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韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を観て

2020年02月05日 | アート
 
第72回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞して今話題の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を観てきました。初めての韓国映画でしたが、最後までひきつけられました。


むさくるしい半地下のアパートに住むキム一家四人は全員失業中。吹き溜まりのような場所で衛生上も非常に問題があります。
ある日、息子のキム・ギウは豊富な受験経験を買われて友人から家庭教師の代役を頼まれます。そして、高台の豪邸に住むIT企業社長のパク一家にまんまと入り込んでいきます。趣向は少し異なりますが、家族の団結という点では是枝裕和監督の『万引き家族』を思わせます。その後のストーリーがとても面白く、興味深いのですが、ポン監督の「お願い」に従い差し控えます。

映画は、二極分化が進んだ韓国の状況を、富裕層と貧困層を象徴的に対比してみせてくれます。『万引き家族』よりも『パラサイト』の方が、先鋭的に見えます。例えば、片や高台の豪邸に住むパク一家、一方は半地下アパートに住む一家です。その違いを一層引き立たせているのが豪雨のシーンだと思います。大雨の中を高台から谷底のような半地下の家まであたかも山のような高低差を駆け降りるのは象徴的です。惨めな気持ちで谷底に着けばそこは大洪水。しかも、汚水です。

背景には、韓国の経済事情、住宅事情があるでしょう。低所得層は持ち家などとんでもない話で、キム一家のように北の脅威の時代に作られた半地下の防空壕に住む人も少なくありません。日本のしゃれたアクセサリーのような半地下とは全く違います。半地下は無窓に近く、日が差さず、黴臭く、環境は最悪です。僅かな窓から見えるのは通行人の足元だけという状態です。そんな中に、無職の夫婦、受験に失敗し競争社会からはじき出された息子と娘が生活しています。二極化、学歴偏重など社会問題がごった煮のようになった暮らしぶりです。そこにいる人間や物、街区が醸し出す独特の臭いこそ見えない階級を象徴するものかも知れません。

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このようなことは、韓国だけではなく、多くの国にあてはまるのが、悲しいですが現実のようです。日本もうかうかしていられない状況ではないでしょうか。中間層が消失し、好むと好まざるにかかわらず、二極の対立が先鋭化するとがないとは言えません。不寛容がはびこり、階層や集団の抗争が抗争を呼ぶ悪循環が現実のものとならないことを祈るばかりです。
実は、悲喜劇を描いた映画だろうと思ってシアターに入りましたが、それははじめのうちだけで、やがて、重く深いものを感じました。この映画の問うところは広く、大きく、深刻であるように思いました。

個人的には、社長夫人のチョ・ヨジョンが美人でセレブでよかったのですが、ギウの父親役のソン・ガンホがいい演技をしていたと思います。好きだなあ、こういう人。

『パラサイト 半地下の家族』(原題:Gisaengchung、英題:Parasite)
監督:ポン・ジュノ、脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジヌォン、音楽:チョン・ジェイル
配役:ソン・ガンホ(キム・ギテク)、イ・ソンギュン(パク・ドンイク)、チョ・ヨジョン(パク・ヨンギョ)、チェ・ウシク(キム・ギウ)、パク・ソダム(キム・ギジョン)他.
2019年、韓国映画、カラー、132分.


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