アジア映画巡礼

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葛米星って誰じゃらホイ?~続・シンガポールの旧正月映画

2011-02-10 | 東南アジア映画

旧正月も終わってしまいましたねー。でもまだ、元宵節(小正月)が2月17日にやって来るし、何となく新年気分が抜けません。元宵節のことはまたその時に触れるとして、今回はシンガポールの旧正月映画『大世界(It's A Great, Great World)』に出演している葛米星(グーミーシン)のお話です。

葛米星ことグルミット・シン(Gurmit Singh)は、今シンガポールでジャック・ネオ(梁智強)と並ぶぐらい人気のあるコメディ俳優です--って言っても、ジャック・ネオを知らない方にはそのすごさがわかりませんよね。
ま、とりあえず、グルミット・シンの顔を見ていただきましょう。

「ボクで~す」<『法に従え』DVDカバー>

カンのいい方はおわかりのように、グルミット・シンというのはインド系の名前です。”グルミット”は元々は”グルミート(グル=師の友、という意味)”だと思いますが、名前だけで「シク教徒では?」とわかった方は、インド検定(ンなもん、ないけど)一級を差し上げられます。以下、英語版Wikiの情報に基づいて、彼の経歴をまとめてみると・・・・

グルミット・シンは1965年3月24日の生まれ。間もなく46歳になります。
父はチャィンチャル・シンというシク教徒で、母は中国人と日本人のハーフ。Wikiにリファレンスされている
記事によると、母方の祖父は太平洋戦争期にシンガポールに進駐していた日本人兵士だとか。中国人女性との間に女の子(グルミットの母)をもうけたものの、敗戦により日本に帰還。生後間もない母は捨てられて孤児になるところを、インド人夫婦に養女として引き取られ成長したそうです。そして17歳の時、マレーシアのイポー出身のチャィンチャル・シンと結婚し、グルミットが生まれた、という次第なのでした。まるで小説か映画のようなお話ですねー。

父方のルーツはインドのパンジャーブ地方だと思いますが、グルミット・シンは身長1m78㎝だそうなので、体格のいいパンジャービーの血が見事に遺伝。でも、顔を見ると、モンゴロイド系の血が入っていることも納得できます。昔はシク教徒として、多分髭をはやし、ターバンをしていたのだと思いますが、1985年にキリスト教に改宗したそうで、現在知られているのは上のような顔です。そして華人のメリッサ・ウォンと結婚、2人の子供に恵まれています。

グルミット・シンのデビューは1994年、テレビのバラエティ番組「Live on Five」の司会。同年に早くも「グルミットの世界(Gurmit's World)」という冠番組を持つようになり、その後1996年にコメディ番組「プア・チューカン社(Phua Chu Kang Pte. Ltd/中国語題名:鬼馬家族)」で人気沸騰。この番組は2007年まで続いたあと、2009年からはマレーシアのNTV7制作の「プア・チューカン社(Phua Chu Kang Sdn Bhd)」となり(Sdn BhdはPte. Ltdのマレー語)、シンガポールでも放送されています。この15年で、グルミット・シン演じるもじゃもじゃ頭のプア・チューカン(潘〔厂+昔〕港)は、すっかりシンガポールとマレーシアの人気キャラとなりました。

プア・チューカンに関しては、次のサイトをご参照下さい。
シンガポールのお言葉」(”このHPで使われる用語(隠語?)かいせつ”の部分)
このほかにもいろんな方が言及しています。さすが人気者、というか、テレビ以外にもいろんな所でこのキャラが使われているみたいですね。

映画デビューは2000年の『ファイア・イーター(Fire Eater)』。2001年の『片足キック(One Leg Kicking/一脚〔足易〕)』では、人気コメディアン、マーク・リー(李国煌)と共演。その後2007年、売れっ子女優ファン・ウォン(范文芳)と共演した出演第4作『法に従え(Just Follow Law/我在政府部門的日子)』で、演技者としても認められました。この映画の監督はジャック・ネオ、予告編はこちら
えー、なぜかこの映画、YouTubeに
分割アップされています。グルミット・シンのイケてないブルー・カラーぶり、どうぞ画像でたっぷりご覧下さい。

