アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

インド映画♪脇役賛歌<その6>『きっと、うまくいく』

2013-05-17 | インド映画

いつまで続く「インド映画♪脇役賛歌」。いくらだって続けちゃいます、素晴らしい脇役がいる限り。明日5月18日から公開される『きっと、うまくいく』は、この前ご紹介したボーマン・イラニのほか、まだまだ豪華な脇役がいるんですよ~。そう、主人公のランチョーを除く3バカのあと2人、ファルハーン&ラージュー、それに4番目のバカとも言うべき「消音銃(サイレンサー)」ことチャトゥルです。中でも、ファルハーンを演じているR.マーダヴァンと、ラージュー役のシャルマン・ジョーシーはそれぞれに主役作品もある、「脇役」と言うには畏れ多い存在です。今回は、その3人をご紹介しましょう。

 ⓒVinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

ファルハーン・クレイシー:R.マーダヴァン R. Madhavan (上写真左側)

1970年6月1日、現ジャールカンド州のジャムシェードプルに生まれる。父はタミルナードゥ州出身のバラモンで、タタ鉄鋼に勤めており、母もインド銀行のマネージャーという一家に育つ。マーダヴァンは軍人になることを望んだが、両親に反対されて結局大学で電子工学を専攻、1988年にはインド代表でカナダに派遣されたり、その後イギリスにも派遣されるなど、優秀な成績をおさめた。その栄により軍でのトレーニングを受ける機会を得るが、年齢制限に引っかかって入隊はかなわず、その後は演説のコースを取って研鑽を積む。こちらのコースでも彼は優秀さを証明し、1992年に東京で行われた青年ビジネスマン会議にインド代表として派遣されたりしている。

映画界入りのきっかけとなったのもその演説力というか話力で、テレビのCFをやったことでカメラマンでもあるサントーシュ・シヴァン監督と知り合い、マニラトナム監督に推薦される。その時はマニラトナム監督には起用されなかったものの、ヒンディー語のテレビドラマや何本かの映画出演のあと、マニラトナム監督の『ウェイブ』 (2001)の主人公に起用され、一挙に注目を浴びる。さらに翌年には再びマニラトナム監督の『頬にキス』 (2002)でも主演、人気が沸騰する。2003年の『愛は至高のもの』ではカマラハーサンの相手役として堂々の演技を見せ、押しも押されぬ人気スターとなった。これらの作品は、いずれも日本の映画祭でも上映されている。

以後は、タミル語映画とヒンディー語映画の両映画界で活躍。代表作には、アーミル・カーンと共演した『愛国の色に染めて[Rang De Basanti]』 (2006)や、ヒット作となって現在続編が製作中の『タヌ、マヌと結婚する[Tanu Weds Manu]』 (2011)などがある。『きっと、うまくいく』ではナレーションも担当しており、その軽妙な語り口を楽しむことができる。私生活では、1999年に結婚した妻との間に息子が1人いる。

 ⓒVinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

ラージュー・ラストーギー:シャルマン・ジョーシー Sharman Joshi(上写真左)

1979年4月28日、ムンバイ生まれ。父はグジャラート州の出身で、長らくグジャラーティー語演劇に携わってきた。叔母や姉マーンシー・ジョーシー・ロイも俳優で、舞台やテレビなどで活躍している。姉マンシーの夫はやはり俳優のローヒト・ロイであり、またシャルマン・ジョーシーの妻もプレーム・チョープラー(悪役で名を馳せた名脇役)の娘と、まさに俳優ファミリーの一員である。

シャルマンは舞台劇で経験を積んだあと、1999年にシャバーナー・アーズミー主演の『ゴッドマザー[Godmother]』で映画俳優としてデビュー。『愛国の色に染めて[Rang De Basanti]』 (2006)等いくつかの作品に出演したあと、『インチキ[Golmaal: Fun Unlimited]』 (2006)のコメディ演技が注目を浴びる。続けて、『大都会...の生活[Life in a...Metro]』 (2007)の負け犬会社員の役が観客に強い印象を残し、その名が知られるようになる。『きっと、うまくいく』の大ヒット後は『じゃ、話は決まり![Toh Baat Pakki!]』 (2010)や『フェラーリに乗る[Ferrari Ki Sawaari]』 (2012)など主演作も増え、主演級俳優の仲間入りを果たしつつある。

