アジア映画巡礼

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『ミルカ』萌え~<その5>萌え萌えの出演者たち

2015-01-25 | インド映画

『ミルカ』公開まであと400m、じゃなかった、あと4日です。レースは1月30日(金)開始です。走者の皆さん、劇場へダッシュする瞬発力はキープ済みでしょうか。とはいえ、今は事前に座席指定もできてしまうので、ゆっくりと劇場入りできますね。私は日比谷か新宿か川崎か、どちら方向へランするかいまだに考慮中。やっぱり、エレベーターの扉が『ミルカ』仕様という日比谷にするかな~。劇場情報はこちらでどうぞ。

『ミルカ』のここまでの宣伝はもっぱら体育会系に流れていますが、ここでちょっとボリウッド系に引き戻したいと思います。というのもこの映画の出演者の面々は、とても魅力的な俳優ばかりなのです。公式サイトにあるキャストのプロフィールは、私がたたき台をゴーストライティングしたのですが(マスコミ試写用プレスと公式サイトの編集者の方がスグレモノで、細かく事実などをチェックして加筆修正して下さってこれになりました)、ちょっと書き逃したこともあり、それも加えて本日ご紹介したいと思います。

ミルカ・シン役:ファルハーン・アクタル Farhan Akhtar

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

この人は、2008年の特集上映<ボリウッド・ベスト>で上映された『DON 過去を消された男』(2006)の監督として、日本に初登場します。でも、ボリウッド映画ファンには、彼の監督デビュー作『Dil Chahta Hai(心が望んでる)』(2001)で有名な人だったんですね。

『心が望んでる』は、実に衝撃的な作品でした。それまでインドの俳優たちは演技していることが見え見えだったのですが、この作品ではまったくの自然体。アーミル・カーン、サイフ・アリー・カーン、アクシャイ・カンナーというトップ男優3人を使って、こんなヘタレな映画を作るとは。ちなみに、ここでの「ヘタレ」は褒め言葉で、いかにもの不自然な演技や展開からはほど遠い、肩の力の抜けた作品、という意味です。その新人監督が著名な脚本家であり、作詞家・詩人でもあるジャーヴェド・アクタルの息子と知って何となく納得できたものの、すごい新人監督が出てきたものだ、と思いました。

ところがそれから数年たって、ファルハーン・アクタル監督が作り上げてきたのは何と!かつての大ヒット娯楽映画『Don(ドン)』(1978)のリメイクである『DON 過去を消された男』(2006)。旧作は父ジャーヴェード・アクタルと、サルマーン・カーンの父サリーム・カーンの共同脚本で、主演はアミターブ・バッチャンでした。そして今度の作品の主演はシャー・ルク・カーンと、これまた娯楽大作モード満載。ところが古い革袋に入ったこの新酒は、前作とはまったく違うテイストで、特にラストのどんでん返しは観客をうならせることになります。いやー、すごい才能の監督だわ~、と感服したのでした。

 ところがところが、ファルハーン・アクタルは再びボリウッド映画ファンにうっちゃりをくらわせます。何と!!!!!俳優としてデビューしてしまうのです。デビュー作は2008年の『Rock On!!(ロック・オン)』ですが、その翌年2009年に作られた『チャンスをつかめ!』がその年の東京国際映画祭で上映されることになり、その字幕を担当したことでこちらの作品を先に目にすることになりました。

『チャンスをつかめ!』はファルハーンの姉ゾーヤー・アクタルの監督デビュー作で、ファルハーンは俳優デビューを夢見る青年を演じます。その登場人物の姿がなぜか彼自身に重なり、監督よりも俳優になりたかったんだなこの人、と字幕を作りながら彼の演技をじっくりと観察しました。すると、それまで「全然ハンサムじゃない」と思っていた顔が、味わい深い演技者の顔に見えてきたからあら不思議。ちょっとハスキーな声も、時々つっかえるような台詞回しも、等身大の若者を演じるのにはピッタリです。俳優としても意外と才能あるかも、と思いはしたのですが、やはり監督としての才能を伸ばしてほしい、とこの頃は思っていました。

しかしファルハーンは、以後も『Karthik Calling Karthik(カールティクがカールティクに電話する)』(2010)、姉の監督作『人生は一度だけ』(2011)と俳優業を優先させていきます。スペインにバチェラー旅行に行く3人組を描いた『人生は一度だけ』では、ファルハーン演じる青年がスペイン在住の別れた父を訪ねるシーンが(ハッキリ言うとそのシーンだけが)見ものでしたし、サイコ・サスペンスの『カールティクがカールティクに電話する』でも、ディーピカー・パードゥコーン相手に難しい役を好演、挑戦しがいのある役を演じるのが楽しくて仕方がないようでした。これらと並行して、監督第4作目の『闇の帝王DON  ベルリン強奪作戦』(2011)を作るのですが、水準以上の娯楽大作ではあったものの、前作『DON』ほど心血を注いでいないな、と思わせられました。この頃、彼の心はすでに演技することに占められていたのかも知れません。