ファン・ウォンは、チャン・ヒョクと共演した『情熱のステップ』 (2008)やジャッキー・チェンの『シャンハイ・ナイト』 (2003)などでご存じの方も多いはず。1993年22歳の時に台湾で本格的な芸能活動をスタートさせて以来、テレビでも映画でも山のようなキャリアを残してきた女優さんです。ついでに、彼女の画像も付けておきましょう。

<『法に従え』DVDカバー>

『法に従え』は、お役所のキャリア女史とシングルファーザーの用務員が、『転校生』(大林宣彦監督作品のアレ)してしまうというコメディ。ジャック・ネオらしい風刺もたっぷりで、お笑いはもちろんてんこ盛り。美人のファン・ウォンが自分の下半身に目をやってギョッ! なんてシーンもあります。

監督のジャック・ネオは、シンガポールじゃ超有名人。1980年代にテレビタレントとして人気者になったあと、1997年エリック・クー(邱金海)監督の『12階(12 Storeys)』で映画初出演。中国から来た嫁にさんざんな目に遭わされる男を演じました。続いて出演した『お金が不足(Money No Enough/銭不〔句多〕用)』 (1998)がスーパーヒットし、主演のジャック・ネオ、マーク・リー、ヘンリー・チア(程旭輝)の3人組は、シンガポール最強のお笑いトリオとなったのです。

<『お金が不足』のビデオカバー。左からジャック・ネオ、ヘンリー・チア、マーク・リー>

なお、「Money No Enough」はピジン化した英語、いわゆるシングリッシュ表現ですね。ですので、憶えないようにしましょう。天海祐希やビートたけしに叱られます。No Good Lah!

この映画はのちにシリーズ化、『お金が不足』の脚本も書いたジャック・ネオは監督にも転進して、次々と人気作を発表するようになりました。日本でも上映された彼の監督作品には、『僕、バカじゃない』 (2002/原題:I Not Stupid/小孩不笨)と、イラン映画『運動靴と赤い金魚』 (1997)のリメイク『ホームラン』 (2003/原題:Homerun/〔足包〕〔口巴〕孩子)があります。どちらも東京国際映画祭で上映されました。

その一方で俳優としても出まくり状態のジャック・ネオは、シンガポール・コメディ映画を代表する顔だったのですが、近年それに取って代わる人気なのがグルミット・シン。「プア・チューカン」のテレビ復活が追い風となって、2010年夏には『映画版プア・チューカン(Phua Chu Kang The Movie)』も製作され、私も8月にシンガポールで見てきました。映画としてはイマイチだったのですが、観客がみな楽しそうに笑っていたのが印象的でした。

グルミット・シンの出演作品で日本で上映されたものには、2007年アジアフォーカス・福岡映画祭で上映されたマレーシア映画『相撲ら!』(2007/Sumolah!/Let's Sumo!)があります。主役ラムリーは、監督のアフドリン・シャウキ自身が演じたのですが、彼の相撲と恋のライバル、チャパツのイケメン青年アキラ役がグルミット・シンでした。大相撲が八百長問題でモメている今、この楽しい相撲映画を公開して春場所のかわりに・・・なんてアイディアはダメかしら? 私の好きなアウィも出てるんだけど。

『大世界』でのグルミット・シンの出番は多くありませんが、シンガポール・タレント総出演、香港女優の薛家燕(シッ・カーイン)らも出演したこの映画、シンガポールの人々のノスタルジーをかき立ててヒット街道ばく進中。今週は『グリーン・ホーネット』に続いて第2位になっています。

さらに、第3位には同じくシンガポール製旧正月映画『笑着回家(Homecoming)』がランクイン。ジャック・ネオが女装(というか、お母さん役)で出演し、その息子役が『アイスカチャンは恋の味』 (2010/初恋紅豆冰)のアニュウ(阿牛)。マーク・リーやアフドリン・シャウキも出演という、こちらも「見てみたい~♪」作品です。こちらの監督は、これが長編映画監督デビューのリー・ティアンジン(李天仁)。2011年のシンガポール映画、ますます面白くなりそうですね!

 


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