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寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう):前編

2013-04-01 03:36:17 | カリキュラム改革

 ドイツとフランスが統一?

「外国法(大陸法)」という不可解な科目設定の非合理性を衝く!

 

寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう)

 

はじめに(解説):

        2013年度より、これまで別個に開講されていた法学部専門科目

「ドイツ法」並びに「フランス法」を、

「外国法(大陸法)」

          として統合する新カリキュラムが施行される。

 

          ドイツ法は、日本の憲法・刑法に大きな影響を与えた。

          フランス法は、日本の民法に大きな影響を与えた。

 

 両法は、ローマ法に由来するものの、固有の歴史と法体系を有しており、

一つの講義に同居させるというのは、前代未聞の珍事である。

 

我が国の法学部において、かかる素っ頓狂な科目編成は他に例を見ない

 

 この所業は、「財政再建」の掛け声の下、現法学部長を旗頭とした法学部の素人集団、

(法律とは無縁の語学:5名、体育:2名、自然科学:1名、教職科目:2名)の大半と、

これに付和雷同する若手・中堅教員の大半によってなされたものである。

 

 法学部教授会の総数は27名程度であるが、まさに法律の何たるか、法教育の何たるかを

知らない者による暴挙としか言いようがない。

 

  なお責められるべきは、自らの経営・教育戦略の失敗を省みぬまま、

 

 「財政再建」のために「カリキュラム改革」を実施せよという珍妙な通達

 

           発した、理事会に陣取る

 

吉椎三(即ち吉野理事長・椎名学長・三友常務理事の御三家)であろう

 

 もとより見識ある法学部長であれば、こうした事理を弁(わきま)えない通達なぞ一蹴し、学の殿堂を擁護してしかるべきである。

 

 にもかかわらず現法学部長は、その使命を放棄し、かえって法学部の「・法学部」化

 

一層進めてしまった

 

 彼の罪業は、教育水準の低下それに伴う向学心に富む志望者の減少等、由々しき悪影響をもたらしかねない。

 

この意味で現法学部長たる〈大先生〉は、

大学崩壊を招く元凶であり、中央学院にとってまさに獅子身中の虫である。

 

 

登場する女神

ゲルマニア嬢:   女神。ドイツ法の化身。

マリアンヌ嬢:   女神。フランス法の化身。

 

言及される神および人物

チューオーガクイン:法の世界を総(す)べる主神?

俗世では「中央学院大学法学部」又は「同学部長」の形で顕現する。

斯界では〈大先生〉として振舞い、ウィキペデイア上で知らない者はいない。

両嬢のパトロンである。本編には登場せず、両嬢の語りを

通してその在り様が明らかにされる。 

 エウロパ     :ゼウスが略奪したテュロスの王女(ギリシャ神話)。

           英語表記では Europe〈ヨーロッパ〉。

           本編には登場せず。

           落ちぶれて、天界のカフェ「EU法」を切り盛りする

           年増(としま)の雇われマダムとなった。

 

〈ある昼下がり、天界のカフェ「EU法」にて〉

 

ゲルマニア嬢:どうもマリアンヌさん、ごきげんよう。

 

マリアンヌ嬢:あらゲルちゃん、しばらくぶりねぇ。すこぅし太った?

ラインのほとりでジャガイモばっかり食べてちゃダメよ。

 

ゲルマニア嬢:マリアンヌ、あなたのようにクロワッサンだけでは、ね。

 

マリアンヌ嬢:アタシのカラダにはこれがイチバン合ってんの。あと、セーヌの水もね。

 

ゲルマニア嬢:ところで最近お変わりなくて?

 

マリアンヌ嬢:オオアリのコンコンチキよ。

       アタシらのパトロン、ムッシュ・チューオーガクインのタクラミ、

       まだ聞いてない?

 

ゲルマニア嬢:ええと、なにかしら?

 

マリアンヌ嬢:ムッシュの〈法世界・再創造計画〉(注:法学部カリキュラム改悪)よ。

 

ゲルマニア嬢:詳しくはまだ何も…。

 

マリアンヌ嬢:彼、ゲルちゃんとアタシとにめいめい呉(く)れてた一軒家

(注:カリキュラム上で独立した科目としての位置づけ)、

イマになって取り上げるんだとさ。

 

ゲルマニア嬢:なんですって!?

 

マリアンヌ嬢:もう「外国法(大陸法)」ってフラット(=アパート)を借りて、

ソコにアタシらを同居させる腹づもりよ。

 

ゲルマニア嬢:わたしのおうち(注:独立科目「ドイツ法」)と、マリアンヌ、

あなたのおうち(注:同「フランス法」)は、一体どうなるの?

 

マリアンヌ嬢:イマんトコはソノママだけど、おっつけ解体(注:科目統廃合)される運び。

 

ゲルマニア嬢:無節操極まりない遣(や)り口ね(激怒)。でも、それ本当なの?

 

マリアンヌ嬢:そ、メンドーな段取りはもうみんな済ませて、早けりゃ3年後かな、解体。

 

ゲルマニア嬢:そもそも「大陸法」ってくくり方、いささか乱暴じゃありません?

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ自身、テキトーだから(笑)。

 

ゲルマニア嬢:ドイツ法とフランス法は、共にローマ法を継受しているけれど、

       各々固有の歴史を経て発展してきた法体系なのに…

       (悲憤慷慨:ひふんこうがい)。

 

マリアンヌ嬢:アタシら、性格も違うしタマにケンカするけど、

       お互いにイイトコとワルイトコ認め合ってて、

       なお「オノレの道をゆく」って間柄だもんね。

 

ゲルマニア嬢:ええ、まさしくその通りだわ。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ・チュウオーガクインは、ソコんトコが分かってないんだ。

 

ゲルマニア嬢:あなたのフランス法、ことにナポレオン法典に見られる市民法精神は、

ボアソナード先生を通じてヤーパン(=日本)の法形成にも思想的な影響を

随分与えたのに…。

 

マリアンヌ嬢:そうねぇ(遠い眼)。

 

ゲルマニア嬢:わたしのドイツ法にしても、ヤーパンが憲法や刑法をこしらえた時分には

       色々と尽力したはずなのに…(サメザメ)。

 

マリアンヌ嬢:ゲルちゃん、泣くのはお止しよ。

       アイツにとっては外国法や基礎法なんて、ドーデモいいんだ。

 

ゲルマニア嬢:え?

 

マリアンヌ嬢:なにせ「比較法」や「法社会学」も廃止する、ってんだからさ。

 

ゲルマニア嬢:あんまりだわ。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ曰く、「この程度の大学には実定法だけで十分」なんだと。

       学生さんがカワイソウだねぇ。

       でもアイツ、エラぶってる割りに、基本六法に何法が含まれてるんだか、

       答えられない

       (注:コレ実話。憲法・民法・刑法しか挙げられず、商法・民訴・刑訴を

 知らなかった)。

(つづく)トえ、イ学部なのに法律科目を削減しつつ止した)と聞いたわねぇ。」


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