東京都現代美術館で開催中の
に行ってきました。
(「住む:プロジェクトーもう一つの国 / アルフレド&イザベル・アキリザン)
夏休みの”こども向け”の展覧会ですが、決して子ども騙しではなく ”こどもを子ども扱いしない、おとなを大人ぶらせない” 展示でした。だからといって難しいことを並べるのではなくて、大人も子どもも「なんだこれは?」と思わず近づいてじっくり見たくなる作品でいっぱいの面白い展示でした。(「はじまるよ、びじゅつかん」の内部以外はすべて撮影もOKでした。)
この展覧会は、
―地球はだれのもの?
―美術館はだれのもの?
―社会はだれのもの?
―私の場所はだれのもの?
という4つのテーマを、4組のアーティストの作品で表した展覧会です。
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―地球はだれのもの?
まず会場に入って目にするのは、こんなカラフルな光景!
色がそろっていて、面白い形がいっぱいで…何だろう??と近づいてみて見ると…
それは全てポーランド生まれのデザイナー ヨーガン・レールさんが、移住先の石垣島の海辺で拾い集めたごみたち。
”美しい海”のイメージのある石垣島に、こんなにもたくさんのごみが流れ着いていることに驚いてしまいました。でも、こんな風に分別すると、とても美しい素材にも見えますね。
そして、次の部屋に足を踏み入れると…
今度は、鏡張りの会場いっぱいにカラフルなシャンデリアが並び、幻想的な世界に思わず「わぁ!」と声を声を上げてしまいます。
でもこれもよーく見てみると、全部プラスチック容器のゴミでできているんですね。どれもカラフルで、しっかりとしていて、これを「ゴミ」といってしまうのはなんだかもったいない気もします。
(海辺に捨てられたビーチサンダルたち)
ただ、そこにヨーガン・レールさんご本人の解説で、
「時にはガラス製の古いブイが流れ着いたりしていて、面白く思うこともありますが、流れ着くゴミのほとんどは醜いプラスチック製品のなれの果て…」とあったのですが、これにはちょっと考えてしまいました。
ガラスよりも加工しやすくて、軽くて丈夫で…「製品」の間は便利に使っていたのに、役目を終えたとたんに「醜いもの」だなんて、(自分の普段の生活も含め)なんだか身勝手な感じもしてしまいました。
海岸にゴミが散乱しているのは嫌だけれど、ゴミ箱に捨てればそれでいいの?ゴミ箱に捨てた後はどうなるの?そんな事も考えてしまう作品でした。
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―美術館はだれのもの?
続いては、おかざき乾じろさん(=批評家の岡崎乾二郎さん)の「はじまるよ、びじゅつかん」。ここは、子どもしか入れない美術館です。
当然、私も入れなかったので中の様子は分かりません。ただ、作品の周囲には子ども向けにこの小さな”美術館”の説明が書かれていました。
(うまく周囲と意見を合わせることが得意な”おとな”が芸術鑑賞を苦手とするのは)「げいじゅつはひとりで感じるところからはじまるからです。つまり、おとながおとなでいられなくなる。」
「じぶん(だけ)が感じていることは何なのか、それをつきとめようとすることが、芸術のおもしろさです。」
など。普段、自分もついつい作品を観ていても”正解”を探してしまい、他の人から反論されることを恐れてしまいがちだなぁ…と反省しました。
それにしても、確かに”こどもだけ”でふらりと入れる美術館って少ないですよね。こんなスペースがもっと広まったらいいなと思いました。
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―社会はだれのもの?
続いて、会田家(会田誠、岡田裕子、会田寅次郎)の一家の作品の数々が並んだ部屋に入ります。
(撤去騒動で話題になった作品もちゃんとありました。)
こちらの部屋の作品は、どの作品もインパクトがすごいです。
特に会田家のお母さん:岡田裕子さんの映像作品は、ぐちゃぐちゃのお弁当を作っていたり、少し気持ち悪いパフォーマンスをしていたり…と、撤去騒動の作品よりもこっちの方がよっぽど子どもの教育(?)には良くないんじゃないか、なんて思ってしまいましたが… でも、社会にある様々な問題を的確に言い表しているなぁと感じました。
私が特に面白いなぁと感じたのは、大学生とのワークショップで制作された「教育×アート=? 〜NIPPONえでゅけーしょんTV」の中の、”クッキー生地を生徒に見立て、不良も、おしゃれな子も、勉強ができる子も、みんな個性を取り払ってぺちゃんこでまんまるの均一なクッキーに成形していく”映像作品でした。子どもの頃に感じていた”嫌だな”って思うことと、そうしないと周囲から文句を言われてしまう先生の立場、どちらもユーモラスに描かれていました。
問題になった ”会田誠さんが総理大臣になり、たどたどしい英語で鎖国を宣言する” 映像作品も、"他の国に好奇の目を向けて、自分の国にないものを手に入れようとするから戦争が引き起こされる。少し我慢すれば自分の国の持っているものだけで満足できるのに…"というスピーチ内容には考えさせられました。
会田家の作品はどれも映像が衝撃的なので、すごくヤバいことを言ってるようにみえてしまうのですが、それぞれの作品の中で扱っているのはすごく身近な問題ばかり。それを象徴しているのが、部屋の中央にある「檄」で、どの作品の主張も一見過激にみえるけれど、実はどの家でも「これ嫌だな」って食卓で言ってるような身近なことなんだ、と、会田家の展示をまとめているように見えました。
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本当に”子どもむけ”という括りではなく、むしろ大人が多くの宿題を出されたように感じられてしまう展覧会でした。でもどの作品も見ることを楽しめる要素もあり、とても面白い展覧会でした。
「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展は、10月12日(月・祝)までです。お子さんと一緒でも、大人だけでも、ぜひ足を運んでみてください。
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■DATA
会期: 2015年7月18日(土)―10月12日(月・祝)
開館時間: 10:00〜18:00
*2015年7~9月の金曜日は21:00まで
*入場は閉館の30分前まで
休館日: 月曜日(2015年7月20日、9月21日、10月12日は開館)、7月21日、9月24日
もはやゴミではないでしょうか!?
写真のご提供ありがとうございます!
「会田家」は、好奇心をそそられますね。
会田さんのお母さん、どんな方なんだろうと思いました。
コメントありがとうございます。
ゴミも「地球の一部」という表現、面白いですね。そう言われてみると、ゴミも自分も同じ地球の一部ですね。
実は昨日もう一度会田家の作品を見に行ってきたのですが、やっぱりお母さんで美術家の岡田裕子さんの作品が強いインパクトで現代社会や教育を皮肉っていて面白かったです。
ぜひ機会があったら行ってみてください^^