どんな物語が広がるのか…楽しみです。)
④ツクバから発信する新しい音楽!「ツクバシリーズ」
最後の部屋は、物理的に音を発するユーモアな楽器「ツクバシリーズ」。電気的に制御する自動演奏楽器ながらも、目の前の楽器が弦をはじいたり部品を叩いて音を発するのは、耳だけでなく目からも音楽を聴くような楽しい体験です!
大きなステージが置かれ、ここでは製品デモやライヴも行われていました!
(ユビパッチンで木魚を鳴らす「パチモク」の実演。明和電機の楽器は、やっぱり生のパフォーマンスを体験するのが一番楽しいです!)
(叩いて楽器を鳴らす「ノッカー」の変遷の展示も。ちょっとずつ進化しているんですね。)
その他、ライヴハウスに来られない子どもたちに向けた子供向けミュージカル「ヒゲ博士とナンセンス★マシーン」や
(不条理楽器(?!)「ベロミン」や、東京マラソンにも出場(?)した「トマタン」も。)
オタマトーンやノックマンといったオモチャも展示されていました。
(アート作品だけじゃなくて、こういった可愛らしいのにナンセンスなマスプロダクトも製作してしまうのが明和電機ならでは。)
そして見応えがあったのが、展示されている「製品」を産み出すまでに描かれた「スケッチライブラリー」。
(製品ひとつにつき1冊、ボリュームのある冊子になっています!)
「超常識」な機械を生み出すため、世の中の不可解なことを徐々に目に見える形に取り出していく過程を見ることができるのが面白いです。
(デッサンから内部の機構まで!すべてこなしてしまうのがすごい…)
(初期には最終形とは大きく異なるたくさんのデザインが。さきほどの「トマタン」が誕生するまでにはこんなアイディアも…!)
最後に。とても印象的だったのは、会場入り口に置かれていた「ナポレオン銃」というピンク色の銃の作品です。
(「ナポレオン銃」を構える土佐社長のパネル)
引き金をひくとセットされたシャンパンが噴射されるという銃ですが、これは、土佐社長がパリに滞在されている際に同時多発テロが起こり、その混乱を目の当たりにして ”銃がアホらしくて、「AKじゃなくてSAKEだろう」と思った” のが製作の動機なのだそうです。(※AK-47は同時多発テロで使用された銃)
(ピンク色の銃に、ロゼのシャンパンが装着されています。)
他の作品群もそうなんですが、重い課題でも、”衝撃的な映像”や”見た人が不快になるような表現”ではなく、”見た人が思わず笑ってしまうような方法”で表現してしまうのが明和電機の作品の素敵なところだなぁと思います。
銃の色が当初の予定の白ではなく、ピンクに塗られたのは意図していたところではないそうですが、”白い”作品が死や神聖なものをイメージさせるような様子を見ていると、なんだかピンク色の銃に救われるような気もしました。
この展覧会は終わってしまいましたが、2016年9月10日(土)には、都内で「ヒゲ博士とナンセンス★マシーン」の公演も予定されています。
本当に明和電機の作品は、パフォーマンスを実際に体験するのが一番面白い!ので、この記事で興味を持たれた方がいらしたら、ぜひ見ていただけるといいなぁと思います。
次はどんな新しい”ナンセンスマシーン”が登場するのか?こちらも楽しみです。
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■DATA
会期:2016年6月10日(金)~6月26日(日)
時間:11:00~19:00
※金曜日、土曜日は20:30まで開館。
※入館は閉館の30分前まで。
会場:グランフロント大阪 ナレッジキャピタル EVENT Lab.
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-1グランフロント大阪北館 B1F
チケット:一般・大学生1200円、中高生800円、小学生・・・500円
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