アジア映画巡礼

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見逃さないで!『セデック・バレ』

2013-03-05 | 台湾映画

これまで拙ブログでも何度かご紹介した台湾映画『セデック・バレ』が、いよいよ日本でも公開されます。先日、第一部と第二部を続けて試写で見せて頂いたのですが、とても見応えのある素晴らしい作品で、合計276分(4時間36分)という長さも全然気になりませんでした。本日はちょうど監督のウェイ・ダーション(魏徳聖)と主演の1人ダーチン(大慶)が来日しての記者会見と取材の日なので、それに行けなかったお詫びも兼ねて、ここでご紹介しようと思います。

(c) Copyright 2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production
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セデック・バレ』   公式サイト

【2011年/台湾/カラー/セデック語・日本語/第一部「太陽旗」144分・第二部「虹の橋」132分・合計276分/シネマスコープHD/原題:賽徳克・巴莱】

<キャスト>
 モーナ・ルダオ(壮年):リン・チンタイ(林慶台)
 タイモ・ワリス:マー・ジーシアン(馬志翔)
 小島源治:安藤政信
 鎌田弥彦:河原さぶ
 高山初子(オビン・タダオ):ビビアン・スー(徐若瑄)
 モーナ・ルダオ(青年):ダーチン(大慶)
 佐塚愛佑:木村祐一
 江川博通:春田純一
 花岡一郎(ダッキス・ノービン):シュー・イーファン(徐詣帆)
 花岡二郎(ダッキス・ナウイ):スー・ダー(蘇達)
 川野花子(ナビン・タウイ):ルオ・メイリン(羅美玲)
 マホン・モーナ:ランディ・ウェン(温嵐)
 タダオ・モーナ:ティエン・ジュン(田駿)
 パワン・ナウイ:リン・ユアンジエ(林源傑)
 小島の妻:田中千絵  ※特別出演

<スタッフ>
 脚本・監督:ウェイ・ダーション(魏徳聖)
 製作:ジョン・ウー(呉宇森)、テレンス・チャン(張家振)、ホァン・ジーミン(黄志明)
 撮影監督:チン・ディンチャン(秦鼎昌)
 プロダクションデザイン:種田陽平
 美術プロデューサー:赤塚佳仁
 音楽:リッキー・ホー
 アクション監督:ヤン・ギルヨン、シム・ジェウォン

提供:マグザム、太秦/配給:太秦

4月20日(土)より渋谷ユーロスペース、吉祥寺バウスシアターほか全国順次ロードショー

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この映画が1930年に台湾で起こった霧社事件を描いていることは、皆さんもご存じでしょう。台湾には漢民族が移住してくる前から住んでいた原住民がおり、タイヤル族、ブヌン族、アミ族、パイワン族など今の台湾には14の部族がいるとされています。最近になって原住民部族として認められたのがセデック族で、「セデック・バレ」とは「真の人」を意味するセデック語だそうです。

映画は彼らセデック族の思想や行動をしっかりと描き、彼らがなぜ霧社事件を起こさねばならなかったのか、という疑問に迫ります。それは決して、抗日闘争という要素だけではなかったのです。最初にこの事件を知った時、蜂起した側に自殺者があまりにも多いので不思議に思っていたのですが、映画はその謎もある程度解き明かしてくれます。「虹の橋」に象徴されるセデック族の世界観というか死生観はかなり衝撃的で、キリシタンの殉教を思い出してしまいました。

また、海外で問題視された首狩り場面の描写等が残酷だという点ですが、見ていると確かに何度か出てくるものの、ほとんど気になりませんでした。むしろ、CGであそこまでうまく描写する技術に感心したほどです。美術も神経が行き届いていますし、何よりも登場人物たちが画面にしっかりと息づいていて、こちらの心をぐっとつかんでくれます。特に、セデック族の人々を演じた俳優たちが文句なく素晴らしく、中でもモーナ・ルダオ役の2人は大きな存在感がありました。

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上が若き日のモーナ・ルダオ役のダーチンで、最初の写真が年を取ってからのモーナ・ルダオ役のリン・チンタイです。リン・チンタイはタイヤル族で、教会の牧師さんだというのですから驚きです。この人をキャスティングした監督の目は確かで、彼の圧倒的な存在感が本作の成功に大きく寄与したと言っても過言ではありません。また、ダーチンも、それからモーナ・ルダオと対立するタイモ・ワリス役のマー・ジーシアンや子役のリン・ユアンジエも、それぞれ実にいい面構えをしています。みんな原住民の出身だということですが、彼らの血に流れている父祖の記憶がよみがえり、鮮烈な演技を生み出したのかも知れません。

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本作ではセデック族と日本人との戦いの場面を始め、アクションシーンが数多く出てきます。中には悲劇的なシーンもあるのですが、アクション設計がこれまた素晴らしく、思わず手に汗握る興奮を覚えてしまいました。そういう意味では、一級のエンターテインメントでもあるのです。ウェイ・ダーション監督、『海角七号 君想う、国境の南』 (2008)よりもさらにスケールアップした演出で、歴史に残る名作を作ってくれました。

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キャストに日本人が多く入っているのは当たり前ですが、スタッフも美術は日本人の種田陽平、アクションは韓国のヤン・ギルヨンとシム・ジェウォンと、国際的な編成になっています。撮影の苦労もいろいろ多かったようですが、これだけの作品ができあがったのですから、苦労も報われたと言うべきでしょう。「テーマが」とか、「反日的なのでは」とか、「長い」とかで見るのをためらっていると、一生後悔することになります。この希有な映画、ぜひ劇場公開時にスクリーンでお見逃しなきよう。

追伸:3月5日の記者会見の様子は、こちらのYahoo!ニュースにアップされています。ダーチンのイケメン素顔写真もありますので、ご覧になってみて下さいね~。

  


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