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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『ミルカ』萌え~<その2>ミルカとシク教

2014-12-18 | インド映画

先日、『ミルカ』の公開日が来年の1月30日(金)と決まりました。公開まであと1ヶ月半、ますます萌えなきゃ、というところです。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

先日もお会いした高名な映画評論家の方が、『ミルカ』の試写を見た、と言って大絶賛のコメントを聞かせて下さいました。映画の中で、1947年のインド・パキスタン分離独立によりパキスタン領となった故郷の村をミルカが去って十数年後、ミルカが再訪するシーンがあるのですが、そのシーンが感動的だったとのこと。そこに出てきた友人とのエピソードを、「あれは本当にあった話なの?」と聞かれて困ってしまった私。これはいかん、と早速Amazonでミルカ・シンの自伝"The Race of My Life"を注文しました。字幕の仕事をやった時に注文しなくちゃと思いつつ、その後の忙しさでつい忘れていたのです。アメリカの書店から送られて来るのですが、公開に間に合うかなあ....。

字幕と言えば、『チェイス!』のパンフレットをお買いになった方は、最後のページに『ミルカ』の宣伝が出ているのに気がつかれたことと思います。そこに「字幕:藤井美佳」とあるのですが、それは間違いです。これは、その右側ページにある『チェイス!』のクレジットに入るべきものが間違って入ってしまったもので、元はと言えば校正の時に加筆をお願いした私の指示があいまいだったため、誤解されてこうなってしまったのでした。藤井美佳さんはじめ、各方面にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

前置きが長くなってしまいましたが、今日はミルカの宗教、シク教についてちょっと個人的な思い出を書いておきたいと思います。シク教については、公式サイトのこちらにまとめてありますのでご覧下さいね。

私は大学でヒンディー語を専攻したため、インド人の客員教授とはいろいろお話をする機会があったのですが、その先生に続いて親しく話をしたインド人は、来日していたシク教徒の青年Sさんでした。Sさんは仕事で日本に滞在中で、私の知人が営む下宿屋さんに住んでいたのです。どちらかというとショーユ顔(でいいのかしらん。つまり、濃い顔の反対)のインド人で、心優しい好青年でした。

ちょうど上の写真のようなターバンをいつも被っていたのですが、ある時、そのターバンを巻くところを見せてくれたことがあります。まず、幅90センチ程度、長さ3m程度ののりを効かせた無地の布を、対角線にひっぱるところから作業は始まります。両方の対角線で引っぱってバイアス布状態にし、それから額に当てて頭に巻いていきます。その時、プラスチックの小さな板状のものを正面に入れて巻くと、ターバンが上のように盛り上がった感じになるのです。なるほどな~、と感心しながら見ていたら、「夜寝る時はスポッとこのままはずしておいて、朝またそれを被るんだよ。数日は持つかな」と言われ、大いに納得したのでした。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

『ミルカ』では、軍隊時代のコーチであるグルデーウ・シン(上写真左)もシク教徒です。 ターバン姿のツーショット、萌えますね~。

公式サイトにも書いてあるとおり、シク教徒は髪も髭ものび放題となるため、髪は「まとめて頭頂部でまげ状にする→まげの上に小さな布を被せる」(スポーツ選手などはここまででOK)、または、「まげ状にする→その上からターバンを被る」となるのですが、髭も伸びすぎるとネットで抑えたりしているのをよく見かけます。上のようにグルデーウ・シンは髭が濃いため、あるシーンではバンダナ風のもので髭を抑えて登場します(歯痛かおたふく風邪の患者みたいです)。ミルカ役のファルハーン・アクタルは自前にこだわったのか、髭がちょっと少な目ですね。

それから、髪と共に「5つのK」に入る腕輪(カラー)を2人とも右手にしています。こういう真鍮の腕輪をSさんもいつもしていました。2度目にインドに行った時には、友人と共にSさんの実家に泊めてもらい、お母さんや妹さんたち、そして弟さんにも大変お世話になりました。シク教徒の名前は、男性には「シン」(意味は「獅子」)が付き、女性には「カウル」(意味は「姫」)が付くのが一般的ですが、それを教えてもらったのもSさん宅でした。その頃、リシ・カプールとランジーターの2人が主人公を演じる『ライラーとマジュヌーン(Laila Majnu)』(1976)という映画がヒットしていたので、妹さんが「ランジーターは本当はランジーター・カウルと言って、シク教徒なのよ」と教えてくれたのです。


そんな風に、シク教徒の人たちと知り合いになったもので、1979年には陸路パキスタンに抜ける途中アムリトサルで途中下車し、シク教の総本山ゴールデン・テンプルを訪ねたのでした。この夏公開されたドキュメンタリー『聖者たちの食卓』(2011)で描かれた場所です。

訪ねたのは12月で、北インドではもうかなり寒くなっている時期でした。ゴールデン・テンプルに入るには、手と足を洗って入らないといけないのですが、足は水が貯めてある所を通ることで洗ったことになります。驚いたことに、そのの水が温かいお湯だったのです! 心まで温まった瞬間で、シク教って素晴らしい、と思ってしまいました。上と下の写真は、その時撮ったものです。


そんなシク教徒ですが、ボリウッド映画の主人公には、やはりターバンと髭が邪魔をしてか、なかなかなれませんでした。パンジャービー語映画なら、結構シク教徒がヒーローの作品もあったようなのですが、ボリウッド映画では脇役的存在がほとんど。でも、悪役を演じることはまずなくて、主人公を助けるトラックの運転手(『黒いダイヤ』1979)とか、歌い踊る陽気なアパートの住人(『目を覚まして用心しろ』1956)とか、「いい人」役ばかりでした。

そして、シク教徒が主人公を演じ始めたのが21世紀になってから。まず、シク教徒の主人公を、自身もシク教徒であるサニー・デオルが演じた『ガダル 憎しみを超えた絆』(2001)が大ヒット。サニー・デオルは髪も髭もカットしていますが、彼の父親ダルメーンドルがそうであったように、髪と髭をカットしてボリウッド映画界で活躍しているシク教徒が何人かいるのです。

その後しばらく間が空きますが、2000年代後半になると、今度はシク教徒ではない俳優がシク教徒に扮する映画が次々と出現してきます。アクシャイ・クマール主演の『シンは王様(Singh Is Kinng)(2008)や、アジャイ・デーウガン主演の『ターバン魂』(2012)は興収ベスト10に入る大ヒットとなりますし、そのほかにも、ランビール・カプール主演の『最優秀セールスマン、ロケット・シン(Rocket Singh: Salesman of the Year)』(2009)や、サルマーン・カーンがシク教徒軍人に扮した『英雄たち(Heroes)』(2008)など、ターバン・ヒーローが次々と活躍するようになったのです。『ミルカ』もその流れの中で作られた作品、と捉えることができるでしょう。

(C)2013 Viacom18 Media Pvt. Ltd & Rakeysh Omprakash Mehra Pictures

『ミルカ』の中で、ミルカや周囲の人々が被るターバンは様々です。上の写真は粋な絞り染めストライプですが、ドット柄も登場します。どんなターバンが出てくるのか、楽しみにしていて下さいね。

 


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