本日は、TIFFでまたまた名作に出会いました。エディ・ポン主演、グァン・フー(管虎)監督の中国映画『ブラックドッグ/Black Dog』(2024)です。すでに配給さんがついていて、その宣伝を担当してらっしゃる方からご案内をいただき、読売ホールでの上映に入らせていただきました。前にもブログに書いたように、インドのカンナダ語映画『チャーリー(2022))からインスピレーションを得たのではないか、という疑い(?)を持っていたため、どうしても見たかった作品です。見た結果は、まったく別物で、『チャーリー』をあま~いチャイ(ミルクティー)とすると、『ブラックドッグ/Black Dog』はエスプレッソのダブル砂糖なし、という感じの作品でした。作品データと、簡単な紹介を書いておきます。ネタバレがありますので、まっさらな心でエディ・ポンを見たい方は、ご覧になってから読んで下さいね。なお、この日は上映前にエディ・ポンのかなり長いビデオレターが上映され、日本語、北京語、英語を駆使した彼の挨拶に観客はうっとり。「今回は行けなくてごめんなさい」という彼の挨拶が終わると、場内から大きな拍手が出ました。
©2024 The Seventh Art Pictures (Shanghai) Co., Ltd. All Rights reserved
『ブラックドッグ』
2024年/中国/中国語/110分/原題:狗陣
監督:グァン・フー [管虎]
出演:エディ・ポン、ジャ・ジャンクー、トン・リーヤー
配給:クロックワークス
ここは中国の、ゴビ砂漠の端っことでも言うべき地域。赤峡という町に向かうミニバスが、まばらに植栽が生えた半砂漠の土地を走っていました。と、そこに多数の野犬の群れが丘から駆け下りてき、ミニバスは襲われた格好で横転。幸い大きな怪我人はいませんでしたが、警察が来るまで全員足止めされます。その中に、刑務所から仮釈放されたばかりの青年ラン(エディ・ポン)もいました。赤峡の警察署に着くと、顔なじみの警部などが話しかけてきますが、ひと言も返さないラン。翌朝釈放され、自宅に戻ってみると自宅には鍵がかかっていました。隣家の老人が出て来てくれて、「お父さんは今は動物園に住んでいるよ。鍵は換えたんだ」と新しい鍵を渡してくれました。さびれた赤峡の町には、動物園とそれに隣接したバンジージャンプなどの遊戯施設がある一画があり、そこの動物園にはアムール虎などが飼われていて、かつてはオオカミもいたのだとか。ランは父の顔を見に行きますが、どうも父は会いたくないようです。かつてランは、地元ではバンドの人気ヴォーカルだったのですが、焼き肉屋の店主の甥といざこざを起こし、どうやら彼が死んでしまったようです。その事件でランは服役していたのですが、焼き肉屋の店主はランを恨み、いまだにつきまといます。そんな中、すでに取り壊しが決まっている一画で、ランは一匹の黒い犬と出会いました。この町は住民が大量に出て行ってしまい、飼っていた犬を放置したので野犬の群れがあちこちにいるのですが、黒犬は群れずにいるのが、なぜかランの気を引きます。やがてランは警官から、野犬狩りグループのヤオ(ジャ・ジャンクー)の下について、野犬捕獲の仕事をしろ、と言われ、黒犬以外の様々な犬と、そしていろんな人と出会っていきます...。
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最初はまったく声を出さないランに、ひょっとして障害がある青年なのか? と思ったりしましたが、少しずつ、少しずつ人と関わる場面が増え、最後の方ではきちんとしたセリフもあったうえ、バンドの人気ヴォーカルだったこともわかって、そのストーリー進行のうまさにすっかりやられてしまいました。舞台となる「赤峡」という町ですが、実在の町ではないようで、中国語サイトでも「赤峡ってどこにある?」という質問が出ていました。そのモデルとなったゴビ砂漠に近い町が、おそらく監督のインスピレーションをかき立てたのだと思います。動物園や丘の上の四阿は元々あったのだと思いますが、バンジージャンプなどの遊戯施設は、映画のために作ったのかも。なんとも言えずいい景色というか、町の終焉を象徴するような印象的な画になっていて、出てくる度に目を奪われました。町にやってくる雑技団の女性たちを除くと、ほぼ全員の出演者が男性で、あとは犬というかなり特異な映画です。でも、犬たちもまた熱演(?)していて、特にオシッコの縄張りを侵すランに牙をむく黒犬は、名演技でした。あの犬種、何と言うんだっけ。
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また公開時に見直したいと思いますが、優れた脚本にエディ・ポンを始めとする出演者の演技がピッタリとはまって、心に残る作品になっていました。エディ・ポンの代表作の一つになりますね。中国版の予告編を付けておきます。
电影《狗阵》发布定档预告,彭于晏与黑狗互相救赎
「『ブラックドッグ/Black Dog』はエスプレッソのダブル砂糖なし、という感じの作品」という洒落たフレイズにまず心が踊りました。
中国版の予告編を見て、絶対に見に行くぞ!
公開時にリマインドしてくださるとありがたいです。
感激した「再会長江」の話を誰かにすると、必ず「見たい!」というリアクションが返ってきます。DVDが発売されているでしょうか?