アジア映画巡礼

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シンガポール映画に関する本のご紹介

2016-03-01 | 東南アジア映画

今日から3月、今年は花粉症があまりひどくならず、すごく助かっています。2月は忙しい仕事があり、昨日でそれもほぼ終わったのですが、いつもならひっきりなしに鼻をかむせいで仕事が全然はかどらなかったのに今年は楽勝。まだあまり飛んでいない花粉に感謝、です。

さて、大きな仕事が終わってやっと少し時間ができたので、前から気になっていた知人の本の紹介をちょっと。まず1冊目は、盛田茂さんの「シンガポールの光と影~この国の映画監督たち」(インターブックス/2015/2,300円+税)です。


すでにお読みになった方も多いかと思いますが、タイトル通り、たくさんのシンガポール人監督にインタビューして、シンガポール政府の政策の矛盾をあぶり出した労作です。盛田さんはサラリーマンを経て、50代の後半から青山学院大大学院と明治学院大大学院で学び、「1990年年代以降の『シンガポール映画再生』言説の再評価と課題」という論文で博士号を取った人です。10年にわたってシンガポールのほとんどの監督にインタビューを行い、彼らの作品の紹介と、それらの映画を通して見えるシンガポールという国家の姿を記述した本作は、シンガポール研究のひとつの頂点を見せてくれるもの、と言えると思います。

ただ、シンガポール社会が如実にわかるシンガポール映画の本ではあるのですが、シンガポール映画の楽しさ、面白さを伝えてくれる本かというと、ちょっと違います。そこが私としては残念で、読む人に、「こんな映画があるのか。見てみたい!」と思わせてくれるようなシンガポール映画の本が、今後登場してくれることを願っています。『梁婆婆重出江湖』(1999)なんか、微に入り細をうがった解説があると、シンガポール映画の反骨精神がよーく伝わって、「見てみたい!」になると思うんですが。

「シンガポールの光と影」、アマゾンの注文ページはこちらです。

そして、2冊目と3冊目は、シンガポールの映画史研究家ウォン・ハンミン(黄漢民)さんが送ってきて下さった本です。ウォン・ハンミンさんは、5年前の2011年に原美術館で開かれた「ミンウォン展」で、スペシャル・トーク、「カチャン・プテからポップコーンまで:シンガポールの初期映画館(1896~1945年)」をしてくれた人で、その時の紹介記事がこちらにあります。お役人でいながら映画史家で、かつコレクターという側面も持っている、面白い人です。

まず、許永順著「新馬華文電影1927-1965」(2015)から。


シンガポール建国50周年を記念して出た本ですが、私家版のようで、出版社は「許永順工作庁」となっています。シンガポール(新)とマレーシア(馬)における中国語映画の歴史をトピックスごとにまとめたもので、付けられている写真資料の多くをウォン・ハンミンさんが提供しています。シンガポールで作られた第1作のサイレント映画『新客』(1927公開)から、1965年公開の『以心所欲』まで、シンガポールの2つの映画会社を中心に60本余りの作品が作られたそうで、その中には広東語、潮州語、福建語の作品も何本か混じっていたようです。シンガポールがマレーシアと分離独立した1965年の『以心所欲』は”多種方言”となっていますが、どんな映画なのか見てみたいものです。

そして、最後にご紹介するのは、シンガポール国立図書館の機関誌「BiblioAsia」Vol.11, Issue 01。映画特集で、その中にウォン・ハンミンさんの「My Movie Memorabilia」が入っています。


こちらはネットで読むことができますので、興味がおありの方はこちらをどうぞ。pp.32-37です。他の記事も面白いのと、ネットにアップされると写真がとてもきれいに見られるので、ぜひ覗いてみて下さいね。

さて、今年は日本で公開されるシンガポール映画はあるのでしょうか。『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013)に続く作品が出てくれることを願っています。


 


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