アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『燃えあがる女性記者たち』明日は横浜シネマリンでお目にかかります!

2023-10-21 | インド映画

ここのところ晴天続きでありがたいですね。明後日、10月23日(月)からは東京国際映画祭が始まりますが、明日、22日の日曜日、もしまだインドのドキュメンタリー映画『燃えあがる女性記者たち』公式サイト)をご覧になっていないようでしたら、横浜のミニシアター横浜シネマリンまでお運び下さい。13時50分からの上映終了後、15時25分ぐらいから私がお邪魔してこの作品に関するお話を致します。30分ほどの短い時間なのですが、資料もバッチリ作りましたので、超充実している本作の映画パンフとこの資料で、映画をさらに深くご理解いただけるかと思います。

『燃えあがる女性記者たち』は、まだ若いリントゥ・トーマス監督とスシュミト・ゴーシュ監督が4年ほどかけて作り上げた珠玉のドキュメンタリーで、首都デリーからあまり遠くない、ウッタル・プラデーシュ州のチトラクートという町にある、女性だけの新聞社「カバル・ラハリヤ」を取り上げています。女性だけの新聞社、というのもたいそう珍しいのですが、さらにこの新聞社は、現在は「ダリト(”抑圧された人”という意味)」と呼ばれる被差別カーストの女性たちが運営し、取材し、記事を書き、発信している新聞社なのです。ちょうど2人の監督がこの新聞社に関心を持った頃、それまで週刊新聞として紙で発行していた「カバル・ラハリヤ」は、インターネットを通じての報道へと舵を切ろうとしていたところでした。ペンと紙とカメラでの取材から、スマホを使った動画や写真取材へと切り替わる時の様子も捉えたこのドキュメンタリー映画は、時代の貴重な証言ともなっています。

©Black Ticket Films

日本人が一番敏感に反応するのは、ダリト、つまり被差別カーストの女性たちが主人公である、という点ではないかと思いますが、私は本作を見て気が付かなかったことを、上の画像を見て思い知らされ、胸を突かれました。上は配給会社きろくびとが宣伝のため配布してくれた1枚なのですが、中央に写っているのが、本作でフォローしている3人の女性のうちの1人、ミーラです。ミーラは若くして結婚した後、大学や大学院で学ぶ意欲に目覚め、子供を産んだあとも学ぶことを続けたがんばり屋です。作品の中では、夫と小学生の女の子2人、そして姑と暮らすミーラの家庭でのシーンもたびたび出てきますが、どっしりと構えていて柔和な彼女からは、こんな小柄な女性だということは全然わかりませんでした。回りにいる男性たちとは格段の身長差があり、むしろ隣にいる子供たちの仲間と言っていいほど小柄なミーラ。

©Black Ticket Films

これを見ていて、昔、『サラーム・ボンベイ!』(1988)の主人公クリシュナを演じた青年と、インド国際映画祭で会った時のことを思い出しました。彼は2作目の映画『Patang(凧)』(1993)に出たところで、まだ20歳前だったのですが、とても小柄でした。「これからも映画界でがんばっていくの?」と聞いたら、「そうしたいんだけど、背も伸びないし、無理かも...」と言葉を濁していた彼は、あの映画に出るまでストリート・チルドレンとしての生活を重ねていて、体格を形成する栄養が足りず、それが大人になってからも影響していたのです。それだけでなく、何世代にもわたる貧困、栄養不足、骨格形成物質の不足などが響いて、そうなってしまったのでしょう。その時、インドに存在する貧困やカースト差別は、何と残酷なものか、と初めて実感したのでした。ミーラは単に背が低い、ということだけなのかも知れなかったのですが、日本人には考え及ぶことすら難しい、はるか昔から続く差別の実態と、その差別に今なおさらされている人々の苦渋を思って、いたたまれない気持ちになりました。

©Black Ticket Films

そのミーラは、今も「カバル・ラハリヤ」で活躍しているようです。明日お配りする資料を作るために昨日「カバル・ラハリヤ」のHPを見たら、カヴィタ(配信動画を”カヴィタ・ショー”として撮ろうと、ミーラが苦戦する場面があります)と共にミーラが、読者に選挙情報の提供を呼びかける動画に出演していました。相変わらず、がんばっているのね、ミーラ! というふうに登場人物が身近な友人に見えてくる、とても見応えのあるドキュメンタリー映画です。下に予告編を付けておきますので、まだご覧になってない横浜近辺の方は、ぜひ明日、横浜シネマリンにお運び下さい。お待ちしています!

映画『燃えあがる女性記者たち』予告編

 


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