「私は、秋の陽が没する悲壮美が好きだ」
秋の夕陽。
いつから好きになったのだろう。
思い出してみると、13年前から・・・のようだ。
夏につらい思いをして、涼しくなってホッとする。
そんな時期だった。
もっと昔。
10代半ば頃は、もっと別な意味で夕陽を見ていた。
うちは割合海に近く、よく自転車で夕暮れの海に
行ったものだった。
陽が没して、星空の世界になるまで空を眺めていた
ものだった。
「温かい我が家が待っている。さあ、帰ろう」
少し明るく、少しせつない気持ちで家路についた。
30をとうに過ぎた今、夕陽は全く違うものにみえる。
とくに、秋の夕陽は。
「今度の正月、無事に迎えられるだろうか?」とか
「あと何年、元気でいられるだろうか?」とか、
究極、「あとどのくらい生きられるだろうか?」
などと悲壮なことまで考えてしまう。
「歳だ」
と言われてしまえばそれまでだけれど。
定時制高校、大学とも、夜間だったから、いつも
通学は夕方。そんな事も関係しているのだろう。
夕方は、一日の終わりではなく始まりだった。
その頃は、よく恋もした。
せつない想いを抱いて夕陽を眺める、キモい男
でもあった。
「フ・・・」
今ではすっかり恋だの愛だの忘れてしまったが。
「愛などいらぬ!!」
私は歪んでしまったのだろうか。
サヨナラ、昔の私。
私は私の足で、これからの人生を歩いて行くよ。
昔の私の思い出は、大切に胸にしまっておくよ。
夕陽を見て感傷に耽るオッサン。
「そんな事を考えてるあんたが、一番キモいよ!!」