ミュージシャン アルヴァ・ノトとしても活動しているドイツのアーティスト カールステン・ニコライ。彼にとっては日本国内では最大規模となる個展が市原湖畔美術館で開催されています。(2017年5月14日まで)
■ ユニークな形状の展示室を活かした展示
この展示でまず目を引くのはその展示室の使い方です。
展示室に入ると目の前に広がる巨大ななスクリーンに驚かされます。ゆったりとしたカーブのかかった長い展示室の一面には巨大なスクリーンが設置され、さらにその両端には壁一面の鏡が設置されていて、どこまでもスクリーンが続いていくようです。
「unidisplay(ichihara cersion)」
続いての展示室には空の上から雲を撮影した映像と写真が並びますが、こちらでは作品と一緒に、大きな窓から高滝湖と空の風景も見ることができます。ディスプレイの中の「上から撮影した雲」と、目の前の「地面から見上げた雲」は、同じ雲でも違った風景に見えるのが面白いです。
「future past perfect pt.4(stratus)」
「wolken」
また、吹き抜け空間は真っ白なインスタレーション作品に。ガイガーカウンターで検知した放射線を音に変換する作品です。
「particle noise(ichihara version) 」
■視点を変えると見え方の変わる作品
今回のタイトル「パララックス」は、「視差」という意味で、二地点での観測地点の位置の違いにより、対象点が見える方向が異なることを表しているそうです。どの作品も、ひとつの作品の中に、相反するような魅力が見えてくるのが面白かったです。
例えば、「unidisplay(ichihara cersion)」では、”人工的”で無機質とも思えるような映像ながら、その中に”自然現象”を思わせるようなサイクルが見られたり、またそれは、自然の中にある美しい”秩序”を抽出しつつ、計算通りにはいかない”乱雑”な部分も再現されたようであったり
「unidisplay(ichihara cersion)」
「future past perfect pt.4(stratus)」や「wolken」は、”マクロ”な世界を捉えた作品でありながら、そこに見えるパターンは、まるで顕微鏡の中の”ミクロ”な世界を覗いているようでもあったり
「wolken」
「fades still」「fades」は、”物質”そのものを見ているようでもあり、物質とは切り離された”光”だけを見ているようにも感じられました。
「fades(ichihara version)」
「fades still」
そして、どの作品も、心地よい美しさと、思い通りにならないもどかしさが共存して、それでもなぜか見ていると幸せな気分になるような作品でした。
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■ユニークな常設展も
市原湖畔美術館では、ほかにも、クワクボリョウタさんの”アナログ・プロジェクションマッピング”「Lost Windows」や
「Lost Windows」
KOSUGE1-16さんの「Toy Soldier」など、ユニークな作品が並びます。
「Toy Soldier」
「いちはらアート×ミックス 2017」ともあわせて、ぜひご覧ください。
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会期:2017年3月18日〜2017年5月14日
休館日:3/21(火), 3/27(月), 4/3(月)
料金:一般=1,000円(800円)、大高生・シニア=800円(600円)、「いちはらアート×ミックス2017」パスポートご提示で500円
人間の知覚や自然現象をテーマにした作品を国際的に発表し続け、現代のアートを代表するアーティストの一人であるカールステン・ニコライ。アルヴァ・ノト名義でミュージシャンとしても活躍し、日本国内での人気も高いです。
日本国内の個展としては、約15年ぶりであり最大規模となる本展では、当館の空間に合わせた、日本未発表の作品を含む6プロジェクトを展示予定。
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