夜更けの戯言

ボクがギターを弾くとき、
聴いてくれるひとがたとえたった一人であっても、20人でも100人でも1000人でもボクは必ず、真剣に弾く。
そうするとギターは必ず真剣に鳴ってくれる。

ボクがギターを弾くとき、
許された曲がたとえたった一曲であっても、10分でも30分でも60分でも90分でも
ボクは必ず、真剣に弾く。
そして絶対に楽譜は見ない。(クラシックの人との合わせは見るのが礼儀ですが）
そうするとギターは必ず真剣に鳴ってくれる。音に思いがこもる。

楽器演奏は楽器を使って音符を弾くのではなく、楽器を使って音を出す。
これがボクの生き方、ボクの流儀、ボクの美学。

手から離れていった音には消えるまで責任がある。
いつもどんなときも客席の片隅にもう一人の自分がいる。
そして彼がボクの音を聴き、ボクを見つめている。
客席を探しても、もう一人の自分の姿が見えなくなってしまったら、
ボクは人前で演奏することをやめる。

でも、そんな理屈はどうだっていい。ただの夜更けのたわごと。
それより、いつかミライカナイで聴いたダイキチさんの観客に全く媚びない直球一本勝負のシタールと、ミライカナイで一緒にやった日のプラスーン・チャタルジーのタブラーの神業を忘れることができない。血が沸き肉が躍った、羨ましい。
あの店の黄色い壁に沁み込んだ香りを肴に、きつい酒を一杯やりたい。一人で。

新しく弾きたいと思う意中の曲がなくなったとき、変化球でかわす様な演奏をしようと思ったとき、自分の耳に届いた音に炊きたてごはんの米粒のシンにある歯ごたえがなくなったとき
ボクは人前で演奏することをやめる。
昨日の夕日は今のボク、だがここからねばるぞ～。