(承前)
マリアンヌ嬢:けどアタシらはまだマシな方だ。
このカフェ「EU法」の雇われマダムのコト、知ってる?
ゲルマニア嬢:エウロパさん?少しばかり耳にしたけど。
マリアンヌ嬢:オーナーのムッシュ・チューオーガクインにね、
牝牛(めうし)のごとくさぁ、さんざコキ使われた挙句…。
ゲルマニア嬢:…。
マリアンヌ嬢:カフェ「EU法」、完全廃業だって!別に店を持たしてくれるのでもなく、
「ハイ、サヨウナラ」だって!さんざコキ使ってツメタイねぇ。
この稼業では知らない人はいないのに。
ゲルマニア嬢:なんでもひと悶着あったらしいとか。
マリアンヌ嬢:さすがにムッシュも、オノレの愚かさに気づかされたって。
だってマダムは怖いんだから。なんでも、のりこんでいったらしいよ。
ゲルマニア嬢:うかがってるわ。〈大先生〉は一転、カフェの存続を図ったけれど、
皆はシランプリ。
そうよね、自分で廃業の提案をしておいて、
それをまたひっくりかえすんだから、意味不明。
それにあのシドロモドロでしょう、何を言ってるのか…。
近頃流行りの高機能広汎性発達ナントヤラじゃないけど、
全く常人の理解を超えているわね。
マリアンヌ嬢:結局、うまくいかなかった。マダムはチョットばかしキツイけど、
店はかなり繁盛してる(注:「EU法」履修者多し)のに…。
それもこれも、ムッシュ・チューオーガクイン、アイツのせいだ!
ゲルマニア嬢:被雇用者の〈人権〉を蔑(ないがし)ろにしているわ。
マリアンヌ嬢:〈人権〉尊重、とくに〈男女平等〉をウリにしてるクセに、ねぇ。
ソトヅラばっかカッコつけてさ。
ゲルマニア嬢:こんな在り様では、職員の方々も、さぞご苦労が絶えないでしょうね。
マリアンヌ嬢:アタシ、もうホトホト愛想が尽きたぁ。ゲルちゃん、他にイイオトコ探そ。
ゲルマニア嬢:ええ、よくてよ、マリアンヌ。
ここでは法の蘊奥(うんのう=極意)を伝授すること能(あた)わず、
ですからね。
いっそ、その方が清々するわ。
マリアンヌ嬢:そーだそーだ!ムッシュ・チューオーガクインには、
スポーツナントカ・ギャルがお似合いだぁ。
ゲルマニア嬢:学生さんたちにはお気の毒だけれど、いざさらば。
♪また逢うっ、日まで、逢えーる、とぉーきまでー♪
マリアンヌ嬢:ゲルちゃん、そのウタ、古いよぅ…。
ゲルマニア嬢:法であれ、歌であれ、継承され続けているものにこそ、価値があるのよ。
♪別れの、その訳は、はなーしぃーたぁくなーい♪
マリアンヌ嬢:法はともかく、イイ加減、新しいウタも覚えてね…。
かくて法の女神たちは去った。
代わって新たに主神チューオーガクイン〈大先生〉のゴ寵愛を得たのは、
ステンノー([キッズ・スポーツ論]),エウリュアレー([トップ・スポーツ論])、
そしてメドゥーサ(「ライフ・スポーツ論」)の怪物三姉妹である。
彼女らの肉体は美しく、とても魅力的だ。
知を司る女神アテーナーの怒りに触れるまでは。
ああ、学の殿堂・中央学院大学法学部に幸あれかし!
<完>
知の女神アテーナーよ、はやくキテネ!