そろそろお正月気分も抜けた頃かと思いますが、2月に控えるインド映画団子状態公開に向けて、当ブログもエンジンを始動したいと思います、ブルル、ブルルル~(『きっと、うまくいく』のラージューの口マネで)。
まずは、前から書きたいと思っていた、『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』の脇役紹介のあれこれを。すんごい大物も出ておいでになるのですが、一応登場順にご紹介して行きます。配給会社アクセスエーさんがたくさんヴィジュアルをご提供下さったので、バンバン使わせていただきましょう。(大物1人だけはスチールがなかったため、昔の写真で間に合わせています。)
シャフバーズ・カーン Shahbaz Khan (1966-)
冒頭、アフガニスタンのシーンで、エージェント・ヴィノッドを取り調べるパキスタンの諜報組織ISIの大佐として登場します。そして、後半のパキスタンのシーンでも再度登場。
濃い顔の人だな~、と調べてみたら、何と、著名なインド古典音楽の声楽家アミール・カーンの末子でした。余談ですが、”ウスタード(師匠)”という名を冠して呼ばれるアミール・カーンは、最初ウスタード・ヴィラーヤト・カーンの姉妹と結婚したあと、さらに2人の妻を娶っており、シャフバーズ・カーン(本名ハイダル・アミール・カーン)は3番目の妻の子供らしいです。8歳の時父を亡くしており、その後苦労したのではないかと....。地方都市インドールからムンバイに出てきて、映画デビューしたのが1991年でした。本作では結構アクの強い役柄をうまくこなしているので、今後悪役スターとして活躍が増えていくかも知れません。
ラヴィ・キシャン Ravi Kishan (1971.7.17-)
冒頭のアフガニスタンのシーンで、ヴィノッドの相棒ラジャンとして登場します。髭があるため、いつもよりも精悍な印象が強くてステキですね。1992年にデビューしたあと、1996年にシャー・ルク・カーンやスリデヴィと共演した『軍隊(Army)』で認められたものの、その後もなかなかブレイクしなかった彼は、2000年代に入るとボージプリー語映画のスターとして大ブレイク。洗練される一方のボリウッド映画にあきたらない地方の観客の心を掴んだボージプリー語映画は、2000年代半ばに製作本数を急激に伸ばし、ラヴィ・キシャンもビッグ・ネームとなっていきます。
その後、芸術映画畑のシャーム・ベネガル監督作品『ようこそサッジャンプルへ』 (2008)や、マニラトナム監督の『ラーヴァン』 (2010)に出演するなど、重用される機会も増えてきました。現在はボリウッド映画とボージプリー語映画の両映画界で活躍しています。
マリヤム・ザカリーヤー Maryam Zakaria (1984.9.27-)
この人も冒頭の、アフガニスタンのシーンで登場します。ヴィノッドとラジャンが逃げようとした時に登場、一緒に逃亡する美女ファラを演じており、このシーンだけのサービス登場かと思ったら、彼女もまた後半のパキスタンのシーンに再登場。カリーナ・カプール演じるルビーと共に、カッワーリー・ソングを歌い踊る(下写真。左がマリヤム)という印象的なキャラクターとなっています。この踊りがまた上手で、カリーナよりもむしろマリヤムに目が吸い寄せられてしまいます。
それもそのはず、マリヤムは女優、モデルとして活躍する傍ら、振り付け師としても一流なんですね。何と、スエーデン人とイラン人の混血だそうで、テヘランで生まれ、スエーデンで育った彼女は、ダンスを学んでスエーデンでボリウッド・ダンスの学校を開いていたのだとか。数年前ムンバイにやってきて、2009年には『下宿人(Paying Guest)』にゲスト出演。以後、ボリウッド映画とタミル語&テルグ語映画にゲスト出演を重ね、昨年は大ヒット作『大いなる陶酔(Grand Masti)』にアーフターブ・シヴダサーニーの恋人役で出演しました。コークのCFなどですでに顔を知られているので、今後本格的女優の道を歩むかも知れません。
プレーム・チョープラー Prem Chopra (1935.9.23-)
すでに芸歴50年以上、320本の映画に出演しているという大・大ベテラン俳優。この人の顔を知らなければ、それはもぐりのインド映画ファン、と言ってもいいぐらいの存在です。上写真の左端の人物ですが、モロッコに住むマフィアのボスという役どころです。そう、320本の出演作中、ほとんどが悪役での出演なんですね。特にラージ・カプール監督/リシ・カプール主演の超ヒット作『ボビー』 (1973)の中で、「俺の名前はプレームだ、プレーム・チョープラー」と凄むシーンは忘れられません。インドのファンも同じ思いらしく、YouTubeにもそのシーンがアップされています。
『エージェント・ヴィノッド』でも、このマフィアのボスが実はすごく重要な存在だったことがあとでわかります。皆さん、このボスの飼っていたラクダに注目ですよ~。
ドリティマン・チャテルジー Dhritiman Chatterji (1945.5.30-)
経済界の大物、ジャグディーシュ・メトラ役で登場。「チャテルジー」という名前からもわかるように、ベンガル出身の人です。1970年代にニュー・シネマのムーブメントが起こった時、ベンガル語ニュー・シネマの名作に次々と出演、サタジット・レイ、ムリナール・セーン、アパルナ・セーンら有名監督に高く評価されました。現在は、ベンガル語映画界とボリウッド映画界の両方で活躍しています。『カハーニー/物語』 (2012)の情報局長役は記憶に新しいところですが、あれともダブるところのある今回の役柄です。
Photo by R. T. Chawla
グルシャン・グローヴァル Gulshan Grover (1955.9.21-)
パキスタンのシーンで登場する、マフィアのドン役。こちらも超大物俳優、さすがの貫禄です。この人も400本以上の作品に出演しており、その多くが悪役という、”ワル”の印象が強い人です。でも最近は、『僕はカラム(I Am Kalam)』 (2010)の食堂の主人のように、いい人役を演じる機会も増えています。また、演劇学校の校長としても知られ、多くの後輩を育てました。
グルシャン・グローヴァルは日本では「ガルシャン・グローヴァー」で検索すると出てくるように、『エアースコーピオン』(2001)などアメリカのテレビドラマやハリウッド映画にも結構出演しています。インドの映画人はそれほどハリウッド進出を重視していないため、これまでアメリカで活躍したのは『スタートレック』で知られる女優パーシス・カンバッタぐらいなのですが、彼女と並んで成功しているのがグルシャン・グローヴァルと言えます。
これに先日ご紹介したアディル・フセインを加え、贅沢三昧に脇役を使った『エージェント・ヴィノッド』。さすが、サイフ・アリ・カーンとカリーナ・カプールの愛のモニュメント的作品ですね。ぜひスクリーンで、個性溢れる脇役の競演もお楽しみ下さい。『エージェント・ヴィノッド』は2月8日(土)より、シネマート六本木で特別限定公開予定です。公式サイトはこちら、劇場のサイトはこちらです。