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オススメNetflix映画『おかしな子(Pagglait)』

2021-03-28 | インド映画

またまた雨の週末、家で見たネトフリ映画がなかなかよくて、満足しました。邦題が『おかしな子』になっていますが、原題の「パグラィト」は辞書では見つからず、「パグラー/パグリー(頭の変な)」と同じ意味を表す単語では、と思われます。ある人物の死去をきっかけに、家族や親戚を巻き込んで起こる様々な出来事を描いたもので、東京国際映画祭で上映された『遺灰との旅』(2020/マラーティー語)ともちょっと似た作りのお話です。

 『おかしな子』
 2021年/インド/ヒンディー語/114分/原題:Pagglait पगलैट
 監督・脚本:ウメーシュ・ビスト
 出演:サニヤ(サーニヤー)・マルホートラー、サヤーニー・グプタ(グプター)、シーバー・チャッダー、アーシュトーシュ・ラーナー、ラグヴィール・ヤーダウ
 製作:ネットフリックス
※3月26日(金)より配信公開

Pagglait

ウッタル・プラデーシュ州の都会の下町に小さな小路があり、そこに面した門を持つ家では、出口の所にある木に壺をつるし、上の皿には灯明が灯されていました。死者が出たために喪が明けるまでの期間、こうやって死者の魂を慰めるのです。亡くなったのは、この「シャーンティ・クンジュ(平和なる場所)」に暮らす一家、シヴェーンドラ・ギリ(アーシュトーシュ・ラーナー)と妻ウシャー(シーバー・チャッダー)の長男アースティクでした。アースティクはまだ新婚5ヶ月で、妻サンディヤー(サニヤ・マルホートラー)が残され、弟のアロークが喪主となって、伝統に従い髪を一房だけ残して剃り落としました。家にはこのほか、シヴェーンドラの兄ローシャン・セーティー(ラグヴィール・ヤーダウ)や、認知症が進んだ彼らの母親も住んでいました。突然の逝去にバタバタと駆けつけてくる親戚たち。シヴェーンドラの妹トゥリカーとその中学生の息子、同じく妹のジャーナキと夫である銀行員のガンシャーム、疎遠になっていた一番下の弟タルンとその妻、息子アーディティヤ(ナクル・ローシャン・サハデーウ)に中学生の娘アディティ。さらに、サンディヤーの友人ナジア・ザイディー(シュルティ・シャルマー)もSNSで訃報を知ってやってきます。でもナジアの見るところ、サンディヤーはとても夫を亡くしたばかりには見えず、いつもどおりなのが不思議です。そんな中、男性メンバーは遺灰を受け取りに行ってガンジス川に流したり、客用のふとんを借りる交渉をしたりと、あれこれ動き回ります。そんな時、サンディヤーは夫の書類の間から、若い女性(サヤーニー・グプター)の写真を見つけました。裏には、「For My Jaanu...(愛しい人へ)」という文字と♥マークが2つ。これは一体...? そして保険会社の担当者がやってくるに及んで、全員が、死を悼むなどと到底言っておられなくなってしまいます....。

Pagglait

人が急死したあと、周囲の人々の醜い面がいろいろと見えてくる、というのはこの手の作品の定番ですが、『おかしな子』はその対極に、夫の死を悼むことができない若妻を置いて、この夫婦の愛のあり方もじっくりと描いていきます。ウメーシュ・ビスト監督による脚本が見事で、多くの登場人物を上手に動かし、人の心の機微をあれこれ見せてくれて、非常に見応えがありました。キャスティングもうまくて、特にちょっと素っ頓狂な若妻サンディヤー役のサニヤ・マルホートラーはドンピシャリのハマリ役。天然カールの髪さえも、サンディヤーのキャラクター作りに貢献しており、落ち着いたストレート・ヘア美人役のサヤーニー・グプターと好対照を見せます。祖母(サロージ・シン)のかわいさといい、ナジアの上手な脇役ぶりといい、女性キャラをきちんと描ける監督だなあ、と感心しました。ラスト近くに出てくる「Paglait」というタイトルの説明を見ても、女性への応援歌として作られた作品であることがわかります。

Pagglait

物語の冒頭、街の空撮が出てきた時「ラクナウだ!」と思ったものの、途中ガンジス川で遺灰を流すシーンが出てきたりしたので、「あれ?」と思ったのですが、ラクナウとカーンプル、さらに近くの何カ所かでも撮影が行われたという記事を読んで納得。ラスト近くにはメトロが登場し、調べてみると、ラクナウにも空港から北へとメトロが走っているようです。高架鉄ちゃんとしては、40数年ぶりに行ってみたいラクナウです。このメトロの地図が楽しいので、興味のある方はこちらをどうぞ。ウメーシュ・ビスト監督、デビュー作は『O Teri!(お前って奴は!)』(2014)という、あまり話題にならない作品だったのですが、その後テレビドラマなどでも修業して達者になったのでしょうか。あと、今をときめくシンガーのアリジート・シンが音楽を担当しているのも話題なんですが、BGMで流れる歌は正直言うと多すぎて、ちょっとげんなりでした。そんなマイナスポイントもあるものの、よかったら一度ぜひ。最後に予告編を付けておきます。

Pagglait | Official Trailer | Sanya Malhotra, Sayani Gupta & Ashutosh Rana

 


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