そして、次に来た『ミルカ』では、もう心血どころか、髪の毛も筋肉も汗も注ぎに注いだ最高の演技を見せてくれます。外見上のなりきり度だけでなく、内面の葛藤を演じる表現力も格段にアップした、ファルハーン・アクタル、一世一代の名演技と言えるでしょう。ぜひスクリーンで見て、ご確認下さい。

 

軍隊の教練担当教官ヴィーラパンディアン役:プラカーシュ・ラージ Prakash Raj

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

すでに日本にも数多くのファンが存在する、南インド映画界の大物俳優です。俳優のほか、監督、プロデューサーとしても活躍している人で、今回調べてまだ49歳とわかってびっくりしました。出身はカルナータカ州のベンガルールで、私が初めて彼を認識した作品は、カンナダ語映画『Nagamandala(蛇の化身)』(1997)。デビューしたのは1993年で、『ボンベイ』(1995)などにも出演していたのですが、全然気がつきませんでした。

彼が全インド的に知られるようになったのは、『ボンベイ』のマニラトナム監督がタミル・ナードゥ政界の歴史を描いた『ザ・デュオ』(1997)を世に出してから。M.G.ラーマチャンドランがモデルとなったモーハンラール演ずる主役の同志であり、のちに彼から離反する作家(M.カルナニディがモデル)を演じて、国家映画賞などを受賞しました。現在までに、すでに約230本の作品に出演しています。

ボリウッド映画にも特に悪役としてよく出演しており、タミル語版とヒンディー語版両方がヒットした『Singham(シンガム)』(2010/11)などでボリウッド映画ファンにはおなじみです。『ミルカ』のインターナショナル版では出番がちょっと少なくなっていますが、南インドなまりのヒンディー語で部下に命令し、踊りも見せてくれる大サービス。印象的な口ひげと共に、この顔(写真上の左)をご記憶下さい。

 

軍隊での陸上コーチ、グルデーウ・シン役:パワン・マルホトラ Pawan Malhotra

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

この人は、ファルハーン・アクタルの監督作『DON 過去を消された男』(2006)で、ドン(シャー・ルク・カーン)の右腕ナーラングを演じました。今回紹介を書くにあたって、『ドン』の出演者だと識別できたのですが、ご面相がまったく違っていて唖然。ナーラングはドンの叔父貴分みたいな、しゃれたギャグ幹部という感じだったのに、このコーチはひげ面のシク教徒(写真上の左)。しかも、ひげを押さえるためにハンカチで歯痛の時みたいな格好をして登場するし、紋切り型の挨拶をして相手のスポーツ担当大臣ワードワを失笑させるし。見事に、田舎くさくてとことん誠実な軍人に化け切っており、目からウロコでした。

パワン・マルホトラはパーニーパットの戦いで有名なパーニーパットに生まれ、デリー大学文学部を卒業したエリートです。その後演劇を経験したあと映画俳優になるのですが、そのせいか初期には芸術系の作品に出演していました。それは公式サイトにも書いたのですが、その後気になっていろいろ調べているうちに、日本で上映された作品にも出ていることがわかってびっくり仰天。えー、あの青年がそうだったのか!!と今でも興奮が収まりません。

 そのうちの1本は、1989年の第3回東京国際映画祭のコンペで上映された『ボンベイのサリム』(1989)。監督はサイード・アクタル・ミルザーで、ボンベイ下町のチンピラ青年たちを描いたものでした。下がプレスの写真なのですが、真ん中がパワン・マルホトラ、そして右側は、後年『ラガーン』(2001)を監督することになるアーシュトーシュ・ゴーワーリーカルです。

もう1本は、1990年の湘南カンヌ国際映画祭(カンヌ国際映画祭の監督週間に倣って、世界各地の映画作家の作品を上映)で上映された『虎男』(1990)。こちらはベンガル語映画界の気鋭ブッダデーブ・ダスグプタ監督の作品で、この映画祭で上映されたあとNHKでも放映されました。全身に色を塗った上、かぶり物をかぶって虎に扮し、農村を回って虎を演じてみせる男の悲哀が描かれた作品でした。ヒンディー語の作品で、確か小磯千尋さんが字幕を担当したはず。あの虎男が23年後にはこんな素敵なおっさんになっているとは。ググってみるとネットで『虎男』に言及している方もあったりするので、そういう方にぜひ『ミルカ』を見てもらいたいです。虎男のおっさんぶり、ステキですよ~。



