真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

太平洋戦争 暗号作戦―アメリカ太平洋艦隊情報参謀の証言〈上〉〈下〉エドウィン・レイトン(1987)

2021-10-13 | 読書-歴史
太平洋戦争 暗号作戦―アメリカ太平洋艦隊情報参謀の証言〈上〉

太平洋戦争 暗号作戦―アメリカ太平洋艦隊情報参謀の証言〈下〉

And I Was There : Breaking the Secrets - Pearl Harbor and Midway(1985)
Layton, Rear Admiral Edwin T.
中国では張学良とポーカーをやり、日本では山本五十六とブリッジをした(駐日米大使館海軍武官補時代)著者のエドウィン・レイトン - Wikipedia
Wikipediaの記述は本書の内容に負うところが大きいとおもわれ。

Layton, Edwin T. Papers
Edwin T. Layton - Wikipedia

Edwin T. Layton oral history interview transcript

まあ結局ワシントンが解読していた暗号から分かったことをハワイに伝えていなかったことがしばしばあり、情報共有という意識がなかったという、数十年後の某国キギョウとかでも日常的に起こる問題が横行しておったわけね。
情報を持っていることは力を持つことになるので、あっさり出先に分け与えたりなどするものか、という発想。
出先が驚くような鋭い読みを効かせて日本軍の意図を読み解いても、勝手な先読みは許さないなどと、中央の権威を守ろうとするばかりか、できる出先の人間を左遷してしまうことまでやる。
まさに「ワシントンの将官たちの保身第一の利己主義、出世欲、縄張り根性、官僚主義」(訳者あとがき)だ。

Oral History | Rochefort, Joseph J., Capt., USN (Ret.)

CDR Joseph J. Rochefort and "Station Hypo"
Harry Thompson (spy) - Wikipedia
それでも、日本側が「暗号が読まれてなんかいないっ!」と言い張ったためにアメリカは圧倒的に優位に戦線を展開できた。

日本海軍からの駐在員が米国内でのスパイ活動でFBIに逮捕されたが(立花事件)、時節柄問題を大きくしないでおくという判断のもと、国外追放で日本に帰国。軍令部第3部で活躍した立花。
立花止 - Wikipedia
立花とともに国外追放となり帰国した岡田貞外茂は、後に戦死。
岡田貞外茂 - Wikipedia

立花らの上司だった軍令部第3部の小川貫爾。
小川貫爾 - Wikipedia

こんな事件も
エリス事件ー日本海軍はエリス少佐を毒殺したか

暗号解読作業に動員された多数の女子要員コード・ガールズ への言及はないものの、女性暗号解読者アギー・ドリスコル夫人=Agnes Meyer Driscoll - Wikipediaの才能への賛辞は何度も捧げられる。

著者とアグネス・ドリスコルは専門知識と暗号解読センスに関して、お互いに敬意をもっていたことが感じられる。
ドリスコルが、日本の暗号解読から「ト ミ ム ラ」と読める謎の文字列で悩んでいるとレイトンに相談したところ、「地名か人名じゃないか」とレイトンが指摘するが却下される。
日本語知識を動員したレイトンがさらに、「ムラは村かもしれない。その漢字はソンとも読むので、トミソン/トムソンとかかも」と連想を展開させたアイデアを披露したところ、(大当たりで)トムソンという太平洋艦隊の通信士が長年にわたり日本のスパイに情報を売っていた事案の摘発に至ったとのエピソード。
漢字の読み替えでサイファー暗号を設定するなど、語学研修生で数年間日本で勉強した士官に容易に見破られてしまうわけで、もう一段階飛躍させる必要があったわな。
Harry Thompson (spy) - Wikipedia
LibGuides: Counterintelligence: YN Harry Thompson

レイトンの語学研修生時代、上司からは、日本側は特高が徹底的にマークしているので、スパイ行為と疑われる余地がある行為は徹底して避けろと命じられていたという。それは正解だった。
目の前の情報が役に立つことが明らかであったとしても、それと引き換えに日本語力向上の得難い機会を棒に振る(ばれて国外追放になってしまう)価値はない。それよりも専門性を向上させて将来決定的な場面で役に立って欲しいということだったのだろう。  

寺崎太郎と寺崎英成が混同されている箇所が複数あり~ワシントンの米大でスパイ網の構築に精を出していたのは弟の英成なのだが、兄の太郎(外務本省アメリカ局長)とされてしまう。原著で既に混同されているものか、翻訳チームが気をきかせたつもりで間違ったものかは不明。

クェゼリン環礁襲撃から空母「エンタープライズ」でハルゼーが真珠湾に帰港し、早く会いたいニミッツがタラップ設置を待たずに空母に釣り上げてもらうくだりで、ボースンチェアを「甲板長の椅子」と表記~新聞社外信部の記者も、海事用語を辞書を引かずに既知の単語に置き換えるよね。
ビルの窓拭きで用いることがある「ブランコ」だ。
P.ジョンソン 『チャ-チル - 不屈のリ-ダ-シップ』 (山岡、高遠訳 2013年)ボースンチェアの謎 - 真似屋南面堂はね~述而不作

劇映画で、たたずまいの似た俳優を起用するので面白い件(レイトン少佐はパトリック・ウィルソンが演じた)
How Accurate is Midway? Movie vs True Story of the Battle of Midway

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