「あの日、あの時―日本帝国主義と朝鮮人と民族独立運動」≪56≫：鄭容順

韓日の歴史に関心のある人が言う。
「日本の学校教育でなぜ教わらなかったのか」
このコーナーを読んで疑問に思っていたことが少しだけ理解できたように思う。そんなことを話して下さった日本人女性の声に励まされました。勉強不足を承知でこのコーナーで韓日の歴史を紹介している。時には心が折れそうになることもある。それでも続けることが大事と心に刻み込んで折れる心を奮い立たせている。日本人女性は「疑問に思っていたことが少し理解できてよかった」と電話で話す。この言葉で筆者の背筋をぴんと伸ばしてくれた。心が折れそうになっても電話の声を思い出して韓日の近現代史の歴史関係を伝えていこうと心に決めています。

参考資料は〔日韓歴史共通教材〕・【日韓交流の歴史】―先史から現代まで―歴史教科書研究会（韓国）・歴史教育研究会（日本）―明石書店発行から。

■ このころの日本（1910～1945）
「戦争の拡大と敗戦」
1937年７月、盧講橋事件をきっかけに日本は日中戦争に突入していった。12月には首都南京を陥落させ捕虜を含む多くの民間人を殺害した（南京事件）。中国では国民党と共産党が統一戦線を結成して抵抗しイギリス・アメリカも中国を援助したため戦争は長期化していった。
日本は戦争の行き詰まりを打開するためにドイツ・イタリアと三国同盟を結んで国際的なファシズム体制を作るとともに仏領インドシナへの侵略を始めた。日本は日ソ中立条約も締結していたがソ満国境では軍事的な緊張が続いた。日本は戦略物資の獲得を目的に大東亜共栄圏を掲げて東南アジアを侵略した。そのためアメリカとの対立は決定的となり、1941年12月、日本軍によるマレー半島上陸と真珠湾攻撃によってアジア太平洋戦争が始まった。
日本は当初は有利に戦争を進めたが1943年以降敗北が続き45年に入ると日本本土が本格的な空襲を受けるようになった。４月からの沖縄戦では日本軍による沖縄住民への「集団死」の強要などを含め凄惨な地上戦が展開された。８月、アメリカが広島と長崎への原爆を投下しソ連が参戦することで日本政府はポツダム宣言の受諾を決め天皇の放送により（「玉音放送」）、敗戦を知らせたのである。
「戦時下の民衆生活」
政府は国内の物的・人的資源を最大限に動員するため国家総動員法を公布した。日中戦争期には国民精神総動員運動を展開し1940年には政党を解散させて大政翼賛会を作り労働者を組織した大日本産業報国会や地域住民による町内会・部落会などを傘下においた。戦争の長期化にともなって生活必需品の切符制・配給制が実施され民衆の生活を圧迫した。日本のファシズム体制は「健康」優先の政策も採用し障害者やハンセン病患者は苛酷な生活状況に追い込まれた。
アジア太平洋戦争が開始されると学生・女性を工場に動員し占領各地からも多くの人々を強制的に動員した。日本の戦争体制は敗戦を迎える前に崩壊しつつあったのである。
（次回からはこのころの韓国を紹介します）

大韓民国政府教育部国際教育振興院発行（1995年初版）の「韓国史」を参考にして紹介。在日韓国人子弟が語学留学または大学留学にそなえて1年間韓国語を学ぶ政府機関である。また短期間コースなども設置されている。国際教育振興院で使用されている「韓国史」の教科書です。韓国側からみた韓日の歴史、日本の裏側を見ることができます。原文のまま紹介。
■ 民族の受難
「民族抹殺の政策の強行」
日帝の悪らつな植民地統治は教育分野にも現れた。日帝は我が国の歴史と文化を破壊し日本精神と日本文化を韓国人たちに注入するため各種の教科書を日本の侵略政策にあわせて編纂しハングルと韓国語の使用を禁止した。そして書堂のような民族主義教育機関を閉鎖して従順な植民地民を養成する目的で若干の実業教育と技術教育だけを許容した。日帝のこのような政策は満州と中国大陸を侵略する過程で一層強化された。日帝は侵略戦争を遂行するため我が国から物資と労働力を最大限収奪する方針をきめた。
そのためには韓国人を日帝のために忠誠をつくす植民地奴隷に養成しなければならなかった。
先に韓国民族と日本民族は元来同祖同根であり兄弟のようなものであるというような根拠もない理論をこねまわして韓国人をまどわした。そして韓国人に日本史を学ぶようにし又日本語だけを使うように強制した。そして日本の天皇に対して忠誠を誓うようにしこれに反抗する者は皆投獄したり職場から追い出した。
ひいては日本人化させるということで我々民族固有の姓名までも日本式の名前に改めるように強要し信仰生活までも日本の神社参拝を義務付けた。
日帝のこのような政策は結局韓民族をひたすら日本人に服従させる植民地奴隷に仕立てるためであった。
実際において日帝は韓国人の多くの若者や婦女までも戦場や工場又は炭鉱へ送り込み侵略戦争の犠牲になった。
【写真説明】1995年4月10日、慶尚南道晋州市のホテルで1泊した。韓日報道関係者ら10数人一行の旅だった。貸切りバスで移動したが移動するバスの車窓から慶尚南道の田園と民家そして後方にホテルが建っている。古いものと新しいものが入り交ざった1995年4月の韓国の農村風景である。1995年４月10日筆者が撮影。