私生活では2005年の結婚後、娘と、双子の男の子が生まれている。

 ⓒVinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

チャトゥル・ラーマリンガム:オーミ・ヴァイディヤ(下写真)

1982年1月10日、アメリカのカリフォルニア州ユッカバレーに生まれる。両親の出身地はゴアで、ロサンゼルスで育ったオーミ・ヴァイディヤは幼い頃よくインドに里帰りし、ムンバイに滞在したという。6歳の時からインド人の劇団で演技を学び、英語劇などに出演。ロスの高校時代は真剣に演劇に取り組み、将来俳優になることを目指した。

その後カリフォルニア大サンタクルーズ校で学んだあと、ニューヨーク大のティッシュ・スクール・オブ・アーツで演技や映画製作を学ぶ。卒業後はロスに戻り、いくつものオーディションを受けて2004年からテレビドラマや映画に出演を始める。その中には、テレビ連続ドラマ「仮面ライダー:ドラゴンナイト」(2009)のフィッシュ役も含まれている。

『きっと、うまくいく』のチャトゥル役もオーディションで最終的に決まったもので、オーミ・ヴァイディヤの変なアクセントのヒンディー語が決め手となり、この大役を手にすることになった。その時のオーディション映像がメイキングに入っており、YouTubeのこちらにアップされている。『きっと、うまくいく』の名(迷?)演技で数々の賞を受賞して以降は、『心は子供です[Dil To Bachcha Hai Ji]』 (2011)や『インド人青年[Desi Boys]』 (2011)などのコメディ作品に出演しているが、『きっと、うまくいく』ほどの強烈な印象は残念ながら残せていない。

 

オーミ・ヴァイディヤのスチールがなかったため、IMDbにあった写真を付けておきました。あまりにインパクトが強い役をやってしまうと、その後の出演作でのキャラ作りが難しいものなのですねー。

4バカ役の中では、このオーミ・ヴァイディヤが一番若く、出演当時は27歳。ご承知のように主役のアーミル・カーンは当時44歳でしたので、大学生役はもちろん、その10年後でもちょい苦しい年齢です。とはいえ、アーミル・カーンの化けっぷりはすごくて、全然違和感がないのですが。そんなアーミル・カーンになるべく合わせるべく、R.マーダヴァン(撮影当時39歳)やシャルマン・ジョーシー(同30歳)が選ばれたのでしょう。他の学生たちもあまり若い役者は選ばれておらず、強いて言えばジョイ・ロボ役のアリー・ファザルが撮影当時23歳と目立って若かったのでは、と思います。そういえば、この間日テレの「スッキリ!」で『きっと、うまくいく』が紹介された時、ランチョーをラギングでいびる上級生に「教師」というテロップが付いていましたね。まあ、あの老け顔ではそう誤解されても仕方ありません。

いったい何のこと? と思っている方は、明日劇場にGO! 日本全国多くの劇場で明日が封切りとなる『きっと、うまくいく』。劇場情報等は、公式サイトのこちらをどうぞ。では、東京近辺の方はシネマート新宿でお会いしましょう!

<追加情報>初日の5月18日(土)ですが、その日TBSテレビ「王様のブランチ」でも紹介されるそうです。でも、私は多分劇場にいるなあ、その時間。また録画しなくては....。

 

 


コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
«  インド映画♪脇役賛歌<その... | トップ | 初日満員御礼!『きっと、う... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Misha)
2013-05-17 07:11:44
初めまして、Mishaと申します。
以前から、存じていましたがなかなかお会いする機会もなくブログを読み楽しませて頂いてます。私は、10年来のインド映画ファンで、KKHHを見て以来、SRKにイチコロで、それ以来のきちがいファンです。
彼の映画に特化し、若い頃の作品を見まくりました。DVDも買い漁りました。
ヒンディ語も習ったりしましたが、しゃべるこてはできません。が、わかる単語は沢山あります。 なので、字幕なしでもあるていどストーリーは理解できますが、やはり字幕があるのとないのとでは、全然ちがいますね。
今回、命ある限りを見て最高に素敵なSRKが見れて満足な反面
ラブシーンがショックで倒れそうでした。
そうそう、私も脇役さんの存在が大好きで特に、KKHHに出演してました、名前が分かりませんが、役名がアルメイダと言う、コメディには欠かせない俳優さんいましたよね。
サマのキャンプの主催者ですかね。
彼は、最高に面白いです。
ちなみに、あね時にSRKの娘役だった、アンジェリは今も女優さんを続けているんでしょうか?彼女の、演技は素晴らしいですね。ダンスも上手でした。
その時に、やっぱり子役のシック教徒の男の子も可愛かったですが、彼も続けてるんでしょうか?女の子は、もう20歳位でしょうか?
気になります。
ご存知でしたら、教えて下さい。
また、ブログでも取りあげて欲しいです。
返信する
Misha様 (cinetama)
2013-05-17 12:06:35
長文のコメント、ありがとうございました。

KKHHこと『何かが起きてる(Kuch Kuch Hota Hai)』(1998)は、東京国際映画祭で上映された時にご覧になったのでしょうか?
挙げていらした脇役の面々ですが、サマー・キャンプの主催者をやっていたのは、コメディアンのジョニー・リーヴァル(Johnny Lever)です。この頃、大人気でしたね。最近もコメディ映画で時々見かけます。
シャー・ルク・カーン演じるラーフルの娘アンジャリーを演じた少女はサナー・サイード(Sana Saeed)と言い、成長してからは昨年のヒット作『最優秀学生(Student of the Year)』に出演したりしています。24歳になり、すっかり顔が変わっていますよ。
シク教徒のおちびちゃん(無言で星を数える男の子)を演じたパルザーン・ダストゥール(Parzaan Dastur)は、『家族の四季』(2001)始め何本かのヒット作にチラと顔を出していましたが、その後大きくなって主演した『アレキサンダー(Sikandar)』(2009)の中学生役で結構印象に残る演技を見せ、注目されました。最近では、『休憩のあとに(Break Ke Baad)』(2010)に出ているようです。

どの人も英語サイトにはいろいろ情報が載っていますので、Yahoo! Indiaでチェックしてみて下さいね。
返信する
Unknown (Misha)
2013-05-17 18:04:35
早速の返信嬉しいです。
名前がわかれば、検索できますのでチェックしてみます。
また、SRKと共演したら面白いですね。
ちなみに、私がKKHHを見たのは、DVDだけです。あの、メチャメチャな日本語訳のです。
早速検索しまぁす。
ありがとうございました♪
返信する
Unknown (Maymay)
2013-05-18 13:05:40
昨日最終日新宿シネマートに駆けつけました。
『タイガー』で暫くご無沙汰だったインドハートを呼び起こされ、続く『DON2』『命ある限り』で完璧にノックアウトです(笑)
その日のうちに夜行バスで帰りましたが、疲れはまったく感じず逆にテンション高めはインド映画のおかげかも。
当地では来週からの『きっと、うまくいく』も楽しみです。
そうそうボーマン・イラニのご紹介ありがとうございます。
『Veer-Zaara』では娘の恋愛に苦悩する父親を好演してましたね。その時から気になる俳優でした。
返信する
Maymay様 (cinetama)
2013-05-18 17:10:00
コメント、ありがとうございました~。最終日のイッキ見、お疲れ様でした! サルマーン+シャー・ルク2連チャンだったのですね。

『きっと、うまくいく』、東京はトーク付き2回目は満員御礼立ち見まで!でした。これからブログにアップしますが、ぜひぜひそちらの映画館でも満員になることを願っています。

ボーマン・イラニ、『ヴィールとザーラー』にも出ていましたか。すっかり忘却の彼方...。あれも、ヤシュ・チョプラ監督の作品でしたね。「ボリウッド4」の成功を、天国で喜んで下さっているかも知れません。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インド映画」カテゴリの最新記事