衝撃のインド映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』、いよいよ今週7月17日(土)から公開です。走り回る水牛のひづめ音が聞こえてきそうな距離になってきましたが、特集記事の第3回は、映画に登場する食べ物についてです。ここにつけたちょっとおどろおどろしい副題は、「黙示録」の第19章17-18の一部で、映画の最後に引用される部分に出て来ます。実は『ジャッリカットゥ』は、2020年9月にアジアフォーカス・福岡国際映画祭(最後の映画祭でした。長年ありがとうございました)で上映されたヴァージョンと、今回公開されるヴァージョンとはちょっと違っているのです。最初のヴァージョンの冒頭にあった「ジャッリカットゥは....」という説明は「黙示録」の第20章1-3の引用に置き換えられ、そして本編の最後にも前述のような「黙示録」第19章17-18が引用されています。「黙示録」というのは新約聖書の一部というか締めくくりを成すもので、書き記した人の名を冠して「ヨハネ黙示録」とも呼ばれます。今回映画に引用された部分は、映画をご覧になったあとでパンフレットの冒頭にある監督の言を読んでいただければ、何となくおわかりいただけるのでは、と思います。
それはさておき、『ジャッリカットゥ 牛の怒り』には、ケーララ州の山地に住む人々が好む、いろんな食べ物が登場してきます。これまでケーララ州の食べ物を扱った映画と言えば、ドゥルカル・サルマーンがシェフを演じた『ウスタード・ホテル』(2012)がよく知られていましたが、あれは海辺の町カリカットが舞台で、イスラーム教徒が営む食堂ウスタード・ホテルに登場する食べ物が中心でした。今回は標高もちょっと高い山中の、キリスト教徒が多く住む地域の食文化がいろいろ登場します。
まずはこのプットゥ(Puttu/写真はWikiより)。挽いたお米にココナツを混ぜて蒸し上げたもので、朝食によく食べられます。実は映画の中にはこの実物は登場せず、最初の方でDV夫が妻に「また同じ朝飯か!」と怒鳴り散らすセリフの中に登場します。「おにぎり」とかいろいろ訳語を考えてみたのですが、ピッタリこなくて、名前は出しませんでした。朝ご飯以外にも食べられるようで、『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)では、ケーララ州に迷い込んだムトゥとランガが村の食堂で食事する時に出て来ていましたね。
続いてはこれ、同じく朝ご飯などによく食べられるアッパム(Appam)です。上の写真は、チェンナイでお邪魔したケーララ人(「マラヤーリー」と呼びます)の映画監督のお宅で夕飯をいただいた時に出て来たもので、米粉を溶いてちょっと発酵させておき、丸形のくぼみがある鉄板で焼いたパンです。隣にあるのはチキンカレーだったと思いますが、このアッパムはグレービーをよく吸ってくれて、カレーにもすごく合います。『ジャッリカットゥ 牛の怒り』では、始まって20分ぐらいした頃に、ゴム農園主クリアッチャンの家のシーンがあり、小柄で酒飲みのクリアッチャンと、次の日に行われる彼の娘の婚約式について打ち合わせに来た男性との会話が登場します。それが、婚約式のご馳走についての打ち合わせで、ここにアッパムは出てくるは、ヤシ酒入りパン(英語ではToddy Bread)は出てくるは、水牛カレーはもちろん、タマリンドの酸っぱさが効いた魚カレーは出てくるはと、グルメ用語満載なのです。ところが水牛カレーも実物が出てこないので、いったいどんなものだろう、と思っていたら、粟屋利江先生からお写真を拝借することができました。
<訂正7.14>すみません! 粟屋先生からお写真をお借りした時にきちんと確認しなかったので、もう一度確認したら、この肉は水牛ではなく、何と「魚」なんだそうです。このデカさだと、まぐろや鰹クラスの大魚でしょうか。お詫びして訂正します。分厚さから、てっきり水牛だと思ってしまったのでした...。
