いよいよ明日から、第27回東京国際映画祭が始まります。お天気がちょっと心配ですが、グリーンカーペットが始まる頃には雨がやんでくれるといいですね。
で、始まる前にちょっとだけ、試写で見せていただいた映画の感想などを書いておきます。
<コンペティション部門>
『遙かなる家』 公式サイト
中国/2014年/中国語・ユグル語/102分/原題:家在水草豊茂的地方
監督:李睿[王君](リー・ルイジン)
主演:湯龍(タン・ロン)、グォ・ソンタオ
とても心にしみる作品でした。中国の甘粛省に住む少数民族裕固(ユグル)族の小学生兄弟が主人公です。2人とも学校に通うために遊牧をしている両親とは別に住んでいるのですが、兄のバーテル(上写真右)は町はずれに住む祖父の家から通い、弟のアディカー(同左)は学校の寮に暮らしています。兄は弟が生まれたあと祖父母の家に預けられたので、弟に両親を取られたと恨んでおり、弟は弟で、その兄の寂しさを埋めようと父が兄のご機嫌を取るのが面白くありません。そんな時、祖父が亡くなり、夏休みに入った2人はらくだに乗って両親の暮らす遊牧地に帰ろうとするのですが....。
家族愛とその中で起きる葛藤、遊牧の民と近代化等いろんなテーマが含まれていますが、何よりもこの兄弟、特にしっかり者の弟アディカーが魅力的に描かれていて、惹きつけられます。ちょっとあらずもがな、の描写もあるものの、らくだと共に旅をする暮らし方もつぶさに見ることができて、砂漠での日陰の作り方とか興味深いことがいっぱいでした。見応えのある作品で、二重丸オススメです。(劇中名の表記は字幕に合わせました)
『破裂するドリアン河の記憶』 公式サイト
マレーシア/2014年/中国語・広東語・マレー語・英語/126分/原題:River of Exploding Durians 榴[木連]忘返
監督:楊毅恒(エドモンド・ヨウ)
主演:朱■(草冠+止)瑩(チョウ・チーイン)、高聖(シャーン・コー)、ダフネ・ロー、梁祖儀(ジョーイ・レオン)
海辺の町で暮らすマレーシアの高校生たちと、彼らの担任の女性教師が主人公。町にレア・アースの工場ができることになり、女性教師は建設反対の最先鋒となります。彼女の授業は、近隣諸国の歴史上で起こった政治事件を取り上げたりするため、校長からは睨まれています。やがて彼女の言動はますます先鋭化していき...。
マレーシアの観客が見ればいろいろ納得できる点があるのかも知れませんが、ちょっと上滑りの過激な社会運動が描かれている感じで、こちらに迫ってくるものがありません。しかもラストは、女性教師によるかなり唐突な事件で幕を閉じます。高校生たちの中でも主人公と言える人物が3人いるのですが、その子たちにも感情移入できずじまい。エドモンド・ヨウ監督、次作に期待することにします...。
『壊れた心』 公式サイト
フィリピン/2014年/フィリピノ語/73分/原題:Ruined Heart-Another Love Story Between a Criminal & a Whore
監督:ケヴィン・デ・ラ・クルス
主演:浅野忠信、ナタリア・アセベド、エレナ・カザン
えーっと、この作品も私には理解不能でした。浅野忠信を使いたかっただけ? クリストファー・ドイル撮影監督と仕事をしてみたかっただけ?? 気に入った!とおっしゃる方があったら、ぜひコメントをお寄せ下さい。
<CROSSCUT ASIA #01 魅惑のタイ>
『先生の日記』 公式サイト
タイ/2014年/タイ語/110分/英語題:The Teacher's Diary
監督:ニティワット・タラトーン
主演:スクリット・ウィセートケーオ、チャーマーン・ブンヤサック
韓国映画『イル・マーレ』をちょっと思い出させる、ステキな作品でした。勤務校で睨まれたりして、水上で暮らす人々の住む僻地の小学校に赴任してきた男女の先生が主人公です。とはいえ、同時に赴任したのではなく、まず2011年に女性のエーン先生がもう1人の女性教師と共に赴任。途中でもう1人の教師は逃げ出してしまうのですが、それも含めて起こった様々な事件や、自分への励ましの言葉を書いたノートを、1年後に転出したエーン先生は小学校に忘れて行ってしまいます。こうして、2012年に赴任してきたちょっと頼りない男性教師のソーン先生がそのノートを見つけ、自分も加筆していきます。1年後転出したソーン先生の後任として、またエーン先生がやってきて、彼が加筆したノートを見つけ....。
最初はこの時系列がよくわからず、ひょっとして『イル・マーレ』のようなお話?と思って見ていたのですが、途中で明確になってから、どんどんお話に引き込まれました。どちらかというとダメ男のソーン先生に対し、エーン先生は女性ながらバリバリに男前な性格で、その対比も面白く描かれます。エーン先生には婚約者の男性教師もいて、2人は結ばれそうになるのですが、というありがちな展開もあり、エンタテインメント性も十分。楽しい作品がお好きな方はお見逃しなく。
では、明日からは六本木、または日本橋でお会いしましょう!
ブログも拝見しました。お気持ち、よーくわかります。
今だから言える私の感想(笑)は、「こんなんコンペに選ばんとってほしいワ」でした。
ついでながら、『先生の日記』は日本で来年公開されるようです。こちらは嬉しいですね~。
この記事は少々ネタバレになっているので、書き換えようかと思案中です....。