真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

国防音痴が、国を滅ぼす 豊田 有恒【著】(2015/08発売)

2021-12-02 | 読書-現代社会
祥伝社新書
国防音痴が、国を滅ぼす


序章 安全保障と日本の未来
第1章 世界一、軍事知識に欠ける民族
第2章 平和ボケを口実に、軍事情報から逃げてしまっている
第3章 日本は、安全ではない
第4章 戦争は、軍備があるから起こるわけではない
第5章 日米戦争は、はたして無謀な戦いだったのだろうか
第6章 非武装社会日本、武装社会アメリカ
第7章 本当は、人類は戦争が好きなのではないか?
第8章 では、どうすれば良いのか

著者に関して、初期のSF作家とだけ認識していたのだが、マルチ人間なのだった。
知らんかったわ。
豊田有恒 - Wikipedia

【イベント】『日本SF誕生―空想と科学の作家たち』刊行記念 豊田有恒×松本零士トーク&サイン会 | 代官山 T-SITE2019年 08月14日

「もはや、戦争は遠い国の話ではない。国民すべてが軍事音痴、国防音痴から脱し、正しい知識を身につけることが必要だ。」という主張の趣旨は極めてまとも。
平和安全法制 - Wikipediaをめぐる議論のあまりの低レベルに呆れてというタイミングかと思うなど。
平和を唱えてさえいれば万事OKという冷戦期思考の国防音痴諸兄姉を何とかしないと、つけ入れるスキを与えてしまう。
第1~4章あたりは穏当。
5章、7章あたりは、内容の細かい点に突っ込みどころが散見されるが、いちいち指摘するのはやめておくね。

『国防音痴が、国を滅ぼす』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター

2021/12/2New!!
第1章 世界一、軍事知識に欠ける民族
基本的な軍事知識のない日本人
で、1991年の湾岸戦争の際の「さるワイドショーの女性コメンテーター」や、テレビの女性レポーターの事例が紹介されている。
お馴染みの、戦闘車両は全部戦車(とひとくくりに片付けてしまう)、軍艦は全部戦艦(同じく)の類だ。

31年近く経っても、この傾向は強まっている。
爆撃機でも何でもかんでも(?)軍用機は全部戦闘機と書いてしまうのが、日経新聞が誇る(らしい)本社コメンテーターは独自の見識を世に問う大型コラム「Deep Insight」を執筆する日経の看板ライターです

銀行よ、バイアス抜け出せ 「借りない顧客」が視界開く 
銀行に発想の転換を求める趣旨自体には問題ないし、もっと言えば、なのだが、話の導入部にイラスト引用で持ち出した、生存者バイアスを説明する有名な「生還した爆撃機の被弾箇所」の話で、「戦闘機」と連呼しているのは残念だ。
生存者バイアス - Wikipedia
Illustration of hypothetical damage pattern on a WW2 bomber.~というもの(「例えば、こんな感じだったとしましょうか」)なのだが、当該コラムは英訳されたりするのだろうか?どう訳するのだろうか。

Wikipedia記載の解説によると、Abraham Wald (1943)の報告に図は添付されておらず、後年それを解説した人たちが、
OGPイメージ

File:Survivorship-bias.svg - Wikimedia Commons

 

輸送機や爆撃機の図を描いたものという。
記事に引用されていたイラストは、2016年に描かれた Lockheed PV-1 Venturaを利用したものだという。

「あらゆる戦闘任務に出かける飛行機は全部"戦闘機"でしょ」という認識で「看板ライター」が論説を書いてしまって大丈夫なのだろうか?
あの図は、当時の爆撃機(目標に爆弾等を正確に投下するのが任務→爆撃航程 bomb runに入るとしばらくの間は進路高度速度一定で直進しなければならず<照準器を設定>、高射砲を撃ち上げられたり、戦闘機に襲われたりしても回避行動をとることが許されない)だから(防御を強化するべき箇所云々という)議論の意味があるのであって、襲われたら逃げられるし場合によっては反撃に転じることができる戦闘機では議論が出発できないのよ。

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