柏市(千葉県)には、旧陸軍の施設がいくつか残っています。そのひとつである高射砲第二連隊の訓練棟を、公開に合わせて見学しました。
常磐線北柏駅を下車、旧水戸街道を渡って「軍都柏」へ。現在は市街地となっていますが、終戦までは高射砲第二連隊があり、高射砲のターゲットである敵機を補足するための訓練棟が残されています。貴重な戦跡と言えるでしょう。
柏市根戸(ねど)443にある訓練棟は何の装飾もない実用本位の設計です。近年まで消防署分署として使用されていました。外壁塗装や正面のシャッター部分は戦後のものです。
外壁は痛みが目立ちます。相応の保存措置、あるいは保存が望まれます。
訓練棟北西側には、この建物の大きな特徴である屋上のクレーン支柱が張り出しているのが見えます。このクレーンで測遠器という、敵の飛行機までの距離を測る大きな装置を屋上に吊り上げて設置し、目標までの距離を測定する訓練を行いました。現在に残るのは支柱のみです。
西側外壁には昇降装置支柱のボルトの跡が点々と残ります。
屋上から市街化された風景が広がる現在ですが、当時はこの前方に4本の鉄塔があり、航空機の型がロープで空中に吊り下げられて、屋上の測遠器での距離測定訓練を行いました。
一方、訓練棟内ではスクリーンを張り、そこに空模様と敵機の型を投影して情報を伝達する訓練を行っていたようです。戦後になって天井が張られていますが、当初はがらんどうでした。建物自体が大きなシミュレーターと言えるかも知れません。
高野台児童遊園(公園)に移設、保存されている高射砲第二連隊の営門(門柱)です。
長年、布施弁天にお参りする際通った脇にこのような戦跡が佇んでいるとは気が付きませんでした。知らず知らずのうちに軍都の中を通っていたようです。
午前中を費やして訓練棟と連隊門柱などの見学と柏歴史クラブのご担当者から熱心な説明を聞くことができました。思った以上に柏には軍事施設があったことが分かりました。
多くの軍事施設のひとつであった高射砲連隊は今となっては姿形もありませんが、高射砲を扱うだけに、当時としては、自動車などの機械を積極的に取り入れるなど合理的な運用をしていたようです。訓練棟も同様なことが言えます。現在からみれば、かなりアナログで米軍の機械力、電子化には及ばなかったわけですが、防空に対しては「精神力」ではなく機械化を目指していた部分もあったということは発見でした。
しかしながら、その合理性はごく一部であり、結局は兵士や市民まで多くが犠牲になりました。そのような戦争を記憶にとどめるためにも今日見た戦跡が末永く保存されることを期待したいと思います。∎
高射砲第二連隊・訓練棟 公開 8 高野台町会・柏歴史クラブ共催 柏市教育委員会協力 2022年11月19日(土)10時~16時
Nikon D5600 / AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G ED
AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6 G VR II