ミルカの姉イシュリ役:ディヴィヤ・ダッタ Divya Dutta

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

『スタンリーのお弁当箱』(2011)を見た人なら、学校におけるスタンリー君の唯一の味方と言っていい、美人でやさしいロージー先生を憶えているはずです。ロージー先生を演じたディヴィヤ・ダッタが『ミルカ』でも、彼の最大の理解者として登場します。彼女はシャー・ルク・カーン主演作『Veer-Zaara(ヴィールとザーラー)』(2004)、シャーム・ベネガル監督の『ようこそサッジャンプルへ』(2008)、ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督の『デリー6』(2009)などにも出演、いずれも印象的な演技を見せています。私のオススメは、アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『ようこそサッジャンプルへ』のすっとんきょうな女の子ヴィンディヤーです。

 

ミルカの恋人ビーロー役:ソナム・カプール Sonam Kapoor

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

これから活躍しそうな女優さんのNo.1で、目下主演作が目白押し。日本で上映されたのはラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督の『デリー6』(2009)と、沖縄国際映画祭で上映された『I Hate Luv Storys』(2010)、そしてインディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパンで上映された『ラーンジャナー』(2013)だけなのですが、今後何か公開される作品が出てくるかも知れません。とはいえ、演技力、俳優としての魅力もまだまだ開花してない感があり、お父さんのアニル・カプールに肩を並べる女優になるには、もっともっとがんばってほしいところ。従弟のアルジュン・カプール(アニル・カプールの兄でシュリデヴィの夫ボニー・カプールの最初の結婚でできた息子。同じ1985年生まれですが、ソナムの方が17日早く生まれています)の方が人気急上昇中なので、負けずにがんばって下さいね。


このほか、ネルー首相役にはダリープ・ターヒル(『ゴアの恋歌』『ラ・ワン』など)、スポーツ担当大臣ワードワ役にはK.K.ライナー(『ゴアの恋歌』『デリー6』など)、パキスタンの陸上選手アブドゥル・カーリクのコーチであるジャヴェード役にはナワーブ・シャー(『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』)と、どこかで見た顔がいっぱい。ボリウッド映画ファンには嬉しい『ミルカ』ですので、お友達やご家族を誘って初日にぜひお出かけ下さい。公式サイトはこちらです。

 

 


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4 コメント

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萌え~♪ (Jaan)
2015-01-29 21:52:53
いよいよ『ミルカ』始まりますね♪
初日は残念ながら仕事なので、お休みに友達を誘って行く予定です!
私は新宿に行きます。

本当、素晴らしい俳優さんが出演されていますね~。
ファルハーン・アクタルさん、ミルカ役にピッタリで、萌え萌えです(#^.^#)

以前観たときは武井さんに気付かなかったので、今回は気にしながらみたいと思います。
もちろん、字幕も♪

先日、武井さんがTVに出たとき、ミルカのこといっぱい宣伝してくれるのかな?と期待していたのですが、ちょこっとだけだったので、とても残念でした(T_T)
口コミで、頑張って宣伝したいと思います!
返信する
Jaan様 (cinetama)
2015-01-30 19:06:50
コメント、ありがとうございました。

平日初日だと、お勤めの方はご無理ですよね。私は雪の中、有楽町へ出かけてきました。続いてレポートをアップす
る予定です。

宣伝がまだまだいきわたっていないので、ぜひぜひ口コミ、ツイッターコミなどよろしくお願い致します~。

今日は雪でミルカも寒そうでしたが、明日は天気も回復しますし、明後日は2月1日の映画ファンサービスデーで確か料金も安くなるはずなので、ミルカも全力疾走することでしょう。
走れ!ミルカ!!
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萌えすぎです (nancy)
2015-02-02 19:29:45
 1日の映画の日に角川シネマ新宿に見に行ってきました。 
 ポスターやチラシをみてミルカ役のファルハーン・アクタルさん素敵!と思っていましたが、映画を見たら思っていた何百倍も素敵で、萌えすぎました。他の出演作もネットで覗いてみましたが、このミルカ役に一番心が揺さぶられます。30代後半でこの作品に望んだのでアスリートの身体作りは相当大変だったろうなと感心してしまいました。

 大好きな 「Dil Chahta Hai」の監督だったと知ってびっくり。またあの路線の映画を撮ってほしいものです。

 ということで沢山の人に見てほしいので口コミ宣伝します!
返信する
nancy様 (cinetama)
2015-02-02 21:27:44
コメント、ありがとうございました~。土曜日もお疲れ様でした。

おお、やはり萌えましたか(^^♪(今頃気づいたけど、1月から使い始めた8.1にはこんな記号がいっぱい入ってる。あらま!)
一昨日からのシンク水漏れ事件などでなかなか監督インタビュー(下)がアップできないのですが、そこにも萌えの秘密がちょこっと解き明かしてあります。
もうちょっとでアップできますので、また見に来て下さいね。

口コミ、ツイート・コミ、FBコミ、ご宣伝どうぞよろしくお願いします!
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