繕い裁つ人 2014年
ストーリー(公式サイトより)
神戸の街を見渡す坂を上ったところに、その店はあった。
「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。
店主の南市江が作る服は、いつも即日完売。
すべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点ものだ。
神戸のデパートに勤める藤井は、市江にブランド化の話を持ち掛けるが、
まるで“頑固じじい”のような彼女は、全く興味を示さない。
一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代の
デザインを流用した新作を少しだけ、市江はそれで満足だった。
南洋裁店の服は、世界で一着だけの一生もの──
それが市江の繕い裁つ服が愛される、潔くも清い秘密だった。
だが、自分がデザインしたドレスを作りたいはずだという藤井の言葉に、
市江の心に封印してきた何かが揺れ動く──。