本日はキネカ大森で、<インディアンムービーウィーク2022パート2>の新作2作品を見てきました。まずは12時45分から『私の夢、父の夢』、そして15時45分から『兄貴の嫁取物語』です。1月19日(木)まで続くプログラム(劇場サイトはこちら)で、両作品ともまだ何度か上映されるため、ちょっとご紹介しておきましょう。
『私の夢、父の夢』
2018年/タミル語/145分/原題:Kanaa கனா
監督:アルンラージャー・カーマラージ
出演:アイシュワリヤー・ラージェーシュ、シヴァカールティケーヤン、サティヤラージ
原題の「カナー」は英語で「To dream」と訳されているので、「夢に向かって」というような意味合いなのでしょう。ある村でクリケットの試合の最中に乱闘が起こり、全員が警察署に連れてこられて、署長が尋問をするところからお話が始まります。署長に説明するのは、サチンとテンドゥルカルという(サチン・テンドゥルカルは伝説的な超有名クリケット選手)、背の低い太った青年と背の低いやせた青年。彼等の話では、村で人望のある土地持ち農民ムルゲーサン(サティヤラージ)とその娘カウシことカウサリヤ(アイシュワリヤー・ラージェーシュ)が、今回の混乱の元だとのこと。ムルゲーサンがクリケットファンなので、カウシも小さい時からクリケットに夢中になり、やがて村の青年たちが練習しているところを熱心に見学するようになったカウシは、ボウラー(野球で言えば投手)としての才能を見せ始めます。でも、カウシの母は「女の子がクリケットなんて」と大反対。母だけでなく、世間の人もみんなそう言いますが、彼女を妹と思っている村のクリケットチームの選手たちや、彼女にホの字の旅行エージェントの青年ダルシャン(ムラリ・クリシュナ)は、カウシの才能を何とか伸ばそうとします。やがて彼女の才能が認められ、ナショナルチームの選抜にも参加できることになりますが、その頃父ムルゲーサンは干ばつのせいで収穫が得られず、銀行から借りた金の返済に追われる状況に追い込まれます...。
©SK Productions
前半は、警察で署長に語る、という形でフラッシュバックが使われ、後半は、父と娘の両方が困難に突き当たりながらも何とか歩んでいく姿を見せて、最後に両方をつなぐ形でクライマックスがやってくる、という、ちょっとひねった形ではあるものの、なかなかに感動的な物語です。村のクリケットチームのアンナー(兄貴)たちが妹カウシのことを思う気持ちや、頑固なお母さんが最後にカウシを励まして言う言葉等々、何度か泣かされるシーンがありました。ずっこけギャグも入っていて、『バーフバリ』ギャグには大笑い。サティヤラージ、皆さんおわかりだと思いますが、『バーフバリ』のカッタッパなんですね。そして、ナショナルチームの場面になると、本作のプロデューサーである人気スター、シヴァカールティケーヤンがチームの監督として登場。この人物も過去にいろいろあった元クリケット選手、というわけで、普段のイケメン顔を髭で隠し、熱演を見せてくれます。そんな中一番光っていたのはやはり、カウシを演じたアイシュワリヤー・ラージェーシュで、映画完成時28歳だったのが信じられないくらい初々しいクリケット少女を演じています。フィルムフェア賞(南インド映画)の批評家が選ぶ主演女優賞や、Zeeシネマ賞の主演女優賞などを獲得したのも当然ですが、この演技、ぜひお見逃しなく。
Kanaa - Official Trailer | Aishwarya Rajesh, Sathyaraj, Darshan | Arunraja Kamaraj | Sivakarthikeyan
『兄貴の嫁取物語』
2014年/タミル語/160分/原題:Veeram வீரம்
監督:シヴァ
出演:アジット・クマール、タマンナー、サンダーナム、ナーサル、アトゥル・クルカルニー、プラディープ・ラーワト
こちらは、「『タラ(お頭)』の冠タイトルをつけて呼ばれるアクションスター、アジット・クマール主演のアクションコメディ」とのことだったのですが、コメディは前半と最後にでてくるサンダーナムと、途中に出てくるナーサルの妹婿役?の人があまり笑えぬコメディシーンを繰り広げるものの、たびたび出てくるアクションシーンの凄惨さの前には色あせてしまう作品でした。マドゥライ地方の村が舞台で、長兄ヴィナーヤカ(アジット・クマール)が未婚のため、4人の弟のうちすでに恋人がいる3人も結婚できず、何とか兄と村にやってきた美術修復家の美女コーペルンデーヴィ(タマンナー)とを結びつけてしまおうとするのが前半の物語です。その途中に村の悪のボスとの闘いがあり、後半はコーペルンデーヴィの実家に行ったことで、彼女の父(ナーサル)に恨みを持つ父子(息子役アトゥル・クルカルニー)との闘いに兄弟5人が巻き込まれていくことになります。アクションシーンはいずれもかなり凄惨な闘いが繰り広げられるため、「兄貴の嫁取物語」という牧歌的なタイトルは「看板に偽りあり」感が大。原題の「ヴィーラム(武勇、豪胆)」の直訳の方がよかったかも。アジット・クマールのファンは、こういうのがお好みなんでしょうか...(ヒットしてますもんね)。
Veeram Official Trailer | Thala Ajith's | Ajith Kumar | Tamanna | DSP