このカレーの右側のお皿がタピオカ芋で、ゆでてあって、ライスの代わりにこうやって食べるのが好まれるようです。タピオカは映画の中でもあちこちに出てきていて、オーマナという姉御肌の女性が近所の女性たちとタピオカを茹でているシーンがあったり、それから下の写真のシーンで、ソフィが処理しているのもタピオカ芋(=キャッサバ芋)だと思います。日本ではタピオカというと、タピオカミルクティー(中華世界では「珍珠[女乃]茶」と呼びます)のあのつぶつぶボールを思い浮かべるのですが、ケーララでは芋のまま、主食として食するのです。なお下のシーンでは、ソフィは兄ヴァルキのためにご馳走を作ろうとタピオカ芋を処理しているのですが、アントニが彼女をじっと見つめていると、写真のようにタピオカ芋を左手で握り、包丁で上部をちょん切ります。大人の皆さんには、何を意味しているかわかりますよね(汗;;)。「キレイな顔して鬼畜だぜ」なんですが、アントニは店主ヴァルキにもうらみがあるので、「兄も妹も鬼だ」と捨て台詞を吐いて立ち去ります。
©2019Jallikattu
本作にはほかにも、チキンカレーやらスナック菓子やら、いろいろ食べ物は登場するのですが、それを見せるための映画ではないので、さっと素通りなのが残念です。でも、水牛退治に呼ばれた鉄砲名人のクッタッチャン(下写真)が、捜索中に「何の肉が一番うまいと思う?」と村人に聞いて、コワい答えを言ったりするので、実物が出てこないでよかったというところです。
©2019Jallikattu
こんな映画ですので、見終わった後はインド料理が食べたくなること請け合いです。映画の公式ツイッターにはいろんなインド料理店が紹介してありますので、検討材料にぜひ。ツイッターにはほかに、牛さん関連神社へのヒット祈願お参りもアップされていますが、牛天神こと文京区春日の北野神社にもぜひどうぞ。牛石をなでなでしながら、ヒット祈願をして下さい。小さな神社なのですが、牛石願掛けは八百年前から霊験あらたかだとか。梅のきれいな季節だと最高なのですが、ちょっと小高いところにあるので、今の季節は風がさわやかだと思います。
美麗なパンフレットも出来てきました。700円とお買い得なので、ぜひお求め下さい。表紙に書いてあるのは、「ജല്ലിക്കട്ട്.(ジャッリカットゥ)」というマラヤーラム語の文字で、映画のタイトルロゴになります。これを抱えて、ケーララの人が経営するインド料理レストランに行けば、大もてすること請け合いですね。タミル語映画(『ムトゥ 踊るマハラジャ』)、ヒンディー語映画(『きっと、うまくいく』)、そしてテルグ語映画(『バーフバリ』)の次のブームは、マラヤーラム語映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』だっ!? 公式サイトはこちら、最後に予告編を付けておきます。
暴走牛vsテンションマックスの牛追い狂人!!神出鬼没の水牛スリラー・パニック映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』予告編
ジャリカトュ トレーラー拝見しました
これはおもしろそうですね
梅田に来たらみたいです
ま,少し待てばネトフリか,悪くてもdvdになるかなって思ってしまうの,悪い癖ですね
ところで,字幕が別のものになっているかもっていうお話,そうなんですか! いくつもつくるとコストかかるだろうからって思うのですが,権利のお金払うより新しくイマイチかもしれない字幕をまたつけたほうがいいかもっていう考えなんでしょうかね
これまでまったく意識してなかったです
たしかパッドマンはアマプラでみた気がします
さっきのジャリカトュの関連のカレーの動画でこんな時間(22:37JST)お腹空いてしまった!
いやあ,日本でインド映画ブームきませんかなねえ
韓ドラでさえ,まだまだ一部のひとだけって感じですし,ボリウッドは難しいですね
俳優さんの濃い顔が受けわるいかなあ
見慣れると好きけどね
ところで,
イルファン・カーンさん
ラージプートさん(pkの)
シュリデヴィさん
ラージさんは自殺なようですがセレブだし最高の医療受けるはずの方々がはやくになくなるのは残念
では韓ドラとともにボリウッドも楽しみにしてますね 先生のこのブログも有用な情報源です
いつもありがとうございます
このブログを分野ごとに整理されて書籍として出すってのはやはり,部数とかマニアさんの人数考えると,難しいくらいなお値段になっちゃんだろうなあ