「12月20日(金)」
「ドラマ「全領域異常解決室」
「登場する神」
「蛭子神(ヒルコ)」
(野間口 徹)
ヒルコ(水蛭子、蛭子神、蛭子命)は、
日本神話に登場する神。
蛭児とも。
『古事記』において国産みの際、
イザナキ(伊耶那岐命)とイザナミ(伊耶那美命)
との間に生まれた最初の神。
しかし、
子作りの際に女神であるイザナミから
先に男神のイザナキに声をかけた事が原因で
不具の子に生まれたため、
葦船に入れられオノゴロ島から流されてしまう。
次に生まれたアハシマと共に、
二神の子の数には入れないと記されている。
棄てられた理由について『古事記』では
イザナキ・イザナミ神の言葉として
「わが生める子良くあらず」とあるのみで、
どういった子であったかは不明。
後世の解釈では、
水蛭子とあることから水蛭のように
手足が異形であったのではないかという推測を生んだ。
あるいは、
胞状奇胎と呼ばれる形を成さない
胎児のことではないかとする医学者もある。
『日本書紀』では「蛭児」と表記される。
一書には複数回現れ、
イザナギ・イザナミが生んだ最初
または2番目の神として
『古事記』に似たものもあるが、
本文では三貴子(みはしらのうずのみこ)のうち
アマテラスとツクヨミの後、
スサノオの前に生まれ、
三歳になっても脚が立たなかったため、
天磐櫲樟船(アメノイワクスフネ。
堅固なクスノキで作った船)に乗せて流した、とする。
中世以降に起こる
蛭子伝説は主にこの日本書紀の説をもとにしている。
この「三歳」は
日本書紀で最初に年を数えた記述である。
始祖となった男女二柱の神の最初の子が
生み損ないになるという神話は世界各地に見られる。
特に東南アジアを中心とする
洪水型兄妹始祖神話との関連が考えられている。
流された蛭子神が流れ着いたという伝説は
日本各地に残っている。
『源平盛衰記』では、
摂津国に流れ着いて海を領する神となって
夷三郎殿として西宮に現れた(西宮大明神)、
と記している。
日本沿岸の地域では、
漂着物をえびす神として信仰するところが多い。
ヒルコとえびす(恵比寿・戎)を
同一視する説は室町時代からおこった新しい説であり、
それ以前に遡るような古伝承ではないが、
古今集注解や芸能などを通じ広く浸透しており、
蛭子と書いて「えびす」と読む地名
ならびに名字も存在する。
現在、
ヒルコ(蛭子神、蛭子命)を祭神とする神社は多く、
和田神社(神戸市)、西宮神社(兵庫県西宮市)
などで祀られているが、
恵比寿を祭神とする神社には
恵比寿=事代主とするところも多い。
平安期の歌人大江朝綱は、
「伊井諾尊」という題で、
「たらちねはいかにあはれと思ふらん
三年に成りぬ足たたずして」と詠み、
神話では触れていない不具の子に対する
親神の感情を付加し、
この憐憫の情は、王権を脅かす穢れとして
流された不具の子を憐れみ、
異形が神の子の印(聖痕)とする
のちの伝説や伝承に引き継がれた。
海のかなたから流れ着いた子が神であり、
いずれ福をもたらすという
蛭子の福神伝承が異相の釣魚翁である
エビス(夷/恵比寿など)と結びつき、
ヒルコとエビスの混同につながったとされる。
また、ヒルコは日る子(太陽の子)であり、
尊い「日の御子」であるがゆえに流された、とする
貴種流離譚に基づく解釈もあり、
こちらでは日の御子を守り仕えたのが
エビスであるとする。
不具の子にまつわる
類似の神話は世界各地に見られるとされるが、
神話において一度葬った死神を後世に蘇生させて
伝説や信仰の対象になった例は珍しいという。
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