真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

『昭和史の深層―15の争点から読み解く』 (保阪正康さん)

2010-12-08 | 読書-歴史
平凡社新書
昭和史の深層―15の争点から読み解く
保阪 正康【著】
平凡社
(2010/05/14 出版

軽いけど重い本。
新書なので軽いのだが、内容は充実していて重い重い。

1章 満州事変前後の国家改造運動
2章 2.26事件と新統制派
3章 日中戦争と現地解決.不拡大
4章 南京事件
5章 太平洋戦争とその歴史的本質
6章 独ガス、原爆、大量殺戮平気を許した論理
7章 北方四島、北海道占領を巡るドラマ
8章 敗戦と向き合うということ
9章 東京裁判が真に問うこと
10章 占領期に見る宰相の資質
11章 占領は開放化抑圧か
12章 強制連行の実態を考える
13章 沖縄戦の本質を見つめる
14章 慰安婦問題にみる戦場と性
15章 昭和天皇の歴史的役割
おわりに 日本人の意識はどう変わったか

いずれの章もそれぞれに印象深く・・・忘れられません。どこかを選ぶといっても難しく・・・7章と8章です。
なんといっても7章と8章です。

第七章 北方四島、北海道占領をめぐるドラマ
北海道の運命は紙一重だった
スターリンとトルーマンのやりとり
極東ソ連軍の暴走がなかったことが幸いした
運命を振り回されたシベリア抑留者
スターリンがさらに考えていたこと

北海道の北半分がソ連軍に占領されるとか、東京がベルリンのように分割占領されるとかいうことにならなかったのは、米国がソ連の要求を断固却下するとともに、北方四島の占領はソ連の要求どおり認めたことが確認&強調される。

占守島の日本軍の奮戦も価値が高かったと思うが、著者によると、その後日本軍がソ連軍にちょっかいをかけたりせずに自重できたゆえに、ソ連軍に北海道侵攻の口実を与えずに済むことができた、と。

近くて小さい島2つでも取り戻せれば上出来だったと思えるのだが、もはやパアにしてしまったようだな。

北方領土:「露のシグナル見逃す」 東郷元欧州局長が分析
「交渉で領土を取り返す以上、日本政府はロシア側のシグナルを外してはならなかったのに、『やる気がない』と彼らが受け取るメッセージを昨年出してしまい、(現在の菅政権に至っても)修復の兆しはない」

四島!と唱え続けることの無意味さに気付く個人はいても、組織としては認識できない仕組み?
「アメリカのケライをやめて、ロシアのケライになります」とでもしない限り、四島返還などありえない、~と気付く個人はいても、組織としては認識できない仕組みなんだろうな。

「北海道の運命は紙一重」関連の当店過去エントリ:
続『DUTY(デューティ)―わが父、そして原爆を落とした男の物語』(5/11の続き)

いま解ける「エト緊」のひみつ~『わが夕張わがエトロフ』

『8月17日、ソ連軍上陸す―最果ての要衝・占守島攻防記』(大野 芳さん2008年)

しかにまあ、だてに延べ4千人にインタビューしていないぞ、ということで。
インタビューイーの類型のくだりが興味深かった。

第八章 「敗戦」と向き合うということ
東條の幻想じみた神話へのこだわり
鈴木貫太郎の敗戦の弁
東久邇宮の「一億総ざんげ論」
戦争体験を語るときに人間としての生地があらわれる
昭和史の底流にある「人間の本質」

「一対一対八の法則」が興味深い。
◆1割:正直に自らの体験を整理して語る人=誠実に証言する人。
例=石井 秋穂(いしい あきほ、1900年(明治33年)11月2日 - 1996年(平成8年)8月25日)

◆(対極の)1割:初めから嘘や虚偽の話をする人

◆(残りの)8割:記憶を美化し、ときに操作し、そしてときに忘却していく。証言するときにはコアになる事実の上にさまざまな思惑や計算が乗っている(=われわれ)

この、「1:1:8の法則」は、この本にも記載があるらしい。
文春新書
昭和史入門
保阪 正康【著】
文藝春秋 (2007/04/20 出版)

第5章 昭和を語り継ぐ精神(一対一対八の法則;証言をごまかそうとするタイプ ほか)

いまさら入門するレベルでもないし、ということで未読だったと思うのだが、やはり読んでおくか・・・。

こいつを気合を入れて再読しないといかんな。
『暗闘--スターリン、トルーマンと日本降伏』
末尾記載の長谷川教授の方ね。

頭に暗闘が来るか、尻尾に来るか・・・。
なんのこっちゃ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『太平洋戦争、七つの謎―官僚... | トップ | 『閉された言語空間―占領軍の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書-歴史」カテゴリの